第3話 招かれざる訪問者
西門はテレビを付けてニュースに切り替えた。
画面に大きく『大規模テロ!? 篠原重工データ流出』と書いてある。
また美鈴達がいた島を上空から撮影していた。
キャスターが早口で喋っている
「施設は篠原重工の研究施設だと言う事もわかってきました」
「入り口が黒く焦げている様です。何かあったのでしょうか」
カメラがズームし正面玄関を大きく映す。
「爆発でもあったような感じにも見えます」
「島の反対側にある島の人たちに話を聞いてみましたのでどうぞ」
島民がモニターに映りインタビューを受ける。
「昨日の晩に大きな爆発音みたいのが聞こえてよ、ビックリしたわ」
「車の事故とかみんなで話しとったんよ」
――あの施設はなんの施設と聞かされていましたか?
「あれはどっかの金持ちの別荘でたまに遊びに来るってきいてたけど」
「まさか研究施設だとは思わなかったよ」
――ウイルスとかの危ない実験とか施設だとしたらどうします?
「それはいかん。わしらがちゃんと納得がいく説明をしてもらわんと」
カメラはキャスターに戻る。
「こちらで実際に流出したデータを探しましたが検索は出来ませんでした。
政府側からの要請を受け既にブロックしている状況だと政府内部からの情報もあります。
しかし実際に流出したと思われるデータにはウイルス関連の内容も書かれていたとSNSでアップされています」
タブレットを画面に映すと書き込まれたテキストが表示されている。
「また暴走した女性型のAIロボットが潜伏している情報もあり、収束にはかなり時間がかかりそうです。
篠原重工に問い合わせると、現在は事実確認中と返答がありました。
ではカメラをスタジオに戻します」
キャスターの後ろではSIT等のヘリや多くの警官隊が映っていた。
「確かAIロボットの開発と生産は禁止されていましたよね。
いや、これは怖いですね。企業が民間に何の説明もなく繰り返しAIロボットやウイルス実験等をしていたとは。
まだ、事実確認中とは言え島民への説明がなかったのは非常に宜しくありませんね。
この事件はテロの可能性も含め現在捜査中との事です」
ディレクターがキャスターに近づき紙を渡している。
「ここで速報です!
昨夜広島県の***漁港でボートを貸し出したと先程警察に通報があった様です。
ボートはこの島の方に移動していったと目撃情報がありました。
くりかえします」
新堂と美鈴はテレビを見ながら口があいた。
ピートは美鈴の膝でゴロゴロ言っている。
「お待ちください……あ、ここで情報が入りました!
昨晩遅く広島県***海水浴場付近で不審な男女三人を乗せたとのタクシー運転手から通報があったようです。
一人は身長175㎝ぐらいのやせ型、もう一人は小柄な女性、もう一人は身長2mを超えた大男だそうです。
警察は現在この三人が何処で降りたか等、情報を運転手から聞き取っている様です」
遠くからサイレンが鳴り響く。
西門はフロントに連絡をする。
「ああ、そうなんだ、うんありがとう。――もう警察が下に来ているそうです」
美鈴はため息をついた。
「シン手帳はあるか?」
「勿論ありますよ」
「此方から下に行くと伝えてくれ」
西門はフロントに伝えて受話器を置いた。
「大丈夫ですか」
「我々も警察だから正直に言った方が問題も少ないだろう。桜庭警視監にもちゃんと説明すればわかってくれる筈だ」
「でもAIロボットって美鈴さんの事ですよ」
『ピンポーン』
はやいな?
