初めての彼はドMでクズで厨二病でした

初彼

高校1年冬。

初めての彼が出来た。

片思いして半年、やっとの想いで告白したら2週間待たされてのOK。

だけど

｢俺も好きだから付き合ってもいいんだけど、付き合ってる事を誰にも言わないで｣

変な条件を突き付けれた。

好きだからその条件を飲んだけど、これってどういう事？

恋人同士なのに人目がある所ではベタベタする事も出来ないし、付き合ってるって言う事も出来ない…。

これって何なんだろう？

｢田中 里緒菜(たなか りおな)！｣

先生の大きな声で我に返った。

いつの間にかボーッとしていたらしい。

｢田中ー、俺の授業はつまらないか？｣

古文の佐藤先生が顔を赤くしてこっちを見ていた。

クラスの子達はそんな私達を見てクスクス笑ってる。

彼に目をやると、目が合った瞬間に逸らされた。

私の彼｢高橋 遥人(たかはし はると)｣はそういう人なんだと改めて実感した。

彼と付き合い始めて1週間。

付き合う前より距離がある。

話し掛ける事すら嫌がる彼。

私は本当に彼に好かれてるのかすらもはや自信が無い。

だけど夜になると連絡が来て甘い言葉を囁く。

｢怒られてる里緒菜も可愛かったよ｣

とか

｢里緒菜と話したいのを俺だって我慢してるんだから｣

とか。

だったら隠さないでちゃんと付き合おうよ！

なんて言ってしまいたいけど、嫌われるのが怖くて言えないでいる。

｢ねぇ、明日の放課後、一緒に帰らない？｣

絶対にダメだと言われるのを分かった上で聞いてみる。

｢明日…明日ねー…電車3本遅らせるならいいよ｣

まさかのOK。

だけど電車を3本も遅らせるの？

それってほぼ最終の電車じゃない？

私達の通う高校はド田舎にあるから電車の本数も少なく、登下校時間帯の電車を逃してしまうと2時間に1本しか電車が来ない。

｢3本はちょっと…あまり遅いと親に怒られるし…｣

｢じゃあ2本ならどう？｣

2本遅らせると帰宅は9時頃。

ちゃんとした理由がなければ確実に親に怒られる。

｢1本じゃダメなの？｣

｢1本か…それだと部活終りのやつらと会っちゃうじゃん？｣

｢そんなに私といるの見られるの嫌？｣

｢嫌って言うか…ほら、付き合うってさー、俺にとっては結婚まで想定しての事だから｣

結婚？！

重くない？！

そこまで重く考えなくてもまだいいんじゃない？

てか、そこまで考えるなら別に誰に見られてもいいんじゃない？

｢意味が分からない｣

｢え？分からない？ほら、付き合っても里緒菜の気持ちが変わる事も考えられるでしょ？そしたら俺は捨てられる訳じゃん？俺の気持ちは変わらない自信があるけど、里緒菜の気持ちがそこまでとはまだ分からない段階でしょ？だから俺と里緒菜の気持ちのバランスが均等になるまでは誰にも知られたくないんだよね。分かる？｣

いいえ、全く分かりません。

｢そんなに遅らせなきゃいけないなら別にいいよ！｣

少し面倒になって強めに彼に言ったら

｢え？！里緒菜怒った？！怒らないでよー！｣

と慌てふためき出した。

本当にこいつ、マジで面倒臭い。

けど何故か嫌いになれないんだよね。

好きになった私が圧倒的に不利なんだよね。

結果、1本遅れの電車でなら一緒に帰ってもいいと約束を取り付けたけど…

私、この恋を続けられるかな？