05

「エレノア、それは何だ? 毒薬とはいったい……」

「説明はあと。それより――」


 エレノアは主治医に向かい、


「ジョーデン侯爵の死因を教えて? アタシは嫡男の婚約者だから聞く権利があるわ」

「長患いの末の衰弱と見ておりますが……」

「ああ、調べていないのね」


 その答えを予想していたとばかりに、鼻で笑います。

 手にしていた薬包を主治医に渡すと、


「これと同じものが血液に含まれているはずよ。ね、ジョサイアも、調べたほうがいいと思わない?」

「……説明はしてもらえるんだよな?」

「ええ、もちろん。それから、そこの使用人を拘束することもおすすめしておくわ」

「使用人?」


 ふたりが振り向き、わたしを見ました。

 自然と、広間にいる全員の目がわたしを見ることになりました。


「わたしを、拘束……?」


 エレノアの言葉の勢いに圧倒され佇むわたしを、男の使用人たちが取り囲みます。


「よくわからんが、じっとしてくれ」

「まさかお前がな……」


 縄できつく縛り上げられました。


 広間から連れ出されゆくわたしがエレノアのすぐ横を通ると、


「余計なことを喋っても無駄だからね。残念だけど、貴女が犯人ということは覆らないから」


 小さな小さな、わたしにだけ聞こえる呟きが聞こえました。

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