王子と立場逆転!

 ――翌日。

 登校した王子は、思いもよらないものを見る事となる。


「――おはよう、王子くん!

 今日もかっこいいね」


 それは爽やかに挨拶してくる紺奈の姿だ。

 登校一番、校門をくぐった王子を待ち受けていたように、紺奈が王子に言い寄ってきたのだ。


「お、おはよう紺奈ちゃん……」


「聞いたよぉ、昨日は凄い活躍したんだって?」


「あ~、うん、どうかなぁ~……」


「ねぇねぇ、その時の話聞かせてよ!

 そうだなぁ、今日の放課後、時間ない?」


「えっと……う、うん、大丈夫だよ」


「ホント? 良かったぁ、じゃあまた後でね」


 紺奈はそう言い残すと、ルンルンとした足取りで去っていく。


「ど、どういう事?」


 その、あまりに変わり果てた紺奈の態度に、ただただ困惑した表情を浮かべる王子。


「お、おいイアン。いったいどうなってるんだ?

 昨日までとは全くの別人で……まるで昔の紺奈ちゃんに戻ったみたいじゃないか」


『クックック、思った通りの展開やないか』


 戸惑う王子の質問に、得意げな様子のイアンが答える。


『あれこそ“ステータス女”の本領発揮ってやつや』


 ――――――

 ――――

 ――


(フフン、困惑してたみたいね、王子くん)


 王子との挨拶の後、教室へ向かいながら紺奈は考える。


(私だって手段は選ばない。

 だけどそれは――王子に仕返しをするって意味じゃないから。

 王子の事は心底ムカつくし、ボコボコに殴り倒してやりたい気分よ。

 だけど感情に流されて復讐なんて、そんな無駄な事を私がするわけないっての)


 瞳の奥にメラメラとやる気の炎が燃え上がる紺奈。


(私が言う手段を選ばないっていうのは、あくまでモデルとしての話だから。

 王子が私のコネでのし上がったのなら、私だって王子のコネを使わせてもらう。

 王子がモデルとして頭角を現していくなら、私は王子にずっと食らいついてやる!)


 利用できるものはすべて利用し、自分の成功だけを追い求める。

 イアンが“ステータス女”と名付けた女――これがその本領だった。


(見てなさい王子、私はアンタをトコトン利用しつくしてやるから!)


 ――――――

 ――――

 ――


「な、なるほど、つまり――。

 俺がモデルとして活躍したことで、再び紺奈ちゃんより上の立場に戻った。

 その事で紺奈ちゃんは昔みたいに、俺の事をまた利用してやろうと考えたって事か」


 人気のない校舎裏へと移動し、王子とイアンは作戦会議を続ける。


「でもあんなに変わり身が早いだなんて……。

 逞しいというか、節操がないというか……」


『何を言うてんねん?

 あの行動力があの娘のええトコやないか。

 まぁ王子にはまだあの娘の魅力は分らんかもなぁ』


「な、何だよ。

 別に嫌いなわけじゃないぞ?

 彼女の積極的なところはすごいと思うし、それだけモデルに対して一生懸命なんだって分かるからさ」


『確かに紺奈のそういうところは、王子に一番欠けてるところやろな。

 ひょっとしたら優柔不断な王子には、ああいう娘が一番合うてるかもしれんで』


「えっ、そうなの?

 なんだか尻にひかれそうで怖いんだけど……」


『まぁ相性どうこうの前に、さっさと呪いを解かんとな。

 こっからが正念場や、気合入れえや』


「そう言われてもなぁ。

 あの調子だったらそう難しくない気がするんだけど……」


『おいおい、油断すんなや。

 表面上は昔の彼女に戻ったように見えるかも知らんけどな、内心はハラワタ煮えくり返っとるハズやで』


「うぇっ! そ、そうなの?

 じ、じゃあ一体どうすれば……」


『とはいえここまで来りゃ後は楽勝や、あとは俺様に任せとけ王子!』


 そしてイアンがドヤって見せる。


『“ステータス女”の落とし方、これが最後のレクチャーや!』

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