第63話 探索

 5日後。

 毎日ピルバグを狩りつくし、細々とした作業をしてい過ごしていたが、やっとレベルが上がり、レベルアップボーナスの「自動マッピング」を得る事が出来た。


 「自動マッピング」とは文字通り、今まで行った事がある場所の地図が頭の中に浮かび上がり、さらに自分が今いる現在地が記される優れものだった。


 これがあれば、絶対に迷う事はない!


 今まで何度もレベルアップボーナスの時に表示されていたのだが、ずっと無視し続けていてごめんね。


 これでダンジョンの外の探索が出来るようになるだろう。

 ここが何処なのか?周りには何があるのか?人はいるのか?モンスターはいるのか?知りたい事は山の様にあるのだ。


 大きな目標である回復(中)以上のポーションを手に入れる為に、何かしら情報が欲しい。自力では手詰まりしている感があるので、是が非でも情報を持っている人に接触を図りたい。




 しっかりと日課のピルバグ狩りを済ませてから、この日で7体にまで増えたゴーさん達と一緒にダンジョンの外に出てきた。


 頭の中に浮かび上がる地図を確認すると、ダンジョンの入口の洞窟の場所がちゃんと地図に記されているので、もう迷う事はなさそうだ。

 それと前回迷ってウロウロしていたルートも、同じ所をグルグル回っていた跡が地図に書き込まれていた。この空白を塗り潰していく「地図埋め」型ならば、効率よく頭の中の地図を埋めていく事が出来そうだ。


 今日からは方角を決めて、真っ直ぐ徒歩で3時間ぐらいの距離まで行ってみようと思う。帰りの時間も考えると、それぐらいの時間が適当だろう。


 ちゃんと食べ物や水分、ゴルのご飯とお水も持ってきているので、往復6時間の長丁場の準備はしてきてある。


 さあ頑張って人や建造物を探すぞ~。





 4日後。

 ダンジョンの入口を起点に、東西南北の4方向にそれぞれ進んでみたのだが何も見つからなかった。

 それどころか、ずっと雑木林で、雑木林から抜け出る事さえも出来なかった。

 足は棒になり、筋肉痛になる度にポーションのドーピングで乗り越えやってきたが、成果は得られなかった。


 まだだ・・・まだ諦めない。


 半ば意地になり探索を続ける事にする。

 北東、北西、南東、南西。漢字の「米」の字の様に、東西南北に新たに4方向を加え全部で8方向に探索する事にした。しかも進む時間を3時間から4時間に延長して、日帰りのギリギリの範囲で行ける所まで行って探って来るつもりだ。


 弁当を持ち、ゴルのご飯。それに水分をそれぞれ多めに持っていく。

 荷物が多くなってしまうが、その辺もポーションのドーピングで乗り越えていくしかないだろう。





 さらに4日後。

 ダメだった・・・何の成果も得られなかった。

 徒歩で4時間、足元が悪いので時速2km~3kmだとしても8km~12km。ダンジョンの入口の洞窟を中心にして、円を描くようにそれだけの範囲を探索したのだが雑木林を抜ける事さえ出来ずに、全て空振りに終わってしまった。



 最後の南西方向の探索からダンジョンの入口の洞窟へと戻って来ると、8時間ぐらい歩いていたので足はパンパンになり、足の裏には突っ張るような痛みが出ていた。

 すっかりと日は落ち、辺りは暗くなっているのでダンジョン装備のライトは既に点灯させている。


 ダンジョンの中に入って通路を歩いているとゴーレム達が出迎えてくれた。

 ゴーレム達は敬太を見つけるとシュタッっと敬礼ポーズをして挨拶をしてくれる。


「ただいま~ダメだったよ」


 いつの間にか15体と、日に日にゴーレムの数は増えていっていたのだが、探索に連れて行ったのは切りがいい10体だけだった。残りのゴーレムにはダンジョンの見回りを頼んで、留守番をしてもらっていたのだ。

 何故なら、この数日間の探索の間、雑木林の中でモンスターに遭遇しなかったのと、ぞろぞろと大人数を連れ歩くと、はぐれた者がいないか数を確認するのが大変だったからだ。


 そうして、見回りのゴーレム達と合流する形で、一緒に改札部屋へと帰っていく。

 敬太が戻ったので、お留守番していたゴーレム達の仕事は終わりだ。

 わらわらと敬太の後ろに続くゴーレム達、みんなで改札部屋に入って行く。


 敬太1人だと広く感じていた改札部屋も、ゴーさん達ゴーレム軍団15体ともなると、さすがに狭く感じてしまう。

 ゴーレム用に敷いた畳の数は8枚にもなり、部屋の壁際に4枚4枚と左右2か所に分けて畳を並べて座ってもらう。


 背中のハードシェルバッグをチャックを開けて降ろしてやると、ゴルが出てきてゴーさん達に突撃していった。

 最近すっかり仲よくなったみたいで、ゴーさん達の頭の上に登ったり「ミャーミャー」と話しかけたりしていて、ゴーさん達は丸い手を動かし相手をしてくれている。

 

 ゴルとゴーさん達がじゃれあってる様子を微笑ましく見ながら着替えを済ませ、ついでにロッカーからポーションを取り出し、腰に手を当てて一気飲みした。

 グワっと体が熱くなり、足の痛みが引いていく。


 「ふぅ」と息を吐きながらリクライニングチェアに腰掛けた。

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