第31話 コロ
>ミスズ、スーツノバッテリー残量ガ残リ15%ヲ切リマシタ
え?
手首のLEDを見ると黄色になっている。
「充電しないと! 充電ケーブルどっかに無い?」
西門はバッグからケーブルを取り出し、美鈴と電源を繋ごうとしていた。
「あ、赤色に!」
その途端、体がよろめく。
>残量10%。セーブモードニナリマシタ
西門が電源を美鈴の後の首の部分のコネクタに繋ぐ。
>バッテリーチャージ中
危なかった。これから気を付けないと。
あのスーパー状態はもしかして結構電力を使うの?
>先程ノ状態デハ、フル充電状態デ2時間程度シカ、活動デキマセン
モーフィング自体も電気使うの?
>全身ノ外骨格及ビ、ファイバー機能等ノ伸縮ヲ行ウ為、カナリノ電力ヲ消費シマス
なるほど。これからは気を付けないとだ。
節電節電。暫くは田中さんのままだな。
西門が腕時計を見ながら
「部屋を出てから約1時間か、そろそろ収まってきますね」
監視映像を見ると西門が仕掛けた煙も収まってきている。
「今の時刻は16時37分、そろそろ暗くなりますし、逃げるには都合がいいですね」
美鈴は映像を見ながら呟く。
「そう、うまくいけばいいが……」
港の映像に小型船が到着し、武装した隊員が車両を誘導している映像が映っている。
屋上のカメラでは、三機の輸送用ヘリが今にも着陸しそうだ。
1階の正面玄関では、隊員に誘導され職員が車両に乗り込んでいる。
ここまでくると私設軍隊さながらだ。
取り上げた無線では、地下1階に突入の準備をしている様だった。
美鈴の位置情報の事も流れ、確保命令が出ている。
[エル]充電まだ?
>ハイ、現在25%マデ回復中
西門が映像を見ながら
「あの小型船いいですね。あれで移動しましょう」
「私の充電もどこまで回復するかだな」
「煙幕はまだ使えますが、心もとないですね」
んー本当は巻き込みたくないが仕方がない。とにかく入れておくか。
[エル]チャットつないでくれ
>ハイ。グループ部屋ヘ入リマシタ
じゃ、メッセージをこう書いてくれ
≪私を助けろ≫
>ハイ入力ヲシマシタ
うん、ありがとう
西門はにこにこしながら
「さて。今の内にやってしまいますか。天才的な罠も色々仕掛けたいですし」
そうだな、よしコロを出してくれ。
>ハイ。起動シマシタ
髪の間からコロが、転がってきて手のひらで止まる。
蓋を空けてアームをカシャカシャやっている。やる気満々に見える。
>私ガコロヲ操作シマスガ、イイデスカ?
はい、よろしく。
>筐体ヲ解放シマスノデ、上半身ノ衣服ヲ脱イデ下サイ
ブラウスを外し下着を取ろうとした時、西門が興味深そうに覗き込んでくる。
「――!! あっち向いてろ!」
「お構いなく。サイバネティックス観点の興味だけですから」
「こっちは構うの! 天才はドブ板の裏でも眺めてろ!」
>デハ筐体ヒラキマス
腹部のスキンに薄い筋が入り、そのまま腹部とみぞおちが二段階で開く。
>ミスズ、第二開閉部が、全開デキマセン
ん? ああ、田中さんの爆乳が邪魔で開かないのか。爆乳も不便だ。
美鈴は両手でグイっと持ち上げる。
「これでどう?」
>ハイ。ソノママニ、シテオイテ下サイ
『キュイン』と、音が鳴って全開した。
>デハ、ハジメマス
怒られた西門は、渋々タブレットで映像を見ている。
頭の中でコロのカメラ映像が映し出される。
これが体の中。意外にスッキリとしている。
油圧ケーブルとパイプの狭い空間を移動し艶々輝いている柱のような物がみえる。
恐らく骨だな。
底の丸い入れ物の様な所から、幾つものケーブルが張り出していた。
>センサーTS-0008供給コネクタUSB8.0-15。発見シマシタ
すかさず西門が
「[エル]さっきそのロボットに付けたワイヤーを引っ張れ!」
>Mr.マモル、了解デス
「ちょ! 何を勝手に」
いつの間に。ったく。
コロがアームを回転させると、細いケーブルが見える
>バッテリー端子ヲ確認。TS-0008ヲ別電源ユニットヘ換装完了
>CATEGORY_SS PROTOTYPE-0000カラTS-0008ヲ分離成功シマシタ
>帰還シマス
『ウィン』と音が鳴る
>筐体ヲ閉鎖シマシタ
ブラウスのボタンを留めながら美鈴が怒る。
「ちょっと!」
西門はまぁまぁと手を振る。
「此奴の電源を落としたくなかったんっですよ。
恐らく発信が途絶えた瞬間、何をやっているのか向こうに筒抜けになってしまいますから」
む、正論だ。
コロが持って帰ってきた発信機はもっと大きなものを想像していたが、小指の先ほどの物だった。
西門はコロから発信機を受け取った。
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