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宵埜白猫

あなたがいなくなった世界で

もうあなたはいない。

あなたの声を聞くことも、あなたに触れることも出来ない。


ねぇ、どうしたらいいの?

いつもあなたに守ってもらって、いつもあなたがアドバイスをくれた。

あなたがいなくなった世界で、私はどうすればいいの?


私は大学の講義にも出ずに、一人で途方に暮れていた。

その時、狭い部屋にインターホンの音が鳴り響く。


「なぁ、少し話がしたい」

何をしに来たんだろう。

大学のゼミでよく話す友人が、家の前に立っていた。

ゆっくりとドアの鍵を開ける。


「交通事故でおばあちゃんが亡くなったって聞いて来たんだ……」

「……ええ、祖母が亡くなったばかりなの。だがら今は何もしたくない」

「ああ、ゆっくり休んでていい。君がまた大学に顔を出したくなった時に連絡をくれ。それまでは代わりにノートを取っとくよ」


「早く大学に来いって言わないんだ?」

「大切な人を亡くしたんだ。何もしたくないって言うのも分かる。僕も家族を亡くした時はそうだったから」

そんな言葉を聞いて、私は彼に少し聞いてみたくなった。


「ねぇ、どうやってまた歩き出せたの?」

「……過去を振り返って、懐かしんで、ゆっくり休んだら、また立ち上がって前を向くんだ。どうせいつまでもうずくまってる訳にはいかないからね」

彼は少し躊躇いながらそう答えてくれた。


「私にもできるかな?」

「ああ、誰にだってできるさ。大切なのは焦らないことだ。自分にとって大切な人が亡くなったなら、そのことをちゃんと飲み込んで、泣いて、もう大丈夫ってなった時に立ち上がればいい。それと、ちゃんと休むのも忘れないで」

優しい笑顔で彼が言う。


「ありがとう。私も頑張るわ」

「ああ、早く戻って来てくれないと、話し相手がいなくて退屈だからね」

先ほどまでの憂鬱感は、嘘のように軽くなっていた。

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