第64話 ATM
徒歩の日帰りでは何も見つけられなかったので、どうしようかとずっと考えながら歩いていたのだが、その中で思いついたのが自転車だった。マウンテンバイクみたいなオフロードに強いやつなら、雑木林の中でも走れるだろう。
徒歩だと入口の洞窟を中心に半径10kmぐらいの範囲を見て回った計算になるが、自転車なら半径20km以上はいけるのではないだろうか?
約倍の範囲で進めるなら何か見つけられるのでは無いだろうか。
後はドローン辺りも使えないかと考えた。
上空から雑木林を見渡せば、何かしら見付ける事が出来るのではないかと思っている。
そうして、ひじ掛けにあるタブレットを手に取りネットショップを開こうと思ったのだが、画面に「レベルが上がっているのでダンジョン端末機ヨシオの前までお越し下さい」と出ていたので、リクライニングチェアから立ち上がりATMの前に向かった。
『レベルアップおめでとうございます』
『レベルアップボーナス』
ヨシオ音声
トイレ➡シャワー➡お風呂
駐車場
洗濯機置き場
「自動マッピング」を取ったからか、新しい項目が出てきている。
洗濯機置き場だ。特に必要ではない気がする。
ならば、シャワーの次のお風呂で湯船に浸かるのもいいかもしれない。
だがしかし、本命はヨシオ音声だろうか。やっぱり選択肢は上から選ぶのが王道だと思えたからだ。
ダンジョンの外に初めて出た時迷子になってしまったのも、素直に上の項目から制覇していかなかったせいなのだ。
ヨシオ音声も、どんな物かは分からないが、きっと役に立つ機能に違いない。
よしっと決めて画面を押そうと思ったが、その時に閃いてしまう。
「駐車場」うん、ありかもしれない。
咄嗟の閃きに、ヨシオ音声の上にあった指を下にずらしていき駐車場を押していた。
「ピン」
『カードを置いてください』
きっと上手くいくはずだ。
ススイカ(改)を置く。
『登録が完了しました。カードのお取り忘れにご注意下さい』
気が付くと新しいドアが出来ていた。
扉に近い横の壁に出来たので、新しく出来たドアの前にゴーさん達が畳を敷いて座っている形になってしまっている。
「ごめん、ちょっと移動してもらえる?」
ゴーさん達に声をかけ移動してもらい、畳をずらしてドアの開け閉めの邪魔にならない位置に敷き直す。
さて、どんな感じなのだろう。早速ドアを開き駐車場に入った。
駐車場の中は何もなく殺風景で、広さは4tぐらいのトラックなら余裕で入るぐらいの広さがあった。高さは3~4mぐらいあり、大分天井が高く、天井には丸い穴が開いていて、そこから明かりが差している。ダンジョン側の壁は一面、引き戸になっていて、そこから車両の出入りが出来そうだった。
引き戸近くの壁に、パネルが嵌め込んであったので覗いてみると「車両登録」と書いてあった。
試しにパネルの画面を押して見ると「登録できる車両を所持していません」と表示される。
なるほど「登録」ね。
なんとなくピンときた。
駅の改札口まで車で乗り込んで行き、ススイカ(改)を使って車ごと改札部屋へ飛ぶとか不可能に近いだろう。
そしてこの「登録」というワード。
たぶん自分の車を登録すれば駐車場に飛ばせるんじゃないかな?
予想だが確信めいたものがあった。
これは早急に検証だな。一度戻って軽トラでも買ってみるか。
最後に駐車場の引き戸を開けてみると、上から電気コードが落ちてきていた。
高さ2mぐらいで壁に這わせていた電気コードが、壁が引き戸に変わってしまったせいで外れてしまった様だ。
引き戸は高さ3m~4mぐらいあるので後で付け直さないといけないだろう。
駐車場の引き戸からそのままダンジョンに出てみたが、特にダンジョンに変化は無く、少し離れた位置に改札部屋の扉がある。
そして、ダンジョン側から引き戸を見てみると普通の石壁にしか見えないようになっていた。
凄い、これカモフラージュの出入り口だ。
試しにダンジョン側から引き戸を閉めてみると、何処に引き戸があるのかもう分からない。これは凄い技術だ。
ひとしきり感心して改札部屋の扉から部屋に戻った。
駐車場の登録機能しだいなのだが、今はマウンテンバイクを買うのは止めておこうと思う。それで明日は車屋に行ってみよう。
いや、今から帰って情報を集めておくか。
車を買うのは初めてではないが、以前の事など朧げにしか覚えてないので、必要な書類や、保険なんかをネットで調べておきたかった。
そんな訳でススイカ(改)から軽トラのお金を引き出してから帰る事にした。
残高 50,663,200円
おぉ、罠のおかげで凄い増えてる。真面目に毎日ピルバグ狩りをしていたのもあるのだろう。いつの間にやら残高が5千万円を突破していた。
魔改造され上限が無いICカードのススイカ(改)。「自動取得」によりダンジョンで倒したモンスターのお金が勝手に集まって行き、普通のススイカには無い「お引き出し」も出来るようになっているのだ。「払い戻し」ではなく「お引き出し」だ。
ススイカ(改)の残高が思っていたよりあったので、またスキルを覚えてもいいなと思いながら、金額を押してお金を引き出す。
とりあえず50万円もあれば中古の軽トラなら買えるだろうと、5、0、0、0・・・と「0」を連射して確認ボタンを押す。
すると、ATMの中からお札を数えるバババッって音がして投入口が開く。
「ガシャ、ガシャン」
何故か2段階で、そこまで開くの?ってぐらいに見た事が無いほどガバっと投入口が開き、中からお札の束がせり出して来た。
「え・・・」
画面を確認すると、お引き出し金額の0が1個多かったようで5百万円になっていた。と言うかATMの限度って50万円じゃないんかい!
百万円の束なんて初めて見たし。帯付きで出てくるとか、どうなってんだこのATMは。
多く引き出してしまったのでススイカ(改)にチャージし直そうかと思ったが、これぐらいの現金を確保しておいて銀行に預けておいてもいいかもしれないと思い直し、このまま持って行く事にした。
ネットショップで適当な紙袋を買って5個の帯付きの札束を入れておく。
思えば1か月以上家に帰ってないかもしれない。ついでと言っちゃなんだが父親の所に顔を出したりしないといけないな、なんて今更ながら思い出した。
少しダンジョンにのめり込み過ぎた感は否めない。
準備を整え、ゴーさん達に声をかけ、ゴルはハードシェルバッグの中に入る。
さて久々に現実世界に戻りますかね。敬太はススイカ(改)を使い駅へと戻って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます