第163話 門作り2
「う~ん・・・」
敬太は長い時間腕を組み、どの様な門が現実的には良いのか考えていたが、頭の中にある知識だけではいくら考えても良い答えが出る事は無かった。
ふと地面に目をやると、ゴルが暇そうにして地面で丸まっている。
「戻ろっか」
「ニャー」
丁度、腹も減って来ていたので、入口周辺の寸法だけをちゃちゃっと測り、後は現実世界に戻って調べようと頭を切り替えた。
「ゴーさん。先に改札部屋に戻ってるね」
外にいるゴーさんを見ると忙しなく【吸収】の作業をしていたので、一緒に部屋に戻っても仕方が無いと思い、声だけ掛けてこのまま外に置いていく事にした。
しかし、声を掛けられたゴーさんは「分かった」とばかりにシュタっと敬礼ポーズをした後に、傍にいた1体のアイアンゴーレムを指差してきた。
敬太は「ん?」と、一瞬何を言いたいのか分からなかったのだが、その指差されたアイアンゴーレムがテコテコと歩いて近づいてきたので、何となく察する事が出来た。
「連絡係かな?」
敬太が確認の為ゴーさんに尋ねてみると「その通り」だと言わんばかりに再び敬礼ポーズを決めていた。
「分かった、それじゃコイツは部屋に連れて行くね。また夜ご飯の前にでも様子を見に来るよ」
改札部屋に戻ると、部屋に籠ったまま過ごしていたモーブ達と昼食を済ませ、簡単には作れないかもしれないと、門の話をした。
「うむ。そうか」
ダンジョン関係の事は敬太に一任しているモーブは、一言だけ返事をし、自分は居候なのだからそういった事は任せるとの事だった。信頼されているのか、そこまで問題視していないのか。どちらにせよ、任されたからにはしっかりした物を作らなくてはならないな。
早速、敬太は怪我のカモフラージュを施し、ゴルには2代目ハードシェルバッグに入ってもらい、昨日に続き今日も現実世界に戻って行った。
今回調べるのは門の作り方なので、調べ物をする量が多くなりそうだし、自分で門を作るとなったら図面も引く事になるかもと思い、長期戦を見越して実家に帰る事にした。
タクシーを使い、いつもの様にススイカ(改)で支払いを済ませると玄関のカギを開け、一直線に自分の部屋へ行き、久しぶりにパソコンを立ち上げた。
ファンの回る音が部屋に響き、パスワードを入力するとデスクトップ画面が映し出される。
足元ではチャックを開けて置いていたバッグからゴルが顔を出し、ここは何処だとキョロキョロしていたが、ゴルも知っている敬太の実家だと分かるとステテテと足音を立てながら家の中の探検に出かけて行った。
実家にもゴルの水の器があるので、軽く水洗いをした後に、水を入れて床に置いておく。探検に疲れて帰って来たゴルは水を欲しがるだろうと見越しての事だ。
さて、家まで戻って来た目的を果たそう。
門から始まり、頑丈、鉄など関連しそうなワードを入力して、欲しい情報を探していく。メーカー品から、輸入品。世界各地の門の写真や中世ヨーロッパ風の城の写真。それから柵や扉でも使えそうな物を探してみる。
しばらくネットサーフィンをし、あーでもない。こーでもないと色々な所を探ってみたが、それで分かったのは、敬太が求める様な頑丈な門は何処にも売ってないって事だった。
きっと近所の業者などに金を積めばやってくれる所はあるのだろうが、業者の人を連れて異世界に行くってのはどう考えても現実的じゃない。
そうなると残された道は自作と言う事になるのだが、敬太が求めるのはシルバーランクPTとの戦いの事を考慮して、それでも耐えられそうな敷鉄板10枚分ぐらいの厚みがある物か、それぐらい頑丈な物になるのだが、とてもじゃないが素人の敬太には自分で作って設置するなんて事は出来そうもなかった。
敷鉄板10枚分という事は厚みは20cm以上になり、重さ8tからの鉄の扉になってしまうのだ。まぁ、どう考えても人のチカラで開け閉め出来ないだろうな・・・。
頑丈な門作りにおいて、早くも暗礁に乗り上げてしまった感があり、途方に暮れてしまう。
「う~ん」
「ニャーン」
敬太が腕を組み唸り声を上げると、いつの間にやら探検から戻って来ていたゴルが足元から声を上げていた。
下から敬太を見上げているゴルをひょいと抱え上げ、膝の上に乗せると、柔らかい毛並みを楽しんだ。
結局、夜になっても良い案は浮かんで来なかったので、気分転換に歩いて駅まで向かって行く。
良く聞く話で、漫画家や小説家が話に行き詰まると、散歩をして閃きを得たり、良いアイディアを思い付く事があると言うので、敬太も真似して歩いてみたのだが、特に効果は出なかった様で、何も思い付かないまま駅まで辿り着いてしまった。
「はぁ~」
こうして、何の成果も得られないまま、半日を無駄に潰してしまったという結果だけを残し、トボトボと改札部屋へと戻って行くのだった。
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