Episode 014

体育祭も残る競技は2つとなりました。

それは学年対抗リレーと部活動対抗リレーです。


私達の高校の体育祭は競うものばかりで、学年で何かを作り出すといったものがありません。

部活動対抗リレー以外はすべてクラスのポイントとして加算されます。

こうなっているのも体育祭実行委員会が内容を自主的に決めているからです。


『1年生の皆さんお疲れ様でした。続きまして、2年生による学年対抗リレーです』


学年対抗リレーは男女それぞれ4人の代表者がリレーをする競技です。

当たり前のことですが、その代表者はクラスで走りが早い男女それぞれ4人が選ばれます。


私はあまり運動が得意ではないので、もちろん選ばれていません。

美紅ちゃんはリレーの選手なので今第3走者のところで待機しています。


『これは体育祭実行委員会からです。まことに勝手ながら2年1組の男子リレー走者は自分たちが決めたとのこと。ぶっちゃけた話、短距離走を見てこれでは勝負にならず盛り上がりに欠けるとのこと』


こんなことあっていいのでしょうか?

異例にもほどがあります。


『100m走の記録から他クラスの男子走者となるべく平均的に並ぶようにしたそうです。今から男子のリレー走者を発表します』


校庭の所々から戸惑いの声やとどよめきの声が聞こえます。


『第2走者、邸快斗』


邸くんは確か長距離走専門で短距離走はあまり得意ではなかったはずです。


『第4走者、武石諒平』


「おぉー」といった声がちらほら聞こえてきます。


『第6走者、桑田未亜』


桑田くんですか。

1組の方に目を向けると男子は歓声をあげているのに対して、女子の皆さんは何やら不安げで納得いってないようです。


『アンカー、神坂怜』


これには女子の黄色い歓声を始めとして校庭全体が盛り上がっています。


それよりもまさかあの4人が選ばれるなんて。

ベストメンバーでなくても十分に速い強敵です。

元々選ばれていた神坂くんを除いて、3人はクラスのテントから出てきました。

武石くんは笑いながら邸くんと桑田くんと肩を組みました。


そして元々リレーの選手だった男子生徒とハイタッチして、そのままそれぞれ待機場所に座りました。

元々リレーの選手だった3人の方たちはハイタッチしていたとき、とても笑っていました。

それは桑田くんたちを信頼しているからでしょう。


『なんとも異例な事態が起こりましたが、より一層盛り上がる事でしょう!1組は選手が代わったとはいえ、強力なメンバーです!他のクラスが一矢報いるのか!それとも1組がこのまま総合優勝までこぎつけるのか!この一戦、見逃せません!』


このリレーは最後の競技ということもあり、順位によるポイント差が大きいです。

また2年1組の皆さんは学年優勝だけでなく、学年を越えた総合優勝も王手にかけています。

1組は2位以上で学年優勝が、1位で総合優勝が確実なものとなります。

私達3組は1位を取り、尚且つ1組が3位以下でなければ学年優勝もできません。

1組以外のクラスが拮抗しているので、このリレーの結果によっては大番狂わせが起きます。

私はただ、応援するのみです。


『第1走者たちがスタート地点に立ちました。このリレーによってすべてが決まるといっても過言ではありません!さぁ、間も無くスタートです!』


体育の先生がスターターピストルを構えます。


パァンッ


ついに始まりました!


第1、3、5、7走者が女子、第2、4、6、8つまりはアンカーを男子が務めます。

アンカー以外は100m、アンカーは倍の200mを走ります。


第1走を制したのは4組です。

それに5組、1組、3組、2組と続きます。


バトンは第2走者の男子につながれました。


「このっ!!」


5組の男子が邸くんを抜けず、焦っています。

1組の邸くんは長距離走専門であり、短距離走はあまり得意ではないとのことですが、5組の男子を抜いて2位に躍り出ました。



第3走者になっても順位は変わらず4組が先行しています。

私達3組では美紅ちゃんが走っています。

なんと1組と5組を追い抜いて2位につけました。流石です。


『我らが四大天使の1人、高柳さん速い!これにより4組、3組、1組がしのぎを削ることになります!』


どのクラスも第4走者にバトンが渡りました。


「チクショウ〜〜〜ッ!!」


武石くんはその大きながたいであるとは思えない速さなのですが、他の男子も皆クラスから選ばれた人たちです。


『なんと!ここで5組、1組を追い越した〜〜!これにより1組は4位に、本当にどのクラスが勝つのか分からなくなってきましたー!』


武石くんが5組に追い抜かれ、4位になってしまいました。

第5走者間ではどのクラスの女子も速さが拮抗しており、順位の変動はありません。

そして第6走者にバトンが渡ります。


『おっと!ここで1組、見事なバトンパスによって3位、いや……2位に躍り出たーーー!』


素人である私の目から見ても、桑田くんへのバトンパスは見事でした。

それに勢いづいた桑田くんのスタートダッシュも相まって5組と3組を一気に抜き去りました。

それでもまだどのクラスも離されているわけではないので、まだまだ勝負は分かりません。


ただ……


「俺にしてはよくやったな。あとは頼んだぜ、怜」


第7走者にバトンを渡し、目の前にいる走り終えた桑田くんからそんな言葉が聞こえてきました。


第7走では私達3組が1組を追い越し、再度2位につけます。

そしてついに、アンカーへバトンが渡りました。


『ついにアンカーが走り出しました!素晴らしいことにどのクラスもバトンミスがありませんでした!すべてはアンカーにかかっています!』


正直に言います。

ここまで来たら、勝負は分かりきっていました。

どのクラスのアンカーもクラスで1番速い人でしょう。

中には陸上部の人もいます。

ですが、それ以上に、やはり神坂くんは凄かったのです。


『決着〜〜!神坂選手が3組、続いて4組も追い抜いて1位をもぎ取りました!2年1組の皆さん、おめでとうございます!』


やはり1組の皆さんは速かった。

仮にベストメンバーだったなら、圧勝していたかもしれません。


1組の選手たちは男女混じってハイタッチしあっています。

女子の方も普段あまり桑田くんには好意的ではないのですが、今回に限ってはそうではないようです。


他のクラスの選手の中には悔し涙を流す人もいました。

特に4組はあと一歩でしたから、尚更でしょう。


『学年対抗リレー、最後は3年生です!最後まで盛り上がっていきましょう!』


そして3年生の学年対抗リレーも終わり、残すところ最後の種目になりました。


『本当に本当の最後の種目は部活動対抗リレーです!またリレーかと思う人もいますが、盛り上がること間違いないのでご安心を!』


部活動対抗リレー、まさかあんな部活が参戦するとは私も含めてほとんどの生徒は知る由もありませんでした。

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