第208話 11日後

 ギルド職員達が敬太達のもとに訪れ、追っ手が1か月後に来ると言われてから19日後。


 敬太は怒涛の快進撃を続け、20階層のボス部屋へと辿り着いていた。



 ここまでもそうだったように、新しい階層に進むと毎度毎度みっちりとモンスターが詰まっていたが、「ゴーレムの核」を200個、5体合体ゴーレム40体を導入し、ガソリンをばら撒き、力技で押し進んで行った。


 敬太は一発火をつけた後は、ひたすら電気工事をやり続け、15階層、17階層、19階層と3か所に罠を設置するのが一番時間がかかった気がする。

 だが、そうやって時間がかかり七面倒臭い作業を終わらせたので、1日に稼げる額が約3,420万円にまで伸び、それに加え、みっちりと詰まったモンスターを根こそぎ倒していったのもあって、短い期間だったのにも関わらず約6億円もの大金を稼ぎ出す事に成功していた。


 ストップがかかっていた壁の建設作業に再びゴーサインを出す事もでき、現在も急ピッチでモーブ達に作業をして貰っている。


 ちなみに、何枚ぐらい敷鉄板があれば理想の壁が完成するのか知りたかったので、正確な壁の大きさを測ってみた所150m×120mあり、それを当初の予定通りの高さ20mで作ると考えると、敷鉄板が全部で25,200枚必要になる計算になった。

 金額にすると敷鉄板が1枚81,000円なので2,041,200,000円(20億4,120万円)となるようだ。


 正面の壁が作られている時に費用は12億円程度ではないかと予想していたのだが、あの時(敷鉄板3,500枚使用時)でもまだ正面の壁は完成していなっかったらしく、ちゃんと完成すればどれ程に強固な物となるのか、今から楽しみな所だ。


 予想以上に大きく、それだけの枚数の敷鉄板を使う大工事なので、子供達が嫌にならないか心配していたのだが、子供達は幼いながらも「追っ手に追われる」という事がどういう事なのか分かっているようで、文句も言わずに毎日「ゴーレムの核」をいじっている。


 一生懸命やってくれている子供達の為にも、絶対に守らなくてはならないなと、改めて思った。



 それから、ドロップ品としては14階層のマンティスという大きなカマキリがハイマジックポーションを落としたが、それ以外は何も出て来なかった。


 ハイマジックポーションの性能はMP100回復と、ただのマジックポーションのMP30回復より大分良くなっているが、1日5本縛りなのは変わらないらしい。


 ハイマジックポーションの発見とレベルが上がったのが合わさり、1日に作れる「ゴーレムの核」の数が増えたのは有難かった。今までは1日17個だったのが、35個に増えたのだ。倍以上の数へと増やせるようになったのは、戦力強化の面から見ても心強いものとなるだろう。



 そして今、その戦力強化の結果を引き連れて20階層のボス部屋の扉の前に立っている。


「よし、行くか」

「ニャー」


 モーブ達は壁作りをしているし、サミーも防具が着れないのでそのお手伝い。

 ボスへと挑むのは、敬太とゴルとゴーさんと5体合体ゴーレム100体だ。


「【鑑定】」



『鑑定』

ブラウンベアー

頂点捕食者の一角に位置し、地上を走る時は時速65kmにも達するとされる

基本雑食だが肉食の傾向が大きく、自分が捕獲した獲物に対して強い執着心を示す


弱点 特になし

  

一般的には眉間や鼻が弱点と言われているが、それは「嫌がって逃げてくれるかもしれないよ」というだけで、そこを打てば倒れてくれるといった弱点とは違うだろう

ちなみに頭は銃弾を跳ね返す程硬いので、ヘッドショットを狙う時は気を付けましょう



 ボス部屋に入り大きな姿が目に入ったので、すかさず【鑑定】を入れると、見たまんまのブラウンベアーとでた。日本語にするとヒグマだ。


 大きな体で先へと続くドアの前に横たわり、敬太達の事を観察している。


「ゴーさん、いける?」


 敬太が本能的に感じてしまう恐れを抑えながらゴーさんに問いかけると、ゴーさんはいつもの調子でシュタっと敬礼ポーズをしてくれた。


「ふっーーー!よし、10体合体になってあいつを押さえつけて!」


 敬太は天井の高さを見て10体合体でもいける事を確認したら大きく息を吐き、号令をかけた。すると、100体の5体合体ゴーレム達が一斉にドロリと溶け出し一回り大きい10体合体ゴーレム50体となって、未だに横たわっているヒグマに向かって襲い掛かって行った。


「ブォォーーー!」


 そこでようやくやる気になったのか、横たわっていたヒグマがノソリと起き上がり大きな声で鳴いて威嚇をしてきた。


 現実世界だとヒグマの大きさは2m~2,5m程とされているのだが、流石ダンジョンと言った所だろうか、立ち上がって見せたその大きさは、5mある10体合体ゴーレムと同じぐらいの大きさがあった。


「でかいなぁ・・・」


 敬太は予想以上の大きさに思わずつぶやいてしまったが、ヒグマの見せ場はそこまでだった。


 前後左右を10体合体ゴーレム達に取り囲まれると、ヒグマは闇雲に腕を振るって応戦していたのだが、隙を見て後ろから組み付いたゴーレムがドロリと溶け出しヒグマに纏わりつくと、直ぐに動けなくなりガシャンと音を立てて地面に倒れてしまった。


 鎧を着たヒグマの一丁上がりだ。


 普段、敬太が鎧になってもらっている時は、スキル【同期】を使って敬太の動きに合わせて鎧自体に動いてもらっているので、パワードスーツのようになり、重さも感じ無いのだが、【同期】を切られたらゴーレムの重さがモロに加わり、きっと敬太もヒグマのように動けなくなってしまうだろう。


 10体合体ゴーレムの重さは約8t。

 ヒグマの方は大きさから考えて1t程度だろうか。


 自重の8倍の重さの物は流石に動かす事が出来ないだろう。


 人間に置き換えて考えると、体重60kgの人が480kgの物を動かそうとするのと同じだ。具体的に言うと、肩にマツコEXを3人乗せて、ついでに村上も1人乗せる。そんな感じだ。


 どうだ、動けないだろう?

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