閑話:イアン・ハウエル・フォン・エディンバラ伯爵の回顧録
イアンの設定――なぜ関西弁なのか、とか――を語るだけの話です。
本編で必要な設定はその都度本編でも語りますので、飛ばしてくださっても結構です。
ちなみに名前だけ出てくる白雪は、四人目のヒロインとして登場予定です。
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【閑話:イアン・ハウエル・フォン・エディンバラ伯爵の回顧録】
……ん? 何や白雪?
俺様のことをもっと知りたいから話せって?
アカンアカン、何でそんな面倒なことせなあかんねん?
……って、おい白雪、何やその手に持ってるモンは?
接着剤? 勲章を外して現代アートの素材にする?
ちょっと待たんかい、早まんな、OK分かった。
面倒やけど仕方ない、改めて自己紹介したろ。
俺様の名前はイアン・ハウエル・フォン・エディンバラ。
今から六百年以上前のイギリスに実在した貴族、エディンバラ伯爵家の当主で、嫉妬深い妻のイザベラに『女除けの呪い』をかけられた哀れな男や。
……ん? 疑問がある?
呪いなんかホンマにあるんかって?
これやから化学しか知らん現代人どもは……。
俺様の生きた十四世紀は魔法全盛の時代で、呪術占術錬金術と、様々な魔術が身近にあったもんや。
妻のイザベラも有名な呪術師の家系やったな。
ちなみに伯爵ともなると、暗殺や洗脳、没落するように不幸の呪いなどがかけられたこともあったわ。
それらは全部、イザベラが呪詛返しして護ってくれたけどな。
しかし……ぐぬぬ、あの女除けの呪いは、思い出しただけでも忌々しい呪いやったわ。
無類の女好きである俺様が、女性に触れることもできなくなるやなんて、ホンマに毎日が地獄やったで。
まぁでも、俺様の性欲はそんなもんで折れるような柔なもんやなかったけどな。
何とか愛人のところへ通えるよう、必死で呪いの抜け道を探したもんや。
それでようやく見つけた方法が――絶食。
愛人宅へ行く前には、必ず前日から絶食してたわ。
呪いでいくら腹が痛くなっても、腹が空っぽなら出るもんも出ぇへんからな。
これは唯一呪いに対抗できる手段や、いずれ王子にも教えてやