Episode 012

旧校舎の屋上でお昼を食べることになったわたしたちは神坂くんと合流した後、周りの目に気を配りながら旧校舎に忍び込みました。

体育祭では立ち入り禁止になっています。

規則を破ったのはあの屋上へ行ったのを含めて2回目です。

なんだか、どんどん悪い子になっているような……

それはそうと、


「旧校舎に入ったのは初めてです」


昔ながらの木造校舎で漫画で見たような旧校舎です。


「ここはもう授業では使われてないからね」


神坂くんは階段の手すりをさすりながら言います。

掃除されているのか意外とホコリはありません。


「文化系の部活が教室使ってるぐらいだな」


桑田くんは皆んなより先に迷いなく階段を上り始めます。

そんな桑田くんに続いてわたしたちも階段を上がって行きます。


「なんというか、ここは不思議な雰囲気があるように思える。言葉にはあまりできない何かを感じるね」


邸くんと同じくわたしも同じような感覚がします。


「快斗もか?なんか神社に来たときと似てるっつーか」


「それそれ!あたしも思った」


やはり皆んな感じていたようです。

それほどまでにこの旧校舎は………


「昔懐かしい感じがするだよ?ここ。俺も初め来たとき漫画、アニメに出てくる旧校舎そのもので驚いたぐらいだ」


桑田くんはこちらに振り向きます。


「まぁ、この旧校舎はかなり古いらしいぞ。それこそボロボロで危ないって取り壊しも検討されたらしいけど、OBやOGたちが反対で取り止めになったんだと」


「未亜はこの旧校舎のことをよく知ってるんだね」


わたしたちが思ったことを神坂くんが言ってくれます。


「偶々だ。三方がそんなこと言ってたんだよ」


「三方って、あの三方花実さんですか?」


「あぁ。あいつよく部活の個人練で旧校舎使ってるらしくて知ってるんだと。意味わからんが」


たしかによく旧校舎を使ってるという理由で知っている理由にはなりませんが……


「彼女と未亜はよく話してるよね」


邸くん、思っても訊きにくいことを……


「話が合うんだろうな」


そう答えた桑田くんは平然としていました。

恐らくですが、邸くんも他意はなく桑田くんもまたそうなのかもしれません。


「なぁ、腹減ったし早く行こうぜ」


「そうだな。屋上はもう少し上がったところだ」


屋上に出るとフェンス越しに校庭が見渡せます。


「昔は今ほど自殺云々の時代じゃなかったからこうしてフェンスがあれば屋上に出られんだよな」


「僕たちが使ってる校舎の屋上にはフェンスがないから、こっちの方が安全だね」


「そもそも屋上に生徒が行くことを想定してないからな。フェンスがない分眺めはあっちの方がいい」


「2人とも話してないで飯食おうぜ」


武石くんがブルーシートを広げて、もう座っています。


「そのブルーシート、学校のじゃねぇか。なんかやたらデカイの持ってんなとは思ってたけど」


「よくわかったな」


「まぁ、あとでちゃんと元の場所に戻せば大丈夫か」


このお2人の将来が心配です……


「それしかないなら、しょうがないね」


「旧校舎の屋上に来てる時点で見つかったら怒られるのは確定だしね」


邸くんと神坂くんは慣れてしまっているのですね。


「ゆきっちも早く早く」


美紅ちゃんは相変わらず適応力が高いです。



旧校舎の屋上での食事は和気藹々としたものでした。

このような楽しい食事は初めてかもしれません。

中学生までのわたしが見たら驚くでしょう。

美紅ちゃんには感謝しなければなりません。


「葛西さん、そのお弁当は自分で作ったの?」


「え、あぁ、はい。お弁当はいつも自分で作ってるんです」


まさか邸くんがそんなこと訊いてくるなんて思わなかったもので、少し驚いてしまいました。


「俺の勝手なイメージだけど、家にいる料理人が重箱に詰めてるもんかと」


「食事はメイ…家政婦さんに作ってもらってますけど平日のお昼ぐらいは自分でと思いまして」


「偉いね。それに美味しそうだ」


「あ、あ、ありがとうございます///」


神坂くんに褒められてしまいました!


「そういや未亜の弁当は誰が作ってんだ?」


そういえば桑田くんのお弁当箱を見る限り御家庭で作られたものです。

お母さんでしょうか?


「あれ?前にも言わなかったか?妹だよ」


「あぁ、愛ちゃんか」


神坂くんはやはり以前から知っているようです。

ちゃん付けしてるところから察すると、それなりに仲もよろしいのでしょう。


「未亜の妹はまだ小学生じゃなかったっけ?」


「今は小5だな」


「え!?小5でそのお弁当作ったの!?」


美紅ちゃんはとても驚いています。

たしかに小学生でそのお弁当を作ったのはすごいと思います。


「まぁな。自慢の可愛い妹だよ、愛は」


「うわっ、もしかして桑っちってシスコン?」


いきなりそれは……


「もしかしなくてもそうだね」


「あぁ、かなりヤバい部類のな」


「正直ボクたちが呆れるぐらいに」


かなり重症のようです。


「は?お前らだってあんな可愛い妹がいたらそうなるからな!」


シスコンであることは否定しないんですね。


「まぁ、たしかに愛ちゃんは可愛いよね」


「「えっ」」


わたしと美紅ちゃんがいつになくハモってしまいました。


「だろ?あれは国宝級だ。快斗も諒平も会ったことあるから分かるよな?」


「まぁ、たしかになぁ」


「国宝級かどうかはともかくとして贔屓目なしにしてもボクもそう思う」


武石くんも邸くんも認めているとなると誰が見てもそう思うのでしょう。

神坂くんにも可愛いと言わしめる桑田くんの妹さんに会ってみたくなりました。


「まぁいずれ会うことになるだろうから楽しみに待っているといい」


なぜ桑田くんは上から目線で言ってきたのでしょうか……


「ちなみにちゃんと事前に言っておくが、血は繋がってるからな?」


「それどんな念押し!?」


わたしも思いました。


「だから会えば分かる。スマホがあればコレクションを見せてやれるんだが残念だ。なんで体育祭のときだけ回収するんだか」


「うわっ」


わたしと美紅ちゃんは露骨にひいてしまいました。


「冗談に決まってるだろ。写真は43枚しかない」


わたしと美紅ちゃんは同時に、


「「これは重症だ(ですね)」」







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