第26話 西門

しかし……ドン引きはしたが、期待もできる。


「天才と、いうことは脱出も完璧ですよね」

「あーソコなんですが、すみません。ノープランです」

は?

「ちょっと何を言ってるかわからないんですが」

「んーあなたの様な凡人には判らないと思うんですが、実験というのはですね、

 結果を勿論想定はするんですが事象仮定が面白いんですよ。想定外な結果? みたいな」


カッチーン! 凡人だと!?


[エル]コイツぶん殴っていい?

>ダメデス


西門はずーっと取り憑かれたように仮定を並べている。


うーちょっと腹立つー。

ダメだ。間違いなくマッドサイエンティストだわ。

付き合うとこっちだけ滅ぶタイプだな。バルスだっけ。

ばるす! ばるす!


大体、此奴がAIとか作らなきゃ私は今頃、あの世でキャッキャしてたかも知れないじゃないか!

私のあの世人生どうしてくれるんだ!

更に腹が立ってきた。


「おい、天才!」

西門は目をキラキラさせながら

「はい、なんでしょう」

「なんでしょうじゃない! 今の私の状況は知ってるんだな?」


西門はさらっと

「発信機のおかげで表にも出られない。頼みの綱のサポートロボも使え無い。って感じですよね。

 先ほどもお伝えしましたが、内部データも[エル]との会話も、ずっと見ていたので知っていますよ」


>ミスズ、コルチゾール分泌ニヨル、感情数値ガ高スギマス。怒ラナイデ

むぅー。

冷静に。


「じゃあ、天才はどうするつもりなんだ?」

西門はタブレットを見ながら

「現実は小説みたいにうまくはいきませんか。

 館内の警備からアラートが出ています。IDの認証エラーでバレたか。何人かこの部屋に向かってきていますね。

 さて、とりあえず逃げませんか」

と西門が言った途端、カチっと音がして連続して爆発音、かすかな揺れ、悲鳴が響く。


――!

思わず美鈴は西門の胸倉をつかむが、西門は涼しげな顔をしている。

「お前、まさか」

「大丈夫、煙と音だけの爆発物なので、ケガ人は一切出ません」

「本当だろうな!」

「勿論。僕は殺人やテロなんて非生産性な事には全く興味はないです。

 それより、今、この過程では絶好の好機だと思うのですが」


確かにこの状況はチャンスだが、

だがこのままだと、どこに行っても捕まってしまう。

いや、ちょっとまて。

私はまだ施設側にはバレていない。侵入者はこいつだけだ。


「西門といったな、私を連れて逃げろ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る