第10話

「どういう意味だ?」

「そのままの意味じゃよ」

 ガラマは叩いている途中のサンダーソードを手に取る。

「もうコイツにはソードとして活かせる道はない」

「おいおい、爺さん。それはないぜ」

 ジェイが文句ありげに詰め寄る。

「早とちりするでない。この状態ならばソードとしてよりは片刃のエッジとして活かす方がいいと感じたんじゃ」

「つまり?」

 俺は腕を組んで言う。

「切れ味にせよ属性、構成素材にせよ、コイツは両刃より片刃の方が向いているという事じゃよ」

「状態が悪すぎたって事か?」

「それもあるが、材質もそうじゃの」

 目を閉じ思案する。

「ジョンどうするよ?」

 ジェイが問いかけてくる。

「分かった。エッジにしてくれ」

「もう後戻りは出来ぬが大丈夫か?」

「ああ、覚悟は決まった」

 ガラマは無言で炉に向き直りハンマーを振り上げる。その動きに淀みはなく、むしろ心が踊っているかのように見えた。


 そして俺はガラマがハンマーを握っている間ギャンブルが出来ないので雑貨屋でカードを買う。これでギャンブルが出来る。

「お、ジョンも買い物かい?」

 偶然にもスーさんに出会う。

「ああ、ちょっとカードをね」

「なるほどねぇ。ギャンブル好きだとは思っていたけれど……」

 おそらくガラマを連想しているのであろう、やれやれといった感じで首を振る。

「ガラマの爺さんは昔からギャンブル好きなのか?」

「ああ、そうともさ。私と結婚する時もそうだったからねぇ」

 過去の新婚時代を思い起こしているのだろうか、目は遠くを見ている。

「ああ、今日の夕飯は何がいいさね?」

「んーそうだな、シチューなんてどうだろうか」

「ジョンがそういうのなら頑張るかねぇ」

「おいおい、俺の意見一辺倒じゃなく爺さんやジェイにも聴いてみてくれよ」

「ここで出会ったのだからわざわざ聞きに戻るなんて面倒さ」

「まぁ、確かに」

「それじゃ私は買い物の続きをするかね。ジョンもちゃんと家に帰るんだよー」

 そう言ってスーさんは右手にかごを下げて買い物の続きに歩いていった。

「……カードのシャッフルでも練習するか」


「ジョン、暇だ」

 ジェイが藪から棒に切り出す。

「いいから待ってろ。今日は雑貨屋でカードを買ってきた」

「お、やっとギャンブルが出来るのかい?」

「一応な」

「ルールは?」

「ポーカーかブラックジャックか、迷ってる」

「ブラックジャックにしようぜー」

「シンプルだからか?」

「シンプルというか、わかりやすいじゃん?」

「まぁな」

「試しに一回やってみようぜ」

 ジェイがベッドに腰掛けて言う。

「……」

 無言でカードを二枚投げ、自分の手元にも二枚並べる。

「うーん、ヒット」

 更に一枚投げる。

「よし、これならいいでしょ」

「そういえばどちらが先か決めてなかったな」

「確かに」

「まぁ俺もヒットだ」

 一枚引く。19。なかなかいい数字だ。

「じゃあ勝負!」

 同じタイミングで二人で手を公開する。

 俺は19、ジェイは18。

「くそー負けた」

「まぁ時の運だな」

 そんな事をしながらスーさんのメシを待っているとキッチンからシチューのいい匂いがし始めた。

「お、これはいい匂いだ」

「スーさんに雑貨屋で会った時にシチューをリクエストしておいたからな」

「なるほどな」

 俺とジェイはキッチンに向かう。ガラマはまだ工房だろうか姿が見えない。

「二人共暇ならガラマを呼んできてくれないかい?」

 スーさんが言う。俺達は頷いて工房へと向かった。

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