第16話

「よくやってくれた!」

 俺とジェイはガラマの爺さんの家に着くなり爺さんとスーさんに声をかけられる。

「ふたりとも無事でまぁよかったわ」

 スーさんに至ってはちょっと涙ぐんでいる。

「今夜は祝杯じゃ。二人とも自警団の経費で飲め飲め」

 俺たちは夜が更けるまで酒を酌み交わしスーさんの作ったつまみに感動しつつ飲み、ベッドへと向かった。


 次の日の事。

「さて、そろそろこの都市も出なきゃならんな……」

「ええ、本当かい?」

 俺とジェイは部屋で話をする。出なきゃならないのは一箇所に留まるとどんどん離れにくくなるからだ。

「マジかー。ここ気に入ってたんだけどなぁ……」

 ジェイが応える。

「残るなら一人で残れ。とにかく俺は行くぞ」

「つれないなぁ……」

「別にジェイが残ってここを守ってもいいんだぞ?」

「なんかジョン、冷たいね」

「いつもの事だろう?」

「まぁね」

「で、どうするんだ?」

「もう少し時間をくれよ」

 ジェイは相当迷っているようだ。

「分かった」

 短い言葉を交わして分かった。ジェイはここに留まりたがっている事を。

 そして俺はここから出ていかなければならない事も。


「爺さん、俺はこの街を出るよ」

 俺は階下にいるガラマに告げる。ジェイはここには居ない。

「……そうか。いずれはと思っていたがな」

「悪いな……」

「いや、いいんだ。それよりジェイは?」

「まだ迷ってる。アイツがこの街に居る事を望んだら身元の保証人になって欲しいんだ」

「そうか。あい、わかった。その際は任された」

「悪いな」

「いや。いいんじゃよ。二人はこの街の治安を守ってくれたんじゃしな」

「助かる」

 俺は頭を下げる。ガラマは苦笑しながら手を顔の前で振る。

「だからいいんじゃって、助かっているのは事実だしの」

 俺とガラマは雑談をしているとジェイが現れる。

「二人してなんの話?」

「ああ、どうせ嘘をついてもバレるから言うが俺がこの街を出るという話をしていた」

「そうか。あれから考えたんだけど俺はこの街に残る事にするよ」

 ジェイはまっすぐにこちらを見て言った。こういう時はだいたい何を言っても揺るがない覚悟がある時だ。

「そうか。わかった」

「ふたりともそれだけかい?」

 スーさんが顔を覗かせて言う。

「もう少しよく話し合ったらいいんじゃないかい?」

「いや、これは俺たちの中で既に決定してしまっているものだから」

「そうだな」

 ジェイが言葉を続け、その後に俺が同意する。

「そういうものなのね。わかったわ。私が野暮ってもんよね」

「いや、スーさんの話ももっともなんだけどね」


「ジョン、お互いの前途を占うのにギャンブルはどうだ?」

「ふむ、悪くないな」

「じゃあいつも通りにダイスを使うぞ」

 そういうとジェイはガラマに作ってもらったダイスを取り出し振る。

「一投目、ワンペア」

「じゃあ俺の番だな。俺の一投目、役無し」

「お、ジョンの運はもう俺に向いてきたのかな? 一投目のキープをあわせて二投目、スリー」

「さて、どうだろうな。俺の二投目、キープ合わせてストレート」

「やるな。ラストだ。三投目、特に無し」

「スリーのままか、なら俺は無理に勝負する必要はないな」

「あ、ズルいぞ」

「こういうのも戦略のウチだ」


 そうこうしながら俺とジェイはヨットに明け暮れていた。

「さて、それじゃ俺はそろそろ行くわ」

「おう、元気でな」

「そっちもな」

 俺はジェイと短い言葉を交わして背を向ける。いずれまた会えると信じて。

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