第1話 四月の君と、僕の嘘。①
新学期開始だ。
朝、意気揚々と学校へ向かう。
名前は知っているが、顔とかは知らないので、ワクワクだ。
名前がおなじなので、席は前後になっているだろう。
そんなわけで、僕は意気揚々と、見慣れた丘を上りつつ、見たことのある同級生と上級生の群れに紛れて、ちらほらと見える疲れた顔の新入生を横目で見ながら追い越し、これから一年間通うことになる教室へ向かった。
教室へ入ると、予想外に雰囲気は良さそうだった。
これから一年、蹴落としあうというのに、皆仲が良さそうに話している。
まあ、お喋りをしているのはクラスの半数程度で、残りの半分は、問題集を解いていたり、本を読んでいたり、スマホを触っていたりしているが。
「さてさて、僕の席は何処かなっと」
僕はそう呟きつつ、指定された番号のついた席へ向かった。
出席番号は十六番。
この教室は七かける六の席配列で、両端の列は見にくいからか、一番前の席がない。
僕の席は、真ん中右側の列の、前から三席目だった。
僕の席の後ろには少女が、正面にも少女が座っており、どちらが僕の探す鈴木千尋さんなのかはわからない。
間違えるとカッコ悪いなと思いつつ、どうやって正解を見つけようか悩んでいると、
「あの、鈴木千尋君ですか?」
後ろから声がした。
「つまり、君が鈴木千尋さんだね?」
僕は振り向きつつそう言った。
「それで、質問の答えは……?」
「僕の質問にも答えてもらえるかな?」
「「…………………………」」
「「そう、僕が(私が)鈴木千尋。正解」」
こうして、僕は無事、彼女との出会いを果たした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます