06
わたしは屋敷のわきに建っている石造りの小屋に閉じ込められました。
今は物置のように使われていますが、かつて戦争の時代には捕虜を入れておく牢屋として使っていたという話です。
たしかに扉は内側から開かなくなっており、窓にも格子が嵌められています。
「星がきれい……」
わたしは床に直接座って、格子窓から夜空を見上げていました。
昼間の出来事は、遠い遠い昔のことのようです。
ジョーデン侯爵が亡くなり。
ジョサイアがあとを継ぎ。
エレノアがわたしを糾弾し。
そして、ここに閉じ込められました。
侯爵の遺体を調べて、何かわかったのでしょうか。
あれからまだ何の音沙汰もありません。
わたしの部屋に薬包があった?
そんなはずはないのですが――
でももう、なんだかどうでもいい。
「こうしていると、お父様お母様と3人でいたときみたい」
お父様は、夜が大好きでした。
昼は机で仕事をして、夜は外で仕事をすれば、どんな貴族にも負けない働きができると、自慢げに語っていたものです。
いつ寝ていたのか、今考えると不思議です。
わたしもお母様も、いつもお父様の帰りを待っているうちに眠っていました。
たまに、夜明け前に帰ってきたお父様の気配でわたしが目を覚ますと、
「ママを起こすと悪いから、こっちに来なさい」
そう囁いて、一緒に夜空を見ながら朝まで過ごしていました。
「夜は我々の時間だ」
誇らしげにわたしに語る、お父様の低い声が耳に蘇ります。
大好きなお父様。
3人で幸せに暮らしていたのに、どうしてあんなことに……。
お母様のこと、とても愛していたはずなのに。
「ねえ、お父様……大好きな夜だよ」
急に寂しくなって、わたしは声に出していました。
すると、
「ああ、最高の夜だ。ディオンヌ、こっちに来なさい」
窓の外から、お父様の声が聞こえてきました。
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