第10話 再挑戦
それから2日後、ママゾンから荷物が届いた。
安全靴6,800円、脛の中ぐらいまでの長さがあるロングブーツ。
草刈り防護ズボン5,800円、生地が厚めの合羽の様な素材。
防刃ベスト4,980円、思っていたより軽く頑丈そう。
防刃アームカバー1,460円、切れにくい素材らしいが厚手の靴下みたい。
防刃手袋1,180円、灰色のゴム手袋。
防刃ネックガード4,550円、中に板が入ってるコルセットみたいなやつ。
ヘッドライト2,300円、明かりが強そうなやつ。
後は、家にあった金属バットとヘルメットを裸で持ち歩くのも嫌だったので、バットケースとヘルメットの袋を買った。全部で28,960円。なかなかの買い物だった。
とりあえず、家の中で一度全てを試着してみる事にする。
装備するとどんな感じになるのか試しておきたい。
ちょっと時間がかかってしまったが全てを装備して、鏡の前でチェックする。
すると、ベストと腕に付けるアームカバーの間に隙間が空き、肩が丸出しになっているのが気になった。
ノースリーブ型のベストに、チャリンコ乗りのおばちゃんが日焼け防止の為に付けているアームカバーと同じ形状の防刃アームカバー。
ママゾンに防刃シャツってのがあって、本当はそれが欲しかったのだが、3万円ぐらいするので手が出なかったのだ。
とりあえず今は厚手の上着でカバーするとしよう。
それから、屈伸してみたり、2~3度金属バットを振り回してみたりして装備の具合を確かめたが、特に動きに支障はないし、問題ないだろう。
この日は、家に荷物が届くのを待っていたので、ダンジョンへと行く時間が短くなってしまっていた。なので、本番は翌日として、今は細かい作業を済ませておく。
10代に原付を乗っていた頃に使っていたフルフェイスのヘルメットの曇り止めを塗ったり、小学校の頃使っていたウエストポーチを探したりした。
後は防刃の具合を確かめる為に、カッターで切り付けてみて、本当に切れないのか試したりもした。特にアームカバーがただの厚手の生地にしか見えないので不安だったのだが、結果としてはカッターで切れなったので良しとした。
翌日、夜勤の仕事を終え、家へと帰って来る。
すぐに、敬太的には晩御飯だけど時間的には朝ご飯を食べて、父親の世話をし、出歩いてもおかしくない程度の装備は身に着け、備品はリュックに詰め準備万端で家を出る。
午前8時30分。
リュックを背負い、ウエストポーチを付け、バットケースを小脇に抱え、ヘルメットを持ったおじさんが改札の側に立っていた。そう、敬太です。
ウエストポーチからススイカ(改)を取り出し改札を抜ける。
「ピピッ」
問題無く、何もない改札部屋へと到着した。
早速、最終準備にとりかかる。ヘルメットにヘッドライトを取り付けたり、金属バットをバットケースから出したりした。
準備が終わると緊張してくるが、それとともにワクワクともしてきていた。
ちょっと大きなウサギ相手に過剰とも言える装備に身を包むと、イケる気がして、無敵になった気分になっているのだから不思議なもんだ。
「よし!」
独り、大きめの声で気合いを入れ扉を開ける。
扉の先は真っ暗闇。それでも自分を鼓舞しながら進む。
扉が閉まり、真の闇が訪れた時、早くも問題が浮き彫りになった。
思っていたより「暗い」のだ。
ヘッドライトが照らしている範囲は明るいが、その他の部分が真っ暗過ぎて、とても視界が狭く感じる。全体としては暗い部分が多く、明かりが足らない様に思う。
もちろんスマホのライトなどとは段違いの明るさだが、想像していたより遥かに光量が足りない。これは早急に改善しなくてはならないだろう。
今日の所はしょうがないので、このまま進む事にする。
とりあえず、前回と同様に左手の壁伝いに進む。右手に金属バットを持ち、左手で壁を触る。
未だにどうなっているのか分からない暗闇の世界。
フルフェイスのヘルメットを被っていると、自分の息遣いが大きく聞こえ、周りの音が聞き取りづらい。慣れないせいもあるのだろうが、やはり実際に使ってみると問題点が色々と見えてくる。頭の中で考えていたのとは違うなと改めて思う。
しばらく進むと、早速、聞き覚えのある大きな羽音が聞こえて来た。
この音はあのデカイ蜂だろう。音がする方向を見ると、ヘッドライトの明かりが蜂の姿を捉え、暗闇に浮かんでいる蜂を照らし出す事が出来た。
ここで考えていた作戦のひとつを素早く実行する。
『鑑定』
ニードルビー
その巨体を飛ばすのに精一杯で、方向転換が下手
刺されると痛いが毒は無い
よし、【鑑定】出来た。
針がある蜂でニードルビーか。なんだか説明文からして、残念な感じがする。
それと、刺されても毒が無いのを確認出来たので良かった。前回コイツに刺されたのを少し気にしていたのだが、問題ないようで安心した。
さてと、ニードルビーは前回踏みつけただけで倒せたので、気負わず金属バットで迎え撃つとしよう。
「よいしょ!」
素人丸出しの大根切りで金属バットを振り回しただけだが、簡単にニードルビーを捉え、吹き飛ばす事が出来た。
地面を転がって行ったニードルビーを追いかける様にライトを動かし、見つけたと思った時には、既にニードルビーは紫黒の煙に包まれていて、煙が消えて行くと、そこにはやはり一万円札が落ちていた。
よしよし。油断せずに周りを見ながら一万円札を拾い上げ、ウエストポーチにしまいこんだ。
まずは1匹!
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