第8話 山本美鈴、大地に立つ!

医者が、美鈴の身体を支えてくる。

「ちょっと、そのまま立ってみましょうか、無理しないでください」


美鈴は、ゆっくりと足を床に下ろし、支えられながら立ち上がる。

おおお! すごい、身体の重みが解る。床だ、床が冷たい。

凄い、死んだのはつい最近だったが、久しぶりと感じる。

山本美鈴、大地に立つ! バーン!

フッカーツ!


その途端いつもの声がする。


>右義手連動ヲ確認。最新ドライバVer0.11へ、アップグレードシマス

>左義手連動ヲ確認。最新ドライバVer0.11へ、アップグレードシマス

>右義足連動ヲ確認。最新ドライバVer0.21へ、アップグレードシマス

>左義足連動ヲ確認。最新ドライバVer0.21へ、アップグレードシマス

>大腿部バランサー連動ヲ確認。最新ドライバVer0.21へ、アップグレードシマス

>大腿部バランサー連動ヲ確認。最新ドライバVer0.21へ、アップグレードシマス

>旧ドライバハダミーデータへ補完シマシタ

>『MainSystem-Dorothy』高速最適化中――最適化完了

>ネット視覚ヲ3D具現化ツールインストール完了


美鈴は声を聴きながらこう思った。

なんかバージョンアップっていいなぁ。

バンバン、やっちゃってください!


>IP接続ヲ確立中――構成完了

>プロキシヲ確認――クリア

>フミダイサーバーへ接続

>外部ネット接続中

>接続失敗

>接続失敗

>ツール検索中――

>ハッキングツール『BLACK Sling』ヲ発見。使用確認中――ウイルスチェック完了。インストール完了シマシタ

今、ハッキングって言ってけど大丈夫か?


>BLACKSling再構成中――完了シマシタ

>ルートPC-8976896ヲ経由中、外部ネット接続中――接続完了シマシタ

>通信環境構築完了シマシタ


医者が、立ち上がった私をチェックする。

横から少し押したり、後ろから軽く押したりする。

「ふむ、バランサーも正常に機能していますね」

少し強く、後ろから身体を押される。

思わず、前に足がでる。

「うん、素晴らしい」


医者が前に立つ。

「ちょっと、身体を触りますね」

医者が、触ってくる。

>スキン痛覚感度調整ツール確認。最新ドライバニ、アップグレードシマス。更新完了シマシタ

ん?

なんか、途端に身体が敏感になった。


ん?

ちょ!!

ちょっと、くすぐったい! やめて!

気持ちは嫌なのだが、身体の動く反応が遅い。


>痛覚感度調整レベル、標準ヨリ低下サセマスカ? YES/NO

YES! YES! YES!


調整が効いたのか、普通に触られているぐらいの感覚になる。

あー、死ぬかもってぐらい、こそばかった。あ、死んでたな私。


>表情筋モーションデータヲインストール中――インストール完了シマシタ

ん? もしかして表情変えられるのか? 口元を左右に動かしてみた。おお動く!

モーションって、もっとないの?

>モーションデータを検索中――検索データを表示シマス

>目ヲ、閉ジテクダサイ


美鈴は目をつぶる。

そこにはモーション画像のリストが並んでいた。

美鈴が下を見れば画像リストは、視界の外からスクロールしてくる。

変顔とかも面白うそう。

あれ? これは?

リストの一つを見ると、赤い枠が画像に表示された。

>コレハ、身体ノモーションデス


あ、波動拳とかあるじゃん。ちょっとそのうち入れてみよう。

これってタダ?

>有料ノモノト、無料ノモノガアリマス

>選択シタモーションヲ、インストールシマスカ? YES/NO

いやいや、後でいいよ


「山本さん?」

ん? 目を開くと医者が顔を覗き込んでいた。

「あ、はい」

「大丈夫ですか?」

医者はじっと美鈴の事を見ている。

「あ、大丈夫です。ちょっとうれしくて、はい」

「そうですか、良かったですね。では、身体からこのパーツを外しますので、そのままにしてください」

医者は背中の細いパイプをパチパチ外しだした。

興味本位で美鈴は聞いてみた。

「このパイプって何ですか?」

医者は外しながら教えてくれる。

「これは、この身体の電圧のバランスを取っていたパーツです。

 山本さんに電気は必要ありませんが、この身体はバッテリーで動いているので、変な箇所に負荷がかかっていないかチェックしていた訳です。

 もう必要ありませんよ。この体は健康体です。機械ですがね」

美鈴は機械には余り得意な方ではないがよくわかった。

「はいこれで最後と」

医者が全てのパイプを外してくれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る