第129話 朝ご飯

 翌朝、クルルンとテンシンの話し声で目が覚めた。


「お腹空いたなー。朝ご飯は何だろうな」

「何だろうね~」


 別に虐待している訳ではない。ちゃんとご飯は3食与えているが、胃が小さい子供達はすぐにお腹が空いてしまうのだろう。

 月々お小遣いも与えているのだが、それでお菓子を買うなんて事は無く、自分達の趣味に突っ走っているので仕方が無い。


 今度お菓子を買って何処かに置く様にしようかね。


 昨日からモーブ達と改札部屋で寝起きをする様になったのだが、おかげでこういうどうでもいい会話で起こされる事となった。


「う~~~ん、おはよう」

「おっちゃん起きたのか。おはようー」

「おはよ~」


 敬太はベッドから体を起こしクルルンとテンシンに朝の挨拶をしたが、同じ部屋に寝ているはずのモーブの姿が見当たらなかった。


「あれ?モーブは?」

「ウサギの姉ちゃんの所に行ったよ」

「いったよ~」


 どうやら、寝室にいる女の奴隷を見てくれているらしい。

 勝手に敬太が拾ってきてしまったのだが、女の奴隷は人間嫌いらしく、敬太が顔を見せると暴れてしまうので、世話をモーブ達にお願いしているのだった。


「そうか。クルルン、テンシン顔洗ったか?」

「洗ったよー」

「洗った~」


 子供達は既に身支度を済ませ、朝ご飯を待っている状態だったようだ。

 ならば、敬太も洗面所に行って顔を洗おうかと思ったが、敬太が起き出した事に気が付いたゴルがベッドに上がってきて「頭を撫でろ」と頭を擦り付けてくるので、しばらくの間ゴルの体を撫でまわしてやる事になった。



「うむ。起きたか」


 敬太が洗面所の鏡の前に立ち電気シェーバーで髭を剃っていると、モーブが寝室から出て来た。


「あっ、おはようモーブ。大丈夫でしたか?」

「うむ。おはよう。今、目を覚ましておる、大丈夫じゃ」

「そうですか・・・」

「うむ。ちと、顔周りをやられているからのう。まぁ、柔らかい物なら食べられるじゃろう」

「えっ、朝ご飯食べられそうなんですか?」

「うむ。食べれば元気も出るじゃろう」


 女の奴隷はハイポーションを使わないと助からないと思う程の大怪我なのだが、モーブから見れば、ご飯を食べられる程度に見えるらしい。もしかしたら獣人と言う種族は体が頑丈なのだろうか?


 女の奴隷に用意する朝ご飯は、敬太的には無難にお粥とかゼリーとかで良いかと思ったのだが、モーブに何が良いか聞いてみた所「柔らかい肉」が良いらしいのでハンバーグをデリバリーで頼んだ。そうしたら、その匂いに反応した子供達が食べたいと騒ぎだしてしまった。


 敬太はこの1年間体を動かし、10kmを1時間切る速度で走れるようになり、腕立て伏せも30回3セット、腹筋50回2セット出来るようになり、38歳にしてはかなり若々しい部類になったつもりなのだが、朝からハンバーグはキツイ。

 子供達のリクエストに応えてハンバーグは頼むが、敬太はおにぎりとお新香と味噌汁で済ませた。ちなみにモーブもハンバーグを食べていた。

 モーブさん、あなた52歳なんですよね?・・・。



 朝ご飯を食べ終えたので、食後のお茶を出そうと思ったら、モーブがハンバーグを持って寝室に入って行ってしまったので、淹れたお茶は子供達に運んで行ってもらった。


 ひとり改札部屋に残った敬太は、お茶を飲みながらATMを触る。

 昨日ごたごたとしていたので、まだ魔法を取得していなかったのだ。



残高 44,855,120円



 10億円の空間魔法【亜空間庫】を買ってから、あまり日が経ってないのでススイカ(改)の残高は4千万円ちょっとだった。

 一時、10億円超えの残高があったので少なく感じてしまうが、一般的には中々の大金になるだろう。


 残高の確認をしたので、次は魔法の項目をタップする。



火玉   ¥10,000,000-

水玉   ¥10,000,000-

風玉   ¥10,000,000-

土弄   ¥100,000,000-


光玉   ¥100,000,000-

闇玉   ¥100,000,000-


スロウ  ¥500,000,000-

空間壁  ¥5,000,000,000-



 相変わらずえげつない値段だ。【土玉】の次に出ている【土弄つちなぶり】が1億円。

 【亜空間庫】の次に出た【空間壁くうかんへき】が50億円。


 なんちゅう世界だ。残高の4千万円が可愛く見えてしまう。

 とりあえず【火玉】を買って、火系の次の項目を見せてもらおうかな。


「ピン」

『カードを置いて下さい』


 ススイカ(改)を指定の場所に置くと、待機画面に切り替わりパワーゲージが現れる。それから例の大きなパンケーキに体が挟まれる様な感覚が襲ってきた。だが、もうすっかりこの感覚には慣れているので何とも思わなくなっている。


 しばらくするとゲージが溜まり、フッとパンケーキの感覚が無くなった。


『登録が完了しました。カードのお取り忘れにご注意ください』


 ATMから指示が出たので言われた通りススイカ(改)を手に取ると、火魔法【火玉】を理解出来た事が理解出来た。

 どうやら【火玉】とはソフトボールぐらいの大きさの火の玉を飛ばす魔法らしい。何の捻りも無い、字のまんまでした。


 待機画面に戻っているATMのパネルを操作して、もう一度魔法の所を見てみる。



火槍   ¥100,000,000-

火柱   ¥100,000,000-

水玉   ¥10,000,000-

風玉   ¥10,000,000-

土弄   ¥100,000,000-


光玉   ¥100,000,000-

闇玉   ¥100,000,000-


スロウ  ¥500,000,000-

空間壁  ¥5,000,000,000-



 あった【火槍】。


 ヨシオ曰く、これがあれば10階層を守っているアメダラーが倒せるらしいが、1億円もするようだ。


 今の残高は【火玉】を買ったので3千万円ちょっと。【火槍】を買うのはもう少し先になりそうだ。

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