第29話 自動取得
改札部屋の扉を開けると、まぶしい光が出迎えてくれる。
ヘルメットを脱ぎ、床にダンボールを敷いてお茶を飲む。
バッタとやりあったので、何だかんだで疲れた。
今日の収穫は、ポーション1つにマジックポーション1つ。
それと自分に鑑定をかけられる事を知れたのが大きい。
HP、MPという数値で管理。目に見える数字っていうのが素晴らしい。一目瞭然なのでこれからの進退の指針になるだろう。便利だ、まさにゲーム感覚だった。
ふとATMにチラリと目をやると文字が出ているのが見えた。
『レベルアップおめでとうございます』
『レベルアップボーナス』
自動マッピング
ロッカー ➡自動取得
椅子
ヨシオ音声
おお、ボーナス来たな。ロッカーの横に矢印が伸びて自動取得とあるけど、なんだろうか?椅子、ヨシオ音声。いらんなぁ。自動マッピングも、まだ必要性を感じるほどダンジョンの先に進んでいないのでいらない。
う~む。消去法で、新しく出た自動取得いっとくか。
「ピン」
『カードを置いて下さい』
ススイカ(改)を置く。
『登録が完了しました。カードのお取り忘れにご注意下さい』
フッと後ろのロッカーの方で何かが動いた気配がしたのですぐに振り返ると、ロッカーの脇に物置のような箱が現れていた。
フン!もう驚かないぞ、ゲームのような世界感だもんな。ロッカーの出方と同じだし、そんなものだろうと思ってたよ。
現れた箱は、引き戸で、幅がロッカーの倍ぐらいある。取っ手部分にはススイカのマークがあり黒い四角があった。これはロッカーと同じ使い方だろう。
早速ススイカ(改)でタッチしてみた。
「ピッ」
電子音がしたので引き戸に手をかけ、戸を開けてみた。中身は何も入っていない。
箱の中の大きさは畳二畳分ぐらいで、高さは中に入って手を伸ばせば届くぐらいだ。完全に庭に置く「物置」と同じだ。
「自動取得」っていうので現れたのだから、何かを取ってくる箱なんだろう。たぶん・・・。良く分からんけど。
再びATMに目をやると待機画面に変わっていた。
チャージ お引き出し
スキル
何故か「お引き出し」っていう項目が増えている。
どういう関係で現れた項目なのか、いまいち分からないが、とりあえず見てみる。
「ピン」
『カードを置いて下さい』
引き出しボタンを押してみると指示が来たので、言われた通りにススイカ(改)を置く。
残高 1,210円
残高と数字のボタンが出てきた。普通のATMにある、よく見る感じの引き出し画面だ。
ここには取り消しボタンがあったので押す。
『カードのお取り忘れにご注意下さい』
何だこれ?普通のATMだ。改札部屋からススイカ(改)に出入金が出来るようになったって事なのだろうか?必要だろうかこの機能?
もしかして、ハズレのレベルアップボーナスを選んでしまったのかもしれない。
「自動取得」が何を指しているのか良く分からないし、これならば自動マッピングにしておけば良かった気がする。やはり選択肢は上からの法則にしたがっておけば良かった。
しばらく意気消沈していたが、まだ検証が残っているのを思い出した。「ポーションは筋肉痛を治せるのか?」これならばMPが減っている今からでも出来るはずだ。
今も結構疲れてはいるけど、明日筋肉痛になるかと言われると微妙な所で、もう一汗かく必要があると思えた。
「ピッ」
ロッカーを開けてつるはしを取り出す。
さてそうなるとダンゴムシ狩りだ。スキルを使わず、自分のチカラだけでやれるところまでやってみよう。
ヘルメットを被りリュックを背負い、しっかりと装備し直して、いざ出陣!
階段を上り、いつもの体育館ぐらいの大きさの部屋の来た。足元にはゴロゴロとあちこちに横たわるピルバグが居て、ブーンと羽音を響かせてなんとかギリギリ飛んでいるニードルビーも出迎えてくれた。
早速、背中にある普通の木刀「赤樫 小次郎」を抜きニードルビーから仕留めにかかる。バシバシと叩き落し煙に変えて進んでいき、体育館部屋の端まで行ったらUターンしてきて、落ちているお金を拾い・・・。
あれ?お金が落ちてない。確かに今ニードルビーを5匹叩き落して、煙が噴き出す所まで見ていたのに、肝心のお金が落ちて無い?・・・。
あの辺と、そこと、ここで叩き落したよな?あれれ?
そこでふと頭によぎったのが、さっきレベルアップボーナスで選んだ「自動取得」だ。もしかしてだけど、そういう事かい?
一旦、狩りを中止して改札部屋に戻って、急いでロッカーの脇に出て来た物置のような箱を開けてみたが、何も入っていなかった。
ここに落ちるはずのお金が回収されているのかと思ったのだが違ったようだ。
それならばと、次に思い付いたATMまで近づき「お引き出し」ボタンを押す。
「ピン」
『カードを置いて下さい』
残高 51,210円
ありました。こっちに入ってました。上限2万円のススイカなのに、上限突破の5万円越えが入っている。さすが魔改造されているススイカだ。
自動取得とはこういう事だったようだ。
お金の行方を確認出来たので、今は特に引き出したりはせず、取り消しボタンを押しススイカ(改)をしまった。
乱獲している時はお金拾うのも一苦労だったのでありがたいが、益々持ってゲーム感が増してしまった気がする。きっと気にしてはいけないんだろう。
それからダンゴムシ狩りを再開した。
ダンゴムシ×12 蜂×11
と、中々の成果を上げる事が出来たが、簡単では無かった。
「ハァハァ」と肩で息をし、汗にまみれ、ヘロヘロになりながらも、なんとか体育館部屋の殲滅を完了したのだった。
ここまで体を追い込んでおけば、間違いなく筋肉痛になるだろう。
チカラが入らなくなった体を引きずりながら改札部屋へと戻る。
しばらくの間、ダンボールの上に座り込み汗が止まるのを、お茶を飲みながらゆったりと待った。
タオルで汗を拭い、装備を取り外して着替えをする。
特に前腕はきており、着替えをするのが大変だった。
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