Episode 011
二人三脚は男子の部と女子の部に分かれ、リレー形式で行われます。
アンカー以外は50m、アンカーは倍の100mを二人三脚で走ります。
『ゴォォォォルッッ!二人三脚リレー女子の部、1着は3組だぁ〜っ!!』
良かった、私たちのクラスが一番です。
「ゆきっち、やったねっ!」
「はい、私たちも頑張ったかいがあります」
「まぁわたしたち息ピッタリだったからね」
私は美紅ちゃんとペアでした。
身長も同じぐらいだったのもあるけどやっぱりペアが美紅ちゃんとだったから転ばず走り抜けられました。
「次は男子の番だね。神坂くんは誰と走るのかな?」
それは私も気になるところですが、美紅ちゃんもこうは言っているけどおおよそ分かります。
恐らく、『彼』とでしょう。
『次は男子の部です』
まもなく男子の二人三脚リレーが始まります。
私たちはクラステント近くまで戻って男子の応援をします。
「位置について!」
パァーンッ!
体育の先生によるスタートの合図で1組から4組の第1走者が走り出します。
『やはり1組速いです!負けじと他のクラスも食らいつきます!』
やっぱり男子は女子より速いです。
男子のトーンの低い『1、2、1、2……』という掛け声が響き渡っています。
そして1組は首位をキープしたまま順調にタスキを渡していきます。
長距離走で活躍していた邸くんはどういうわけか柔道部のエースと呼ばれている
体格差があるため走り辛いはずなのに見事な阿吽の呼吸で走り抜けていきます。
私たち3組の男子の方は今のところ3位をキープしてます。
そして、終盤にさしかかり……
『おーっと!!1組転倒してしまいました!!これにより一気に最下位に転落です!』
これによって4組が1位、私のクラスが2位に浮上しました。
あまり素直に喜べませんが……
「あちゃー、大丈夫かな?」
「大丈夫だろ」
走り終わった邸くんと武石くんがレーンを横目に歩きながら話しています。
まだ終わってないのに戻ってきて大丈夫なのでしょうか……
「邸っちに武っちじゃん」
美紅ちゃんも気づいたようで2人に話しかけます。
「おう、高柳に葛西じゃねえか」
「こんにちは」
2人は神坂くんが特に仲良くしてる友達で、何度か話したことがあります。
桑田くんを含めたこの4人は一緒にいることが多いです。
「お2人とも心配しないんですね」
「あぁ、雅人と貴也が転んだことか?たしかにあれは痛そうだったな」
「保健室連れて行かないとだね。僕たちのクラス今日は浅見先生にお世話になりっぱなしだ」
「未亜は初っ端からだもんな」
あくまで見た目からの感じですが、この2人が仲良く話していることが意外に思えてしまいます。
「それもそうなんですけど、そうじゃなくて……」
「ん?じゃあどういうことだ?」
武石くんは本当にわからないような顔をします。
「順位のことだね。さっきも
「あぁ、3組には悪いが男子の方はオレたちが勝つ」
「なにせアンカーはあの2人だからね。相当なことがない限りは大丈夫かな」
二人三脚リレーは1組を除いたクラス皆アンカーにタスキが渡っていました。
『ここでようやく1組はアンカーにタスキをつなぎます!ここから逆転はできるのでしょうかって、えぇぇっ!!?』
1組のアンカーは神坂くんと桑田くんのペア。
一糸乱れない阿吽の呼吸で走り抜いていきます。
「全力疾走にしか見えません……」
次々と抜かしていきます。
アンカーはどのクラスも速いのにこうもアッサリと抜かれていくなんて……
『ゴォォォォルッ!1組、アンカーペアの素晴らしい走りにより逆転ですッ』
結局、私たちのクラスは2位でゴールしました。
「ねぇ、あれって神坂くんが合わせてる感じ?」
美紅ちゃんが2人にそう訊きます。
「そうだね。怜くん単独ならもっと速いからね。だからあれは未亜の全力疾走したときの速さになるのかな?」
邸くんは少し考えて答えます。
そもそも二人三脚で全力疾走できることに疑問はないのでしょうか?
「あいつ100m何秒だっけか?」
「速かったと思うよ。少なくとも僕よりはね。大体12秒台ぐらいじゃないかな?」
「まぁそのかわり快斗はバカみたいに体力はあるからな」
「諒平もね」
やはり2人が会話していることに違和感を拭えなかったりします。
「でもこれで1組にまだ差つけられたね〜」
「まだ午後の部がありますから大丈夫ですよ」
短距離走、長距離走、そして二人三脚リレーが終わり、1組が首位をキープしています。
クラスの男子たちも言っていましたが、神坂くんを筆頭に邸くん、武石くん、そして桑田くんを含めた強力なメンバーのいる1組はやはり強いです。
『午前の部が終了いたしましたので、ここでお昼休憩とさせていただきます。生徒の皆さんは13時20分には校庭にある各クラステントにお集まり下さい』
プログラム通りここでお昼休憩のようです。
「そんじゃ屋上行こーぜ」
武石くんはいつのまにコンビニ弁当が2つ入った袋を持っています。
「さすがにそろそろ怒られるんじゃないかな?」
この2人も桑田くんと同じく常習犯のようです。
「怜を巻き込めば大丈夫だって」
「諒平は未亜と同じ扱いを受けるベき」
「そいつは困る。女子からあんな嫌われるなんてごめんだね」
「まぁ未亜自身はそんなに気にしてないみたいだけど」
「気にしてないつーよりは………おっ来た来た」
神坂くんと桑田くんがお弁当を持ってこちらに来ました。
武石くんの言葉の先がなんとなく想像つきますがやはり気になりました。
「みんなで屋上いかね?」
「そう言うと思って旧校舎の屋上の鍵はこわ……開けておいた」
明らかに壊しましたね。
「さっすがだぜ!」
武石くん、その台詞はおかしいですよ!
「どうやって壊したの?」
邸くん、まずはそこじゃないかと。
「旧校舎にも屋上あったんだ」
神坂くんもそこじゃないですよ……
「お前ら2人も一緒に行くか?」
桑田くんからの突然の誘いに美紅ちゃんと目を合わせます。
桑田くんのその目は『チャンスだぞ』と言っているようです。
美紅ちゃんとの協議(?)の結果、後ろめたいですがせっかくなので行くことにしました。
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