第40話 ヌケサク再び

[エル]何人か解る?

>ハイ。17人イマス。全員、銃ヲ装備シテイマス


美鈴は西門の襟をつかんで波止を飛び越えた。

「あっちに逃げて隠れろ! シンがきっと迎えに来るはずだ」

「新堂さんを見つけたら呼びます!」


黒山は大声で吠える。

「隠れても無駄! 無駄無駄ああああああ!」


[エル]あと何分ぐらい戦えると思う?

>通常モードデ5分、出力ヲ上ゲルト3分程度デショウ


17人か、多い。

囲まれれば、あっという間に捕まるだろう。

海岸を見ると、丈の長い葦の群生が生えている。

美鈴は低く屈み、葦の中に身を潜めた。


「おい! どこだ?」

一人の隊員が葦に向けて撃ちまくる。

釜崎は隊員をぶん殴った。

「判ってねぇな。俺達はクビになったんだぞ」

「アレを壊したら、交渉にも売りものになんねぇだろがよ!」

「ナイフ装着しろや! 生け捕りにしろぉ!」


あいつら、私を売る気か。

黒山がさらに吠える。

「山狩りと同じと思え! 互いの距離を詰めろ! 列をなせ! 足元に気をつけろ!」

隊員は照明を付け、地面を照らしながら距離を詰めてくる。


これは動きにくい。

足元にあった石を、反対側に投げる。

音が鳴った方向に、隊員達は反応した。

美鈴は後ろから近づき、足を掴んで一人引きずりこみ、口を押え気絶させる。


隊員が叫ぶ。

「石田が居ない! やられたみたいだ!」

隊員の声に、皆が振り向く。

美鈴はそのチャンスを逃さない。

反対側に回り込み、また一人引きずり込んだ。

「そこにいるぞ!」

反射的に銃を撃つと悲鳴が上がった!

そこには、足を撃たれ藻掻いている隊員がいた。


釜崎が、銃を撃った隊員をぶん殴る。

「だから撃つんじゃねぇよ! しっかりしろ! 音に気を取られるんじゃねぇ!」

美鈴は、今度は一気に後方から二人の足を捕まえると、前のめりに隊員が倒れ、そのまま引きずりながら移動する。

「うわぁあ、助けてくれぇえ!」

「向こうだ!」

隊員達は、美鈴を追いかける。

葦がガサガサ音を立てて遠くなる。

「居ました」

「おい! 起きろ! 駄目だ、気絶している」

釜崎は、隊員の顔に容赦のないビンタをするが、起きる気配が無い。

「っち。しょうがねぇな」

「我慢比べだあ! なぁに! その内出てくる筈だ! 一人になるとやられるぞ! 隊列を組めえ!」

美鈴はバラバラにしたかったが、上手くいかない。

隊は一列になっている。ここはひとつやってみるか。


[エル]出力最大で、格闘モーションセットして。

>ハイ。セットシマシタ

あと、バッテリーが減ったら都度教えてくれる?

>ミスズ、ワカリマシタ


美鈴は隊列の左端に移動する。

隊員の真横に、美鈴が突然現れる。

咄嗟にナイフで切り付けて来た。

すかさず美鈴は、ナイフを避けながら横回転し、隊員の顔を左手の甲で殴ると、隊員が回転しながら吹っ飛ぶ。

隣の隊員に速度が乗った左足のかかとを、右わき腹に叩き込むとくの字に曲がり右側に倒れた。

美鈴はしゃがみ、標的を見失った隊員は美鈴を探す!

そのままジャンプし、美鈴の膝が相手の顎に強打!


次の瞬間、美鈴は釜崎に頭を掴まれ、持ち上げられた。

――!

>バッテリー2%減少


「大人しくしやがれ!」

釜崎のでかい拳が、美鈴の顔面を強打する!

>頭部及ビ顔面損傷アリマセン

サンキュー


>ミスズ、コルチゾール分泌ニヨル感情数値ガ上昇中、上昇中――


釜崎に向かって吠える!

「お前! 女の顔に何やってんだぁあああああ!」

美鈴も釜崎の頭を掴み、連続で頭突きをガンガン叩き込む!


>ミスズ、2%減少シマシタ


次第に美鈴を掴む釜崎の手がゆるむ。

最後に美鈴は釜崎の顔を蹴り上げ、その場から離脱する。

顔面を血で濡らした釜崎が、白目をむいて後ろにぶっ倒れる。


釜崎の血で美鈴の顔も真っ赤に濡れている。美鈴が唸る!

「あと9人!」


>バッテリー2%減少、残量16%


黒山が吠える

「ウラァ! チャンスだ! いけぇえ!」

黒山以外の隊員が三人が取り囲むように走ってくる!

しかし取り囲んだ中に美鈴はいない。

黒山の声がする。

「何やってんだ! 上だ! 上!」

美鈴はジャンプし5メートル程飛び上がり、くるっと回転する。

そして膝を折り曲げ、強烈なニーパッドを決めた。


「大人しくしやがれ!」

残り二人が美鈴の背中に向けて、ナイフを振り落としてくる。

咄嗟に隊員側に転がり込み、ぶつかると隊員二人の体制が崩れ後ろにのけぞった。

そのまま逆立ちする様に後ろにジャンプすると、隊員の顎から顔面にかけて美鈴のキックが炸裂する。

残る一人は血だらけの美鈴を見て、ナイフを捨て逃げてしまった。

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