第178話 他力本願

『レベルアップボーナス』


駐車場➡ガレージ➡オートリペアショップ

洗濯機置き場➡洗面所➡サウナ

キッチン➡パントリー

部屋拡張 0/2



 改札部屋にあるATMの画面には、久々のレベルアップボーナスの項目が映し出されている。


 敬太は未だにATMの前で腕を組み、どれにするか迷っていた。


「なぁヨシオ、部屋拡張の後ろにある2分の0ってのは何なんだ?」

「2回分のレベルアップボーナスを注ぎ込めば解放されるって意味だシン」

「やっぱりそうか。それじゃ今よりレベルが2つ上がればいいって事か?」

「それは教えられないだシン」

「なんでだよ!」


 実はこのレベルアップボーナスはレベルが1つ上がれば必ず現れるって訳じゃないので、そこの所を聞きたかったのだが、何故かヨシオは答えてくれなかった。


 実際に最後にレベルアップボーナスが来たのは25か26レベルになった時が最後だと記憶しているのだが、今の敬太はレベル30になってる。

 前回は「ヨシオ音声」を獲って、目の前にあるトイレットペーパーぐらいの大きさのスピーカーみたいな物がATMから出てきて、それからもうレベルアップボーナスは無くなったのかな?と思った頃になって出て来るもんだから、次回がいつ頃来るのか知りたかったのだ。


「5レベルずつ?それとも10レベルとか節目に出る感じなの?」

「それも教えられないだシン」


 ダメ元で聞いてみたのだが、ヨシオの答えはやっぱり変わらなかった。

 まぁ、そこまでレベルアップボーナスに期待してないし、待ち遠しいって訳でもないからいいのだけど、ヨシオは教えてくれる情報と、絶対に教えてくれない情報があるので面倒だ。


「まぁいいか」


 次回のレベルアップボーナスは、敬太がレベル40になった時なのか、それともそこまで遠くないのか、はたまたこれが最後なのか。その辺が何も分からないので、2回分必要なちょっと魅力的だった部屋拡張は諦めて、次点のオートリペアショップにしておこう。


 日本語にすれば車の修理工場って事なので、車の裏側を見る為のリフトとかが改札部屋の脇にあるガレージに出来るのだろう。


 敬太は車に詳しいって訳じゃないので、エンジンオイルの交換ぐらいしか出来ないが、なんか「基地」的な感じがして格好いいじゃないか。

 それに他の項目にあるサウナはいらないし、パントリーも敬太の【亜空間庫】がある今は必要だと感じない。



「ピン」

『カードを置いて下さい』


 ススイカ(改)を指定の場所に置く。


『登録が完了しました。カードのお取り忘れにご注意下さい』


 ATMと呼ぶ所以となっている機械的な声のアナウンスに従い、手続きを終えると思った通りガーレージの方で何かがあった気配を感じた。


 置いていたススイカ(改)を手に取り、早速動きがあったガレージの方へと行こうと思ったのだが、ATMの画面が通常の待機画面に戻らないので不思議に思い、画面を見続けていた。



『ギフト解放ボーナス』


『スタートボタンを押して下さい』


 

 すると、ATMの画面には過去に何度か見た事がある、ボーナスの画面が映し出された。と言うか、ギフトって言うのは何なんだろうか?


 とりあえず、スタートボタンがあるので押して見る事にした。


「ピン」

『スタート』


 画面に映し出された色んな文字が、目に見えない早さでスロットの様に回転していく。


『ストップボタンを押して下さい』


 あれは、そう、初めてスキルや魔法を覚えた時と一緒だ。

 こうやって新しい物を覚えて来たのだった。


「ピン」

『テ・テ・テ・・・テテーーーン』


 ストップボタンを押すと、回転していた文字がビタっと止まった。

 早くて文字は見えなかったけど、これビタ押しすれば選べたのだろうか?


 画面には「他力本願」という文字が止まっていた。


『カードを置いて下さい』


 どんなチカラなのか分からないが、今までボーナス関係で悪い事が起きた事は無いので、そこの所は信用している。

 とりあえずATMの案内に従ってススイカ(改)を所定の位置に置いた。

 

 そうすると、パッと画面が切り替わり、待機時間のパワーゲージが出てきて「しばらくお待ちください」の文字が点滅している。いつものやつだ。


 ゲージが動き出すと、例の挟まれるスポンジケーキの感覚が襲ってきて、されるがままに身を委ねていると、スポンジケーキの感覚は消えていった。


『登録が完了しました。カードのお取り忘れにご注意ください』


 ATMの声に従い、置いてあるススイカ(改)を手に取ると、ギフト「他力本願」の使い方を理解出来たのが理解出来た。


 どうやら「他力本願」とは、信用ある者と協力関係を結べると、その相手のレベルに応じた魔力を得られる様だ。


 具体的に言うと、敬太が心を許し、改札部屋に入れてもいいと思える相手にATMの画面に触れてもらうと、レベル1の人なら敬太の最大MPが1増えるって事らしい。


 自分でレベル上げの努力をせずに、人のレベルでチカラを得る。

 なるほど「他力本願」ね。


 ちなみに、相手の最大MPが減ってしまう様なデメリットは無いらしい。

 あくまでも、協力の範疇でって事らしかった。

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