第39話 脱出
暫く通路を歩くと正面にドアが見える。出口だ。
「大分、歩きましたね」
ドアを少し空けると波の音が聞こえ月明かりの中小さく街の灯が見える。
周囲には誰もいないことを確認し外へ出る。
出た先は駐車場の出入口のすぐ脇にある斜面に作られていた。避難所のマークが書いてあり、関係者以外立ち入り禁止となっていた。
正面の道路の先にコンクリートの波止があった。その先は海岸だろう。
美鈴は海の香りを感じていた。
施設では消毒液の香り意外余り感じたことがなかった。
美鈴は街の光を見て懐かしい気持ちになった。
「元気が出るな、もう少しだ」
>ミスズ、バッテリー残量30%デス
うん、わかってる。
え? 30%?
>ハイ。充電用バッテリーノ残量ハ既ニ0ニナッテイマス
なんで。さっき50%だったと思うんだけど。
>ハイ。エレベータ内デノ戦闘デ20%使用、ソノ後大量ノデータダウンロードト改変及ビ送信ヲ行ッタ為、バッテリー残量ニ影響ガデマシタ
まぁ仕方がないね。節電節電。
辺りは月明かりで明るい。
遠くにはゴルフ場みたいなものもある。
リゾート地の様だ。
うーんクラクラする。
>ミスズ、脳内ノ糖分ガ不足シテイマス
ああ、そっちもか。
西門はバッグを開け、美鈴に補給パックを渡してきた。
「え、なんで?」
「必要な物は、入れてきましたので」
西門はチョコレートのパッケージを空けながら喋っている。
美鈴はパックをチュウチュウ吸いながら、チョコレートを見ている。
「欲しいんですか? どうぞ」
おお! 久しぶりのチョコレート!
ぱく! ……味が薄い。
>味覚調整シマショウカ?
してして!
>感度調整シマス
ん? んー甘い! 甘いぞ! すごい! いや、なんか辛い! 辛っ!
>戻シマス
あ、甘! ここ! ここで止めて!
>了解シマシタ
自由になれたし、一回全部見直して調整しておきたいな。
>自由ニナレマシタカ?
いや、この島から出たら出たで、何かあると思うし。
>早ク自由ニナレタライイデスネ
うん、ありがと。
道路わきにあったゴミ箱に、紙屑と白衣を丸めて捨て、美鈴はふと見上げた。
施設は高台にあり、この位置だとよく解らないが、施設全体の明かりがチカチカしているように見える。
この辺りでいいかな、今のこの位置の座標わかる?
>GPSデ割リ出セマス
それを送ってもらっていい?
>34.058348,132.396240送信シマシタ
ありがと、後は待つか。
風に髪がなびく。夜の海が静かだ。
「新堂さんですか?」
タブレットのチャット部屋を見ながら聞いてきた。
「私の秘密兵器だ」
「もしかして、助けにくるんですか?」
「うん、あいつは絶対に近くにいるはずだ」
「来ますかね」
「来る」
美鈴は、海をじっと見ている。
その時パーンと銃声が鳴り響き、足元で火花が散った!
「おいおい! こんなところでデートか!」
振り返ると10メートル程先に、釜崎と黒山がいる。
その後方には隊員達が、ざっと見ても10人以上いる。
「さっきは、よくもやってくれたな、おい!」
「そのスーツの事はバレてんぞ!」
裸では無く、装備も万全だ。
銃を構えてゆっくり近づいてくる。
これは不味い。
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