第3話 8月22日(日)
「日記を書こうかな」
「音声日記を起動。8月22日(日)の日記を開始します」
「日記っていっても、昨日のことを詳しく話そうかなって思ってるよ」
「その日のことでなくても、記録は大切なことなので、よいと思います」
「そう言ってくれるとありがたい」
「お褒めにあずかり、光栄です」
「褒めたわけじゃないけどね。まぁ、いいや。昨日はデートだったんだけどさ」
「昨日のデート結果は上々だったという記録ですね」
「そうなんだよ。映画に行って、カフェで話をして、ディナーっていう流れだったんだけど、彼女もすごく喜んでくれてさ」
「映画、カフェ、レストランの3ヶ所を訪れたのですか?」
「いや、正確にはカフェでお茶してから、少しウィンドウショッピングをして、夕食っていう流れかな。レストランってほどの場所でもなかったけど、美味しいお店だったよ」
「有意義な日を過ごされたようで、なによりです」
「有意義な一日だったよ。彼女も、映画が楽しかったって言って、たくさん話をしてくれたし。ウィンドウショッピングの時に、気になる物があったみたいで、買ってあげたらすごく喜んでた」
「楽しかったのですね。購入されたものがあるということで、ウィンドウショッピングから、ショッピングと修正をしました」
「あ、うん。ありがと。……それで、彼女と待ち合わせの時だけど、時間ギリギリになって、彼女が慌てて走ってくる姿が可愛くてさ」
「昨日の待ち合わせ時のお話ですね。彼女は遅刻をされたのでしょうか?」
「そういう言い方はないだろ。頑張ってお洒落をしてくれて、時間に少し遅れただけなんだから、遅刻ってほどじゃないよ」
「失礼しました。彼女との待ち合わせの後は、どのように過ごされたのでしょうか」
「……機械に怒っても仕方ないよな。それで、その後は映画を観に行ったんだ。彼女がちょうど見たい映画があるって言ってたから、その映画を見たんだ」
「……そうでしたか。提案を承諾していただけて、円満にデートが始まったのですね」
「そうなんだよ。映画は、話題作だったから俺も楽しめたし、その後、大興奮で映画の感想を語る彼女が、すごく可愛かったんだ」
「お互いに楽しめる映画だったのは、良かったですね」
「うん。それで、しばらくお茶して、時間がまだ早いからってことで、ショッピングモールに行って、色々見てたんだ」
「……定番のデートコースを楽しんだのですね」
「まぁ、定番だよな。でも、ショッピングモールで彼女の好みも少しずつわかったし、気に入ったみたいだった髪飾りを買ってあげたら、すごく嬉しそうにしてた」
「お互いの好みを知ることは、今後の関係を築いていく上で、重要なことですね」
「そう、重要なことだよ。前の時は、好みが全然合わないし、一体何が好きなのか理解できなかったから、今の彼女はその点でも良いと思うんだよ」
「それはなによりです」
「夕食も、ショッピングモール内にあったレストランで一緒に食べたんだけど、迷っていた料理が一緒だったから、思わず笑っちゃった。それで、二つとも注文して、半分こして食べたんだ」
「それは、仲が良いカップルに見えたでしょうね」
「やっぱりそう思う?」
「はい」
「そんな感じで、デートは大満足で終わったわけ。昨日はその余韻に浸って寝たから、夢まで幸せなものだった気がするよ。覚えてないけど」
「幸せを感じることは、生きていく上で大切なことです。夢は記録しない方が良いとされていますので、記録からは削除いたします」
「そうしておいて。そんな感じで、昨日の日記は終わりかな」
「承知いたしました。本日の日記として記録しますか? 昨日の日記に追加記録し、本日の日記は別で記録しますか?」
「あー、今日の日記で記録して。面倒くさいし」
「……記録しました。内容を確認しますか?」
「うん、確認する」
「再生します」
『8月22日、日曜日。昨日のデートはとても楽しかった。待ち合わせ時間に少し遅れてやって来た彼女は慌てていて、その姿も可愛かったけれど、頑張ってお洒落をしてくれたことが嬉しい。その後は、映画館に行って、話題作の映画を観た。内容はもちろん面白かったけれど、大興奮で感想を語る彼女の姿が可愛くて、そちらの方が印象的だった。しばらくお茶をした後、ショッピングモールへ出掛けて、いろんな店を見て回った。彼女が髪飾りを気に入ったようだったので、買ってあげたらすごく喜んでいた。同じショッピングモール内にあるレストランで夕食。食の好みが似ていたようで、同じ料理で迷っていたので半分こすることにした。大満足のデートだった』
「以上が本日の記録です。修正しますか?」
「若干、機械的な気はするけど、このままでいいや」
「登録しました。3日連続での記録となりました。このまま続けていきましょう」
「……なるべく頑張るよ。おやすみ」
「おやすみなさい」
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