第8話
「おーい、アンタ。帰ったよ」
「おう、おかえり」
宿というより普通の家に見えるそこには筋骨隆々なドワーフの男性が居た。
「その後ろの二人は?」
ジロリ、という感じでこちらを見る。
「市場で金を貸してくれた兄ちゃんとその連れさ。今夜泊める事にしたから」
「おいおい。身元は大丈夫なのか?」
「当代一のブラックスミス、ガラマさんが随分慎重な事だねぇ」
待て、今聞き捨てならない事があった気がする。
「えっ、ガラマって……」
ジェイも口を開けている。
「ん、ワシの事を知っているのか? 有名人は辛いのう」
ガラマは言う。
「そうか、こいつは幸先がいい。こいつを見てくれ」
俺は荷物から女将さんからの紹介状をガラマに渡す。
「ほう、こいつは懐かしい人からの手紙じゃの」
「アンタ、まさか」
「いやいや、昔の女でもなんでもありゃせん。昔世話になっただけじゃよ」
ガラマは目を細めて笑う。純粋に喜んでいるようだ。
「どれ、手紙にあったサンダーソードを見せてみ」
俺は無言で差し出す。
「こりゃ見事に傷んだの。まぁだがワシにかかればどうとでもなるわい」
「じゃあ……」
「ワシはギャンブルが好きでの。一つ賭けをせんか?」
「一応俺達もギャンブルをしながら生きている。それにこの話には絶対勝ちたいんでね。是非乗らせてもらおう」
「なるほど。ではお主らの獲物を見せてみ」
ダイスを放る。
「ほう。ポーカーか?」
「ああ。これで生きてきた」
「どれ……」
ガラマは片目を閉じダイスを放る。
「エースのワンペアじゃな」
「ふむ……」
返された俺はさらにダイスを放る。
「10とジャックのツーペアだ」
「なるほど。仕方ないの。やってやるか」
「頼む」
「ついでにそのサイコロも作り直してやろう」
「いいのか?」
「角が削れてあまりいい状態とは言えないのでな。今度は5つ作ってやろう」
「スートは4つしか無いが?」
「なーにオールマイティーにでもすればいいさね」
「そういうもんか」
「そういうもんじゃよ。柔軟にいかねばな」
そこまでのやり取りを見ていたガラマの奥さんは不意に我に戻った感じで料理を作り始める。
「スーよ。ワシはこいつらと少し話をするからメシが出来たら呼んでくれい」
奥さんはスーというのだろうか。ガラマに連れられて俺達は別室へ入る。
「して、お主ら。何者だ?」
「何者も何も。普通に修復を依頼しにきたんだが」
ギロッと鋭く睨む。
「お主ら、人ではないだろう」
ガラマは突然言う。
「……さて、バレちまったか」
「ジョンはもう少し粘るべきだと思うんだけど」
ジェイはやれやれという感じで言う。
「やはりな。して何者だ?」
観念しつつ俺はネタバラシをする。
「ホムンクルスさ」
「あーあ。言っちゃった」
「いずれバレるんだから今言っても変わらんだろう」
「ガラマの爺さんや、何故気付いた?」
今度はジェイが鋭い目をして言う。
「今まで何人の手を見てきたと思っているんじゃ。そんな手初めて見るわ」
「なるほど、職人の勘って奴か」
「まぁそんなところじゃの」
「二人同時に起動してな、それからつるんで歩いてる」
「おいおいジョン、そこまで言う事あるか?」
「バレたんだからもう隠す必要もないだろうよ。自己開示は信用を得る一つの手段だぞ」
俺達のやり取りを見てガラマは大きな声を出して笑う。
「なるほどな、つまりは兄弟みたいなもんだな」
「まぁそう思ってもらって構わない」
「ま、賭けにも負けたし有言実行するしかないわな」
その時キッチンの方からスーさんの呼ぶ声が聞こえてきた。
「どれ、ホムンクルスでもメシは食うじゃろ?」
「もちろん」
「じゃあついてきな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます