第4話 高村さん

『ピンポーン』


美鈴達の部屋に支配人が飛んできた。

部屋で倒れている男たちを見て慌てている。

男たちに声を掛けようとする支配人を制し経緯を説明した。


「この方達は確か昨日からお泊りのお客様です」

新堂は顔をよく見ると見覚えがあった。

「此奴、昨日の夜にみかけた奴だ」


「本当かシン」

「はい確かです」

「だとすると既に昨日の夜からって事ですか」


支配人は思い出したように口を開いた。

「それよりも西門様! 少し気になる事がありまして参りました。今ロビーでお待ちになっている警察の方がどうも日本の方では無いようでして」


「もはや警察かどうかもわかりませんね、美鈴さん」

「大人しくFBIに捕まっても絶対分解されるよな」

「間違いなく」

>ミスズ、100%分解サレ検証サレマス


「あと、美鈴さんの復活プロジェクトには警視庁も絡んでいるんですよね」

新堂は目を丸くした。

「だとすると警察はFBIにすんなり美鈴さんを引き渡すとも思えないんですよね」


確かにそうだ。

超極秘プロジェクトで警視庁が禁止AIロボット(ではないが)開発に協力していたと言える訳が無い。


桜庭さーん! なんで私をあの世から呼び戻したのよ!

これなら大人しく幽霊やってる方が良かったよ


>ミスズ、ユウレイ=ゴーストデスカ

>アノヨ?

[エル]人間にはね、色々あるのよ。


じゃあ状況を整理しよう。

「とりあえず今向こうにバレているのは私だけだ、二人に協力してもらえれば逃げる事は可能だろう」


ピートがニャァー(姐さん! 俺も一肌脱ぐぜ!)と鳴く。

「ピートもお願いね」

ピートはやる気満々だ。


「あ」

「シンどうした」


さっきまで目を丸くしていた新堂は顔色が悪い。

「あのー、あの施設の場所のIP割り出しで有馬さんにお願いしてまして」

「そういえば!」

「恐らく有馬さんから俺の事が桜庭警視監に連絡が行っているかと」


「と言う事はシンも一緒にいるって事が確定されているな」

「それなら僕も置き土産を置いてきたんで僕の事もバレているでしょうね」

「――!」


ひっじょーに不味い

三人の身元がバレている。


「ひとまずですが、僕の研究所に身を隠しませんか? 東京の研究所なら僕の名前も出てきませんし」

「広島から結構あるな」

「三人もしくは別行動で移動した方が良いかもしれませんね」

「分かった。じゃまずココを出ないとだな」


「この高村。何かスパイ映画みたいでワクワクしてまいりました!」

三人は支配人を見る。

「山本様はSFに出てくるヒーローの様ですね! それに皆さまの服装はどこから見ても当ホテルの立派な従業員にしか見えませんし」

高村はニコニコと期待に満ちた笑顔をしている。


美鈴は何か言いかけたが西門が制す。

「ミッションには高村さんの力が必要です、よろしくお願い致します」

「この高村にお任せください! お車を用意させましょう」

高村はどこかに電話した。


「では行きましょう! 途中お客様にお会いしたら必ず一礼をお願いします」

高村は見本の様にスッと一礼をする。


三人が部屋を出ると清掃人とメイド達が外で待っていた。

「いってらっしゃいませ!」

次々に一礼をされ中に入っていく。

高村は倒れているロシアの男たちを見ながら指示を出す。

「証拠は全て消しておきましょう。その方たちは医務室に移動しておきなさい」


高村さん……あんた凄いよ。


>***プリンスホテル検索シマシタ

>創業100年以上、国内24箇所海外56箇所デホテルヲ経営

>世界トップクラスノホテルトシテ知名度ガ高ク政界及ビハリウッドスターノ宿泊先トシテ利用サレテイマス

高村 将司たかむら まさし(56)****ギャラクシーホテルニ従事、数々ノ世界的ホテルマン受賞歴アリ

>20**年ニ***プリンスホテルニ引キ抜カレ現在ニ至ル


ってその高村さんにそこまで言わせる西門って何者?

>ミスズ、Mrマモルハ数々ノ特許ヲ取得シテオリ、ライセンス料ダケデ年間5億円以上ノ収益ガアリマス


天才で金持ちって腹立つー

こちとらしがないお巡りさんだぞ!

走りながらラーメンチャーハンセットを食べるぐらいのブラックで月給雀の涙だぞ!

>ミスズ、ヤメマショウ




     ◇


新堂は清掃道具が入ったカートを借りるとピートが中に潜り込んだ。


高村を先頭に四人は従業員用エレベータホールに向かい端に並ぶ。

エレベーターが開くとアジア系の男性二人がインカムで何か喋りながら出てきた。

「お客様、こちらは当ホテルの従業員専用となっております」


「麻烦的!(ウルサイ)」

「房间在哪里!(こっちの部屋だ!)」


二人は高村たちを無視してホールに走り出た。

四人は一礼をしてエレベータに乗り込む。

「あれは中国系か」

「ややこしい事になったな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る