第6話 改札部屋
「ジリリリリリリーーーーン」
けたたましいアラーム音が鳴り響く。体は重く全然寝足りないが、耳障りな爆音を止めるべく、寝転んだままスマホの位置を探る。
薄っすらとした意識の中、手先で辺りを探っていると、小さく何かが裂けるようなパリッという音がして腕に痛みが走った。
「いっ!!」
突然の痛みに寝ぼけた頭が覚醒し、そこで「あぁ・・・」と、昨晩の激闘をぼんやり思い出しながら、スマホのアラームを止めた。
それから痛みのあった腕を見ると、薄っすらと血が滲んでいた。どうやら塞ぎかけていた腕の傷口が開いてしまったようだ。
重い体に気合いを入れ、体を起こし周りを見る。
殺風景な何もない、いや改札だけがある部屋か・・・。
「ん?!」
いや、何かある。改札の横にATMのような券売機のような箱型の機械がある。
男は驚き、ここから出られるかもしれないと興奮し、急に立ち上がろうとしてしまった。
「いだっ!!」
だが足に襲い掛かった激しい痛みにより、上手く立ち上がる事は出来ず、そこで、ふくらはぎに大怪我を負っていたのを思い出した。
男は一旦、床に座り直し、体勢を整えて、怪我をしているふくらはぎに負担が掛からない様に立ち上がろうとしたが、その時に、部屋の端にある改札が何となく視界に入った。するとそこには昨晩は無かった緑色の通行可の矢印が光っているのに気が付いた。
「あれ?動いてるのか・・・」
目を凝らして見るが間違いなく光ってる。
昨晩と違う所が、部屋のあちこちにあって嬉しくなる。
「いよいっしょっと」
男は片足で立ち上がり、改札を観察する。
改札は正面に見える緑の矢印と金額が表示される液晶が光っていた。
電源が入り、正常に稼働しているように見える。いつも見ている、見慣れた改札の状態だ。
ATMの方も見ると、パネルに何やら文字らしきものが出ているのが見えた。
何て書いてあるのかとても気になるので、ATMの方にケンケンをしながら向かう。
『レベルアップおめでとうございます』
何の事だろう?・・・ATMのパネルには意味が分からない事が書いてあるが、とりあえず他に情報が無いかパネルを指で触ってみる。
『初レベルアップボーナス』
鑑定
自動マッピング
椅子
ロッカー
パネルに触れると画面が切り替わり、良く分からない選択肢が出てきた。
これには益々持って謎が深まってしまい、どうすれば良いのか分からなっくなってしまう。
画面には「戻る」とか「やり直す」とかの項目が見当たらず、何かしら選ばないと先に進まないように見える。
しばらく何も選択せずにパネルを眺めていたが、画面が勝手に切り替わり元に戻る様な事は無く、ずっと同じ選択肢が画面に表示されたままだった。
(仕方がない。適当に選んでみるか)
にっちもさっちも行かないので、とりあえず先に進んでみる事にした。「ボーナス」とあるのだから、押したら爆発するとか、そんな危険性はないだろう。
表示されている項目は、関係性の見えない言葉の並びだ。
何を選択させたいのだろうか。「マッピング」だの「椅子」だの、両者が結び付く何かがあるのだろうか?
(分からん)
大体こんな風に選択肢が表示してある場合は、需要が高いものが上にくるのが定石だ。自動販売機とか飲食店の券売機なんかは、迷ったら左上を選べば間違いない。おしるこが出てきたり、得体のしれない発酵料理なんかは絶対に出てこないから安心なのだ。
それを踏まえれば一番上に来ている「鑑定」とやらを選んでやれば、可もなく不可もなく、変な風になるような事はないだろう。我ながら名推理だ。
自信満々で選択肢を決め、パネルにタッチする。
「ピン」
『カードを置いてください』
「鑑定」と言う文字を押すと高い電子音が鳴り、次の指示がきた。
カードとな?・・・考えられるのはススイカだろうか。この得体の知れない部屋に飛ばしてくれた張本人なのだから。
ここは素直にススイカで挑戦するとしよう。
ATMのパネルの下に点滅している指定の場所があるので、そこにススイカを置く。
「ピピーーーピピーーーピピーーー」
『本人確認が出来ませんでした。もう一度カードを置いてください』
あれ?こっちが拾ったススイカだと思ったんだが逆だった様だ。
置いたススイカと、もう1枚手に持っているススイカを交換する。すると画面が切り替わりパワーゲージのようなものがパネルに映し出され「しばらくお待ちください」の文字が点滅し、ぐんぐんとゲージが埋まって行く。
どうなるんだろうか?と、男が処理時間待ちのゲージをぼんやり眺めていると「何か」が体に纏わりついてきた。それは、大きくて柔らかいスポンジケーキの様な物に、前と後ろから体全体が挟まれているような、なんとも不思議な感覚だ。
特に不快に感じる事もなかったので、そのまま放っておくと、フッとスポンジケーキのような感覚がいきなり消え失せた。
『登録が完了しました。カードのお取り忘れにご注意ください』
なんだか変な感じだったなと、指定の位置に置いていたススイカを手に取った。すると、その瞬間【鑑定】の意味や使い方が、全て理解できたのが理解できた。
それは元々知っていた知識のように違和感なく、記憶が上書きされているような感じだが、不快感はない。
「なるほど・・・」
【鑑定】っていうのは言葉の通りで、意識させるとその物の名前、使い方、効果などを知る事が出来るらしい。なかなか便利そうな感じだ。
さっそく使ってみる事にした。
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