Episode 013
お昼休憩が終わり、わたしたち2年生は早速午後の部最初の競技があります。
それは綱引きです。
わたしたちの高校では男女分けずクラス全員で行います。
『午後の部最初の競技は2年生による綱引きです。各クラスの代表者は朝礼台前に集合してください』
わたしたちの学年は全部で5クラスです。
時間の都合上トーナメント形式なのですが、5クラスというのは中途半端なので変わったものになっています。
『これよりくじ引きを行います』
各クラスの代表者が朝礼台前で同時にくじを引きました。
わたしたち3組の代表は美紅ちゃんです。
ちなみに1組の代表は桑田くんでした。
『くじ引きの結果、第一回戦は1組と4組です。次に
3組と5組、第三回戦は第一回戦で勝ち上がった組と2組、最後に決勝戦となります』
桑田くんと4組の代表者の方は苦笑いを浮かべています。
それも当然です。
このトーナメント形式上第一回戦で負けた時点で最下位になってしまうからです。(ちなみに他3クラスはこの時点で最下位になることはありません)
美紅ちゃんが嬉しそうにこちらへ走ってきます。
「よかった〜逆シードにならなくて」
「そうですね。桑田くんたち1組は引いてしまったみたいですが…」
今桑田くんは1組の皆さんに色々言われ、シュンとしています。
桑田くんでも落ち込むことがあるんですね。
「実際のところ、これ結構不公平なトーナメントだよね〜」
たしかに1組と4組は後がないだけでなく、他クラスより多く綱を引くことになり体力面的にも勝ち進むのが難しくなります。
「仕方ない、としか言えません……」
仮に総当たり戦にすれば10試合行わなくてはいけませんし……
「そうだね。それじゃあ、がんばりますか!」
わたしもそう思いました。
非力ながら頑張りたいと思います。
『これより1組対4組の第一回戦を始めます』
体育の先生がスターターピストルを構え、
パァンッ
1組と4組の皆さんが一生懸命に綱を引きます
負ければ最下位になってしまうこともあり、両クラスとも覇気が感じられます。
勝負は拮抗しており、中々勝負がつきません。
「シャオラァァァァァッッ!!」
一番後ろで綱を引く武石くんが声をあげるとそれに応えるかのように1組の方に綱は引っ張られていき……
パァンッ
『第一回戦は1組の勝利です!』
神坂くんは桑田くんとハイタッチをしています。
そして武石くんと邸くんとも。
「次はあたしたちだね」
「はい、精一杯頑張りましょう!」
………………
…………………………………
…………………………
「……負けちゃいましたね」
「負けちゃったね〜」
残念ながらわたしたちは第2回戦で5組に負けてしまいました。
神坂くんたち1組は第三回戦で2組も破り、5組との決勝戦に挑みます。
『いよいよ決勝戦です。くじ引きで逆シードを引いた1組はこのまま三連勝を決めるのか!?』
「神坂くんたち連戦だからキツいかも……」
「そうですね、やはり疲れが見えます」
今更ながらはじめのくじ引きでかなり勝負が左右されています。
仮に2組が勝っても連戦になりますし、わたしたち3組と5組が一番の当たりだったようです。
わたしたちは負けてしまいましたが。
『これより決勝戦を行います』
そしてスターターピストルの音を合図にお互いが綱を引っ張り合います。
『これは、少しずつですが1組が引かれています。やはり連戦の疲れが響いてるのでしょうか!』
少しずつ綱の中心が5組の方へと動いています。
「これ流石にキツいわ」
「未亜ならまだまだやれるよ」
神坂くんも声を上げてクラス全員を鼓舞しますが、残念ながらそのまま……
パァンッ
『決着〜!綱引き優勝は5組です!」
「チクショーーッ!」
武石くんは誰よりも早くその悔しさをあらわにしました。
「しんどっ」
「こうなったのは未亜のクジ運が悪かったからだよ」
「怜、お前……今更それ言う!?」
「冗談だよ。5組は力のある人も多かったし、最初にぶつかっても勝てたかは分からない」
「これ後で女子からグダグダ言われるんだろうなぁ……」
「大丈夫だよ。結局は総合で一位になればいいんだから。午前の部で大分差もつけたしね。相当な何かが起きないかぎりはこのままいけるはず」
「そう言ってもらえると気待ち楽になる」
「未亜は十分クラスに貢献してくれたよ」
わたしは改めてお2人が親友なのだと思いました。
わたしと美紅ちゃんも仲が良いですが、お2人には敵いません。
わたしたちはお2人のように互いの全てを知っていません。
特にわたしは美紅ちゃんのことを半分も知らないでいる。
それはきっとライバルでもあるからか。
………いやそうではなくきっと、わたしが恐れているからでしょう。
『続いての競技は3年生による騎馬戦です。3年生の皆さんは所定の位置に集合してください』
このあともまだまだ体育祭は続きます。
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