第15話
そして俺達は宿に戻る。キメラ討伐のためには武器が必要だ。それも即死させられるレベルのだ。
「おお、ふたりとも無事だったか」
ガラマが言う。スーさんもテーブルで対面していて俺達を見るとお茶の用意をしてくれるらしく立ち上がってキッチンへと向かった。
「なぁ爺さん。爆薬ってないか?」
「爆薬? 一応あるにはあるが……」
「今回の討伐で使わせてもらえないか?」
「ああ、なんでも巨大なキメラだとかなんとか若いのが言っておったな」
「そうなんだよ。規格外の大きさでね。手を焼いているのが俺とジョンの意見」
「おそらく爆薬は自警団の経費で落ちるだろうし、いいぞい」
「助かる」
「それと俺のスピアの方はどうなってる?」
「もう仕上げてある」
「流石だな。炎のエンチャントか」
「とりあえず渡しておくわい。今更逃げるとも思ってないしの」
「ああ、流石にここまでされて逃げるほど恩知らずではないぞ」
ジェイが笑いながら応える。爆薬の件も確約してもらえたので二人で寝室へと戻り寝る。
翌日。エンチャント済みのスピアとエッジを持って訓練をする。そして日も落ちた頃に自警団のところへと顔を出す。
「ああ、ふたりとも。ガラマさんから爆薬の使用許可を申請されたんだけど二人の指示かい?」
「ああ、それは俺ら二人の指示だ。あのバカでかいキメラを倒すには爆薬が一番楽だし確実だからな」
「承知した。ではどう動く?」
自警団員が尋ねる。
「とりあえず爆薬にエンチャントされたスピアを紐付けて向こうの出方待ちだな」
「起爆か」
「ああ、常人には無理だろうが俺たちならそれも可能だ」
「そうそう。少しは俺たちを信頼してくれよ」
自警団員たちは少し目を合わせ頷きあう。
「わかった。この件については二人に任せよう」
「助かる。その信頼には応えるからな」
爆薬を受け取り、キメラの活動範囲の調査をするのに数日。やっと境目を見つけて血が滴るような鮮度の動物を狩り爆薬を仕込む。
「さて、今日は上手くいくかな?」
ジェイが期待を膨らませつつ言う。
「むしろそうじゃないと困る」
「いつも思うんだけどジョンはあまり感情を表に出さないよな」
「そういう性格を学んだだけだ。いわゆるポーカーフェイスってやつだな」
「なるほどね。さて、獲物に動きは……っと」
俺たちは息を潜める。獣の匂いが周囲に湧き立つのを感じる。いよいよお目当ての相手が到着か。
ハンドサインで意思疎通をする。
「飲み込んだ瞬間、殺れ」
「了解」
すんすんと鼻を鳴らしつつキメラは動物に近付く。ここで食い付いて貰わないと意味がない。
次の瞬間、キメラは大きな口を開けて獲物に齧り付く。
俺とジェイは飲み込むまでの数瞬が長い時間に感じる。そしてキメラはゴクリ、と音を立てて咀嚼し飲み込む。
「今だ」
ハンドサインで指示を出す。
ジェイがスピアから起爆コードを起動させて爆薬に引火させる。
ドカン、とバカでかい音を立てキメラの頭は吹き飛んだ。
「ふぅ。上手くいったな」
「まだだ。心臓を止めるぞ」
魔獣独特の再生力を持つキメラの心臓にエッジを突き刺し雷を纏わせて強制的に心臓を止めて剥ぎ取る。
流石にこれでは再生も蘇生もしないだろう。
俺たちは自警団に連絡を入れてキメラを街に運び込み調査を進めるのを横目にガラマの爺さんの家へと向かう。
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