「俺が出ます」
新堂がドアを開けると黒いスーツを着た三人の外国人が立っている。
しかも銃を持っている。
「なんだお前らは」
「freeze!(とまれ!)」
新堂は慌ててドアを閉め床に伏せると数十発の銃声が聞こえた。
「班長! こいつら警察じゃないっす!」
「何をやっている!――私は山本警部だ! 撃つのをやめろ!」
銃声が鳴りやみ外人の声が聞こえた。
「YAMAMOTO? Bingo! GOGOGO!(ヤマモト? ビンゴだ!)」
新堂は部屋に駆け込むと、続いて黒スーツが廊下から部屋に入ってきた。
「何処の管轄だ!」
「ケイサツデス」
「何処の所属だ! どこの署か聞いている!」
「チョットマッテクダサーイ」
胸の辺りを探している振りをしている
[エル]いい?
>バッテリー残量90%。問題アリマセン
黒スーツ達は胸元に手を入れる仕草をみせた瞬間、美鈴は男に近づき首を掴み押し倒し指の電撃で気絶させた。
後ろの二人が銃を向ける。
新堂はドアの桟を掴んだ反動で美鈴を飛び越え思いっきり二人にジャンプキックをすかさず入れる。
二人が新堂とドアに挟まれたところに美鈴がとびかかる。
パチッという音とともに二人は気絶した。
その二人に更にピートが飛び掛かりバリバリやっていた。
新堂は美鈴の指から出た青い光を見て目を丸くしている。
「班長それって」
「この身体のオプションみたいなもんだ、それよりこいつら何者だ」
新堂は男たちの持ち物を探すとカードが出てきた。
「これって、此奴らロシア大使館の人間ですよ」
所持品のIDカードと捜査局のエンブレムが付いたカードを美鈴に見せる
「え?」
黒スーツの無線のイヤホンを西門が聞いている。
ロシア語の音声が聞こえる。
「FBIに先を越されるなと言っていますね」
西門は更に聞き取っている。
「どうやら警察はFBIの協力をしていますね。
暴走したAIロボット『MISUZU』の捕獲作戦を実行中です」
「なんで!?」
「恐らく、美鈴さんの身体の回収が目的ではないでしょうか。そのスーツは篠原の技術の結晶ですからね」
西門は更に推測する。
「だとするとロシアだけではないですよこれは。
各国が美鈴さんを我先に捕獲しようと動いている筈です」
>ミスズ、Mrマモルノ推測ハ約80%ノ確率デス
◇
「なぜ我々警視庁がFBIの捜査のサポートをする必要があるんですか!」
桜庭の大声が警視総監室で響き渡る。
「データ流出の一件でアメリカが外務省を通して正式に捜査依頼をしてきているんだ! 仕方がないだろう!
この日本で国際的禁止事項のAIロボット研究の情報が漏洩してるんだ」
「ですが! 本来であれば我々警視庁が主導で動くべき事項です!」
「アメリカは篠原の大株主を盾に篠原の資産は自分の国のものだと主張してきている!
今暴走しているAIロボット、山本美鈴の所有権を主張しているんだ!」
「――!」
「だが、あの我々が協力していたプロジェクトを知られるわけにもいかない。
桜庭、山本いやAIロボットをFBIよりも先に捕獲し必ず処分するんだ。
残骸でも協力は協力だ! メンツは保てる」
「しかし!」
「あれは山本では無い! 暴走したロボットなんだ。
このまま放置すると中国で発生した事故がいつ起きても不思議ではない。
更に昨日中国、ロシア、それだけじゃない各国から不審な人物の入国記録が見つかった。
目的はAIロボットの回収だ!この国で戦争が起こることは絶対に許されんぞ! これは命令だ!!」
桜庭は自室で近隣の県警へ通達を行うように指示をした。
山本が暴走?
本当にそうなのか。
不憫な思いをさせてしまった。
すまない。
これは俺の責任だ、俺がケリをつけなければ。
携帯が鳴る。
「おお、お疲れさんだなそっちに着いたのか。――何、新堂が? ――後で連絡する」
桜庭は慌ただしく内線をかけた。
「広島まで直ぐに行きたいんだよ、ヘリは出せるか?」
必ず俺が確保する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます