第164話 門作り3

 それから、翌日、更に翌々日と、頑丈な門を作る為の良い方法が思い浮かばないまま、時間だけが過ぎていってしまっていた。


 午前中に罠が仕掛けられない偶数階に湧き出たモンスターを倒して周り、お金と経験値を稼ぎ、午後になると現実世界に戻ってネットサーフィンをして、どうやって門を作って行ったらいいのかを探る。夜になって改札部屋に戻ってくると、夜ご飯や、お風呂など子供達の世話を焼き、その後子供達が寝静まってからはダンジョンの3階層にある小屋に赴き、未だに会話が成り立たない「尊師の聖水」を飲ませた追っ手の生き残り、サミーの世話をした。


 ちなみに、このサミーなのだが、何が気に入らないのかハンガーストライキを実施中で、敬太が毎日置いていっている食料や水に、いっさい手を付けていない。すなわち捕らえられてから既に3日間、何も口にしていない状態なのだ。


 敬太が小屋を訪ねても、布団の中に丸まったまま出て来ないので、話も聞けないし、顔を合わせる事も出来ていない。ただ、布団の中で動いているのが確認出来ているので、まだそこまで心配していない。脱水症状にだけ気を付けてやれば、早々にくたばる事はないだろうと思っている。


 そんな感じなので、サミーから追っ手の新しい情報は聞き出せてないし、「尊師の聖水」の効果もいまいち分からないままで、こちらも時間だけが過ぎていってしまっている状態だった。




 更に翌日。

 いつもの様に、各階にリポップしたモンスターを倒して回り、その日に作った新しいアイアンゴーレムを、ダンジョンの外で【吸収】の作業を不眠不休で続けているゴーさんの所に連れて行く。


「ゴーさん、連れて来たよ~」


 今日も1日に作れる限度の10体をきっちり作って来たので、全部でアイアンゴーレムが55体にまで増える事になる。


 敬太はダンジョンの入口の脇に積まれた「ゴーレムの核」を吸収し終えたストーンゴーレムだった物の抜け殻の山を【亜空間庫】にホイホイとしまって片付けて行く。


 その傍らで敬太の声に気が付いたゴーさんは【吸収】の作業の手を止め、新しく連れて来られたアイアンゴーレム達と【同期】をして、知識の共有をしていた。

 こうやって新しく生み出されたゴーレムと【同期】する事で、いちいち新しく生まれたゴーレム達にダンジョンについての説明や、今やっている仕事の内容なんかを教えなくても済むのだ。


 敬太はストーンゴーレムだった物の残骸の山を片付け終わったので、後はいつも通りゴーさんに任せてこの場を立ち去っても良いのだが、日に日に残骸の山の量が減って来ているのが気になった。

 この【吸収】の作業も今日で4日目なので、ダンジョンの入口付近は既に綺麗に片付いていて、今は雑木林の中に続いているゴーレムの残骸で道になってしまっている物をわざわざダンジョンの入口付近まで運ん来ている状態になるのだが、どうもその運搬の距離のせいで作業効率が落ちてきてしまっているらしい。

 このままでは毎日ゴーレムの数を増やそうが、作業効率は落ち続けて行ってしまうだろう。


 ダンジョンの入口付近の雑木林は、ダンジョンの入口を中心に車で3時間の距離で円形状に広がっており、そのきわの外周には高さ20mぐらいの崖がグルっと聳え立っていて円形状の雑木林を囲い込んでいる形になっている。

 自然が作りだした大きな盆地で、現地の人には「呪いの森」と呼ばれている場所。聳え立った崖が外からの出入りを難しくさせ、本来ならば人が立ち入ってくる様な場所ではない。

 だが、風化したのか、その周りを囲んでいる崖の一部が崩れてしまっていた場所があり、そのせいでこの「呪いの森」の中に簡単に出入り出来るような状況になってしまっていた。なので敬太は、その崩れてしまった部分に大きな門を作っていたのだが、恐らく今回はその門も破壊され追っ手達に進入を許してしまったのだろう。


 要するに、ストーンゴーレムだった物で出来た残骸の道は、その崖の門まで続いているはずなので、車で3時間もかかる距離を往復して徒歩のゴーレムで運んでいたら片付けに何日かかるか分からないだろう。なので、いちいちダンジョンの入口までストーンゴーレムの残骸を運んで来なくていいよって事を伝えたかったのだ。


 集めやすい場所に集め、何箇所かに分けて集めてくれればいいと、敬太はしゃがみ込み地面に絵を描きながらゴーさんに説明をする。


 ゴーさんは敬太の拙い説明で理解してくれたのか、いつもの様にシュタっと敬礼ポーズをしてきた。


 まぁ、ちゃんと伝わってなかったら明日また説明しよう。


「あっ、ちょっと待って。近くにいるゴーレム達も集まって~」


 敬太の話が終わった途端に作業に戻ろうとしていたゴーさんを呼び止めて、声が届く範囲に居たゴーレム達も呼び寄せる。


 もっと効率を上げてもらう為にリヤカーを持たせようと思ったのだ。


 敬太の呼びかけに集まった14体のゴーレム達とゴーさんを引き連れて、改札部屋に戻ると「ネットショップ」でリヤカーを20台程注文し、それらを全部持って行ってもらった。


「それじゃあ、よろしくね。また明日、見に行くから気を付けてね」


 リヤカーにリヤカーを積み、揃ってシュタっと敬礼ポーズをした後に、ぞろぞろと移動していくゴーレム達とゴーさんを見送りながら、敬太は1体だけ残った連絡用のゴーレムと共に改札部屋に戻り、昼食の準備を始めた。

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