閑話:三枝紺奈の回顧録

【閑話:三枝紺奈の回顧録】


 ムカつくムカつくムカつく!

 あーもーマジムカつく!


 ――え、何がって?

 決まってんじゃん、あのクソ王子だよ!

 イケメンだからって調子乗ってんじゃねーっつの!


 私がモデルとして積み上げてきたものを簡単に追い抜いて!

 しかもモデルになったと思ったら、アッサリ辞めやがったんよアイツ!


 コレがどれほど屈辱だったか分かる?

 あのクソ王子は、私の欲しいものを手にしておいて、ゴミの様に捨てたんだから!


 あ~も~っ! 思い出しただけで腹立つわぁ~っ!


 アイツのせいで、私のプライドはズタズタだっての!

 だからあのとき私は決めたんよ。

 王子に負けないようなビッグなモデルになってやるって!


 ――目標はスーパーモデル!


 そのためにとにかくオーディションを受けまくった。

 専属モデルだから他の雑誌には出れないけど、ファッションショーなら問題ないからね。

 端から諦めてた海外やモード系のイベントのオーディションを、ガンガン受けるようになったし。


 ――で、結果はって?


 ……うっさいなぁ、今のところ全敗だよ、悪いか!

 そりゃ自分でも分かってんさ、私にスーパーモデルはムズイって。

 身長はギリギリだし、綺麗っつってもモデルの中じゃあ平均点だし、限界あるのは自覚してんよ。


 いやでも、さすがに全滅とは思わなくって、めっさ凹んだよねマジで。


 ただでさえ新しい事を始めるのは大変なのに、さらに全く結果が出ないとかマジキツいって。

 しかも事務所からも、今までの路線と違い過ぎるって止められちゃってさぁ……。

 私も何度か「もう無理かも……」って思ったんだよねぇ……。


 けもさぁ、今さら引っ込みつかないじゃん?

 ムカつく王子の顔が脳裏にチラついて、やめるにやめられないっての。


 だから……もう開き直っちゃった。

 どうせならとことんまでやってやるよってね。

 失敗したってかまわないってつもりでさ。


 つか、失敗じゃねーし。

 私の辞書に失敗なんてないし。

 どんなことだって全部いい経験だし。

 失敗なんて全部、自分の糧にしてやるさ。

 

 ――うん、我ながらポジティブな考え方だね。

 そういうところが私のいいところだし。

 自分大好き、自画自賛!


 でもそう考えると、王子との事もある意味いい経験だったかも。

 あのムカつく経験があったからこそ、頑張って挑戦する気になったんだし。

 今挑戦してるからこそ、新しい経験をたくさん積めてるんだよね。

 という事は……もしかしてこれって王子のおかげ?


 ――って、だからって許す気にはならないけどね。


 王子、絶対死なす!

 アイツは私の手で一度は絶対死なすから!


 でもまぁ今は、挑戦する自分を楽しもう。

 あのクソ王子の事はそのあとでいいや。


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 次回からは週三日( 火 木 土 )の19~20時更新になります。

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