第9話 〃④

「ちーちゃん?」


僕がそう呟くと、隣にいた件の「ちーちゃん」は、言った。


「ああ、えっと、この人、私のお姉ちゃん」


「百合で~っす。よろしくね」


茶髪の先輩改め鈴木百合先輩が名乗った。


「百合先輩、ですね。覚えました。僕は、鈴木千尋といいます。よろしくお願いします」


「え? なんて?」


「鈴木千尋です。妹さんと同じです」


「にゃはは、面白いな~。まあ、ありふれた名字にありふれた名前だしな~」


「それにしても、名前の印象と違いますね」


「よく言われるよ。百合って、何となくイメージ的には、黒髪ロングの……。そう、会長みたいな感じだもんな」


「ん? 私がどうかしたか?」


「おや、噂をすれば」


「あ、会長。さっき放送かけて、こいつら呼び出しましたよね。昼休み」


「ん? ああ、来てくれたのか! で、どちらが鈴木千尋だ?」


「どっちもですよ。だから二人で来たんです」


「呼び出し?」


「昼の時間に、会長が放送かけてたじゃないですか」


「あ、ああ、お、覚えてるよ?」


「覚えていないのなら、黙っていろ。百合。さて、君たち、二人ともA組だな?」


「「はい」」


「よし、出席番は?」


「僕が先です」


「よし、なら君だ。なんでも、すごく優秀な生徒がいると聞いて、呼び出したんだ。ああ、ちょっと待て、そっちの君も、A組なんだよな?


なら、君も入ってくれるとありがたい」


「あの、入るって、どういう……?」


「そうですね。いまいち、状況が飲み込めてません。ですので、教えていただけますか?」


「ああ、短く済ますつもりだが、立ちっぱなしもなんだ。掛けたまえ」


「って言われても、椅子がないですけど」


「ヨッシー、そこのとってきて」


「鈴木先輩、ヨッシーってのやめてくださいってば」


「そう言いつつも、素直にしたがうのか。まあ、加藤、百合は一度決めるとあだ名はそうそう変えんぞ。まあ、諦めておけ」


「あ、ありがとう。ヨッシー」


「ありがとう。加藤くん」


「てめえ鈴木! ヨッシーって呼ぶな!」


「なんだ。君達は友達か。そうそう、話だったな。実は、この生徒会、人数が少ないんだ」


「でしょうね」


「まあ、三人しか見てませんしね」


「でだ、朝にも全体の前で話したが、優秀な生徒を引き込める規則を作った。そして、昨年度一位の君を見つけた」


「なるほど、それで僕を引き込みたいと?」


「飲み込みが早いな。それで、返事は?」


「規則なんでしょう? なら、僕は入るしかないじゃないですか」


「君はどうだ?」


「え、……。まあ、じゃあ、入ります」


「よ~し、そういうことなら、これからよろしくな。ちーくん、ちーちゃん」


「ちーくん?」


「君のあだ名だ。生徒会の一員だろ?」


「えぇ、……」


「ぷはは、俺ともこれからよろしく頼むぜ? ちーくん。ぷはははは!」


「笑いすぎだろう……」


「いや、面白いよ……。よろしくね、ち、ちーくん。ぷぷっ」


「ええ、君まで……?」


まあ、かわいい笑顔が見れたし、良しとしよう。


という訳で、僕たちは生徒会に入ることとなった。




まあ、明日から頑張ってくるとしよう……。あれ?


明日って、休みか?


GWあるの忘れてたな。


僕がそんなことを考えていると、会長が言った。


「では、明日、歓迎会を開催する!」


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