第17話 お昼寝

 改札部屋に戻り、床に敷いたダンボールに座り込む。

 大きな装備だけを外し、お茶を飲み一息つける。


 やはり、つるはしを振るうと腕にきてしまう。もう既に握力が無くなり、チカラが入らなくなってしまっている。

 本当は重い方の木刀の具合を試したかったのだが、今日は辞めにする。

 時間的には2~3時間の活動だったのだが、体が付いていかない。筋トレでもした方がいいのだろうか?


 今日の稼ぎは合計で・・・35万円!


 驚異の時給10万円超え。今日の稼ぎだけで敬太の給料1か月半、いや2か月分になる。

 ポーションの方は見つからなかったが、しょうがない。見つけるのは早い方がいいのだが、また今度頑張る事にしよう。


 ちらっとATMを見てみると画面に文字が出ていたので、立ち上がりATMの前に行く。


『レベルアップおめでとうございます』


 またこれかと画面に触ると、画面が切り替わった。


『レベルアップボーナス』


自動マッピング

椅子

ロッカー

ヨシオ音声


 前回はこれで【鑑定】を選んだんだけど、今回はどうしよう。

 マッピングは迷う程ダンジョンを進んでないし、椅子は長時間この部屋に居座る気もない。ロッカーかヨシオ音声のどっちかだな。


 確かこの「ヨシオ」ってのはATMの名前だったはず。【鑑定】で出た名前が確かそんな感じだったはずだ。

 それの音声だから、このATMがしゃべり出すんだろうか。だとしたら賑やかでいいかもしれない。


 ロッカーはあったら便利だろうと単純に思う。


 面白そうな音声か便利なロッカーか。


「ピン」

『カードを置いて下さい』


 ヨシオ音声はハズレだった時の声が、受け付けない様な声だと嫌なので、無難にロッカーの方を押した。


 ススイカ(改)を指定された場所に置く。


『登録が完了しました。カードのお取り忘れにご注意ください』


 ススイカ(改)をATMに置いた直後、後ろで何かが動く感じがしたのでパッと振り返ると、壁際にロッカーが置いてあった。

 前にもATMが突然現れていた時があったが、考えても答えが出るような事じゃないし、深く考えたら負けな気がする。


 壁際に現れたロッカーは結構大きく、存在感があった。

 色は眩しくない白色で、改札部屋の壁の色と近い感じなので部屋と合っている気がする。


 中はどんな感じなのかと、ロッカーの取っ手を引っ張ったのだが、鍵がかかっているのか戸が開かなかった。

 取っ手の部分を見てみるとススイカのマークがあり、何か読み取ってくれそうな黒い四角の物体が付いている。

 この関係性になんとなく気が付き、ススイカ(改)を黒い四角に近づけると「ピッ」っと電子音が鳴り、それから、もう一度取っ手を引っ張ると、今度は抵抗なくロッカーは開いた。


 ロッカーの中は上と下に仕切り板があり、小物や靴を置く事が出来る感じだった。

 奥行きもありハンガーも2個ぶら下がっていて、フックやら鏡やらまで付いていて、使い勝手は良さそうだ。


 下の仕切り板の下にはヘルメット、上の仕切り板の上にはネックガードとか防刃手袋を置いて、つるはしは・・・余裕で入りました。木刀もバットケースをフックに引っ掛けて、うん。丁度いいわ。


 とりあえず部屋の隅にまとめていた物を全部片づけた。曲がったバットは少し迷ったが、一応しまっておく。

 ロッカーのドアを閉めてから、これ鍵はどうするんだ?と思ったが取っ手を引っ張っても開かなくなっていた。自動ロックとはハイテクですな。


 何回かススイカ(改)をかざし、ロッカーの戸を開けては閉めてと無駄な事をして遊んだ。


 ATMを見てみると、いつもの「チャージ」のみの待機画面になっていたので、用事は終わったとばかりに部屋から出る。


「ピピッ」


 駅に戻り、今日はドラッグストアに寄ろうと思う。腕がまたひどい筋肉痛になりそうな感じだったので、スプレーとか塗り薬が欲しくなったのだ。


 自転車を漕ぎ24Hのドラッグストアへ。

 目当ての物はすぐに見つかり、塗り薬だ。なんちゃらゲルってのが値段が高くて効きそうで、「筋肉の痛みに塗って効く!」とのキャッチコピーが気に入った。

 それから、改札部屋のロッカーにだいぶ荷物を置いてきて身軽になっているので、大人用オムツやらトイレットペーパーやら入浴剤とかも買って、自転車一杯に荷物を積みながら家に帰った。


 

 家に帰り、買ってきた荷物を片付け、風呂へ入る。

 ちょっと高い炭酸ガスの入浴剤を使い、湯船につかり、入念に筋肉をマッサージする。風呂上りには買ってきた筋肉痛に効く塗り薬を塗っておく。


 ダンジョンに向かう際に買っていた半額弁当を食べると、眠くなってしまったので、敬太的時間感覚だと昼飯の後の昼寝なのだが、時間的には夜中になるので仮眠と呼ばれるものをとった。

 


 朝7時にスマホのアラームで起こされ、父親の世話をする。家の掃除やら何やら細々とした事をして、朝ご飯だけど敬太にとっては晩御飯を食べて、そこからはゆっくりした。テレビを見たり、たまに父親をひっくり返したり。


 昼になり父親にご飯を食べさせて、それから敬太は寝る。いつも通りだ。




 19時にスマホのアラームで起きる。父親の世話をして、敬太もご飯を食べる。


 今日も仕事は休みの日なのだが、ダンジョンに行くかは一旦考える事にする。

 筋肉痛で体が動かない可能性があるからだ。


 とりあえず、少し体を動かしてみると、ちょっと筋肉痛で痛いが、お風呂のマッサージや塗った薬が良かったのか、今回は動けない程ではなかった。

 少し考え、軽く、ちょっとだけダンジョンに行く事にした。



 家を出て、いつものルーティンで半額弁当とお茶を買い駅へ行く。


 ほとんどの装備品をロッカーに置いてきているので、いつもの目立つ格好の敬太はここにはいなかった。

 いつもの改札機にススイカ(改)をタッチする。


「ピピッ」


 改札部屋につき、


「ピッ」


 っと、ススイカ(改)でロッカーも開ける。

 なんかカード一つで色々出来てカッコいい気がした。


 ちょっと筋肉痛をほぐすように屈伸したり腰を回したり、準備運動みたいなものをしてから、装備を身に着ける。やはり、つるはしで使った筋肉が少し痛む。


(今日はダンゴムシはやめておくか・・・)


 つるはしをロッカーに残したまま閉めた。

 今日は木刀で勝負するつもりだ。


 扉を開けて、いつものダンゴムシが多い右手側の階段には向かわずに、左手側の横穴の方に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る