第6話 五月の僕らと生徒会。①

五月に入った。


昨日ついた嘘のことは一度置いておくことにする。またじっくり考えよう。


それはそれとして、今考えなければならないのは、鈴木千尋の恋に関してだ。


この鈴木千尋というのは、僕のことではなく、僕の後ろの席の女子のことだ。


彼女は、僕の友達だ。


先月、といっても昨日だが、好きな人がいるという話をされ、なら手伝うよと言ったのだ。


だが、そのための策がなにも浮かばない。


うんうん唸っていると、彼女が登校してきた。


「おはよー」


「ああ、うん。おはよう」


挨拶を返すと、彼女は少しもじもじしながら言う。


「あ、あの、さ、昨日の、話なんだけど」


「ん? ああ、そうだね、その人の好みを探ってみるとかいいんじゃない?」


「あ、なるほどね。そういうのもありなんだ」


「あ、そろそろ一斉朝礼の時間じゃない?」


そう言って、僕は席を立つ。


毎月最初の日に、校庭で一斉朝礼があるのだ。


「先に行くね」


慌てて追いかけて来なくていいと言う意味だ。


彼女は、僕とは違って、このクラスにも友達は多い。


と、教室を出ようとした僕に、一人の男子生徒が声をかけてきた。


「あ、鈴木、一緒にいこうぜ」


「ん? え~っと、君は……加藤くんだっけ?」


「なんだよ、覚えられてなかったのか? 呼び捨てで加藤でいいよ」


「それで? なんか用かい?」


僕は加藤に聞く。


話しかけてきたのだから、なにか用事があるのだろうと思ったのだ。


しかし、


「いや? 用なんて特にないけど? なんだよ~。クラスメイトじゃね~かよ~。一緒にいこうぜ?」


「ああ、まあいいけど君、友達いるだろ?」


「ああ、もちろん、でも、いつもおんなじ友達とつるんでちゃつまんないだろ? 交友関係は勝手には広がっちゃくれないからな」


その言葉に、僕は少し心を打たれた。


なるほど、それはある意味真理かもしれない。


僕がそんなことを考えて黙っていると、加藤は言う。


「どした? 俺の言葉に心打たれちゃったか?」


「いや、ちょっと考え事してただけ、行こうか」


「ん、まあいいや。よし、行こ」




しばらく歩いていると、加藤は言った。


「なあ、お前、鈴木さんと仲良いだろ? 付き合ってんの?」


「僕も鈴木なんだが……。いや、そういう関係じゃないよ。ただの友達」


「お、じゃあ、俺が狙えちゃう感じ?」


「いや、それは無理だろうね。彼女、好きな人がいるらしいし」


「おお、そっか。まあ、そっかぁ。まあいいや」


「なんだ、彼女狙いで将を射んとすればの馬として僕に近づいてきた訳じゃないの?」


「んな失礼なことするかよ」


そんなことを話している間に、校庭に着いた。




しばらくすると、校庭は生徒で埋め尽くされ、さらにしばらくすると、無秩序に散らばっていたいた生徒たちは、整列し始める。


全てのクラスが整列し終え、点呼を終えると、いよいよ一斉朝礼が始まる。


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