第2話
酒場から出て宿へ無言で向かう。
「怒ってるの?」
「いや、ああいうのは言わぬが花ってヤツだと思うだけだ」
「言わなきゃ伝わらない事もあるのに」
「別に伝わらなくてもいいんだよ」
「そういうもんかなぁ」
「そういうもんだ」
宿に着くと部屋に置いてある荷物から俺は拳銃を二丁、ジェイはショットガンの装着されたロングスピアを取り出す。
「手入れしないと」
「だな」
それぞれ頷き合い自分の獲物の手入れを始める。お互いの立ち位置を考えて構成されている。
「なぁジョン」
「なんだ?」
「腹減らない?」
「少しだけな」
「宿の人になんか食べるもんあるか聞いてくるわ」
「別にそれはいいけど手入れ終わらせてからにしろよ」
「作ってもらう手間があったら時間がもったいないだろう」
「なるほど?」
「というわけで行ってくる」
ジェイはそそくさと部屋から出ていき階下のカウンターかキッチンにでも向かったのだろう。
俺は手を休めず手入れを続けている。一応どんなのが相手でもある程度は動ける装備にしておきたいのが正直なところだ。
マスターには悪いが最悪、俺達が殺される事も想定しないといけない。まぁその前に逃げるとは思うが。
「ジョン、戻ったよ」
「おう、何かあったか?」
「スープを作ってもらう事になった」
「今夜はそこそこ冷えるからな。ありがたい事だ」
「だろ? 女将さんにも感謝しないとな」
「ジェイも獲物の手入れは万全にしろよ?」
「わかってるって。ジョンの方はどうなんだよ」
無言で二丁の拳銃をヒョイと持ち上げ見せる。
「相変わらず綺麗な事で」
「少しは見た目もこだわってやれよ」
「俺は機能美主義だからな」
「とか言って実戦でジャムったら洒落にならん」
ふむ、と頷いてジェイも手入れを再開する。
お互い特に喋る事も無いのでしばらく無言が続く。すると、階下からスープのいい匂いが立ち昇って鼻をくすぐってきた。
「……腹減ったな」
「だな」
俺とジェイは獲物を置き、女将さんのスープをいただく事にした。
「あら、しばらくしたら持って上がろうと思っていたのに」
「いや、いい匂いがしたので腹の虫がうるさくてね」
「そうそう、つい匂いに釣られてね」
「あらあら、じゃあすぐに用意するわね」
「頼む」
そして俺とジェイはコンソメと野菜の温かいスープをいただく。まったくもって美味である。内臓からあたたまるというか、なんというか。
「女将さんのスープは美味いなぁ……」
ジェイがしみじみとつぶやく。
「ああ、温かさが染み渡る」
俺も続く。
「二人とも大げさだねぇ。ろくなもん食べてないのかい?」
「まぁ俺達はギャンブラーだからね。基本は酒とツマミさ」
「そうそう、今日も勝ったんだから」
「この辺の賭場なんて酒場くらいだものね。しょうがない、ここに滞在している間は簡単に食べられるのをいつでも出せるくらいの準備はしておくわ」
「いいのか?」
「あそこの酒場のマスターはいい人だからね。あんたら二人を置いてるくらいに信頼してるならそれに習うってだけよ」
「ありがたい。さっきまでマスターに依頼された魔物の討伐に使う武器の準備をしててな」
「あんたら、そんな事までするの?」
「人が住めなきゃ賭場は立たんからな」
「そうそう。女将さんも魔物退治依頼あったら言ってね」
スープを飲み終え部屋に戻り明日に備える。果たして何が出るのやら。
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