07

「お父様⁉︎ 本当にお父様なの?」


 わたしはぱっと立ち上がって、格子窓に駆け寄りました。

 月明かりを背に、大きなシルエットがそこに立っています。


「お父様……!」

「ディオンヌ、久しぶりだ。顔を見せてくれ」


 お父様がすこし横にずれると、月明かりがわたしを照らしました。


 月明かりを反射したわたしの髪は――

 銀の輝きを放ちました。


 この屋敷に来たときの温かな包み込むような金色ではなく、冷たく鋭い銀色。


「おお……」


 お父様は感嘆し、うっとりとわたしの髪を眺めています。


「きれいな銀色になったな。一族の証だ。ジョーデンのやつが死んだと聞いたが、やはりお前がやってくれたんだな」

「ええ……」

「さすがは我が娘。誇らしく思うよ」


 格子から手を差し込み、愛おしげに頬を撫でてくれました。


 お父様。

 こうしていると、昔のままのお父様です。


 でも……。


「ねえ、お父様。……事故のときのことを話してくださらない? お父様は亡くなったことになっているのよ?」

「こうして無事な姿を見れば、だいたい想像はつくだろう」

「でも、お願い」


 懇願するわたしに、お父様は話してくれました。

 馬車が谷底に落ちた、あのときのことを。

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