第30話 おさらば
ようやく落ち着き、改札部屋から帰る準備が整った。
最後にATMの前へ行って「お引き出し」ボタンを押しススイカ(改)を置く。
残金 401,210円
はいきたー!。美味し。
金額ボタンを押して「400,000」っと入力しススイカ(改)から、お金を引き出した。するとガタタタタターっとお札を数える音が響きガバっと投入口が開くと中には一万円札がドカッと入っていた。
『カードのお取り忘れにご注意下さい』
現金をウエストポーチにしまい込み、ススイカ(改)を手に取り、そのまま改札へ向かう。
「ピピッ」
いつもの駅に戻ってきた。一仕事終えたなと、ホッと息を吐いてから歩き出し、駐輪場に向かった。
家に戻ると父親は既に寝ているようで、汗を沢山掻いた敬太は静かにお風呂へ向かい、ゆっくりと湯船に浸かった。
ちょっと奮発して買った入浴剤のいい匂いを嗅ぎ、リラックスしながら入浴を楽しむ。
お風呂から上がり、筋肉痛対策の塗り薬を塗ろうかと思ったが、ポーションの検証があるのを思い出し塗らないでおく。
それから家の事をしたり、調べ物をしたりして、ゆっくりとした休日を楽しんだ。
朝になり、父親の世話を済ませてから出掛ける事にした。
自転車に乗って駅の方へ行って、いつもの駐輪場に自転車を停めて街の方へ歩いて行く。
そう、今日もまたサラ金返済、いや完済しに行くのだ。
サラ金のカードを作る時は無人契約機を使ったので、こういう風に完済したい時に何処に行けばいいのか分からなくて、昨晩ググって調べたところ、案外知っている範囲に支店があったので助かった。
迷うことなく各サラ金の支店に入っていき、問題なく2件ともカード切りの儀式を済ませた。これで、借金は0になった。晴れて借金生活とおさらば出来た訳だ。
サラ金50万円×4社、合計200万円。年収300万円未満の敬太にしては、よく借金出来たなあと思える額だった。毎月返済しては、給料日前には厳しい状況になり、また借りる、の繰り返しで、元金が減る事は無く利子だけを払い続ける日々だった。要するに自転車操業ってやつだ。
小さな
先は見えず、唯一の希望は父親が死んでくれる事だった。自ら父親に手にかけ、捕まるなり後を追うなりしてしまおうと包丁を手に取った事など数え切れない程ある。何度考え、何度諦め、何度枕を濡らしたことか。
しかし今、何の因果かそんな生活から解き放たれようとしている。嬉しさや、虚しさ、なんとも言えない心境だが、悪くない気分だ。
また明日から頑張ろうと思えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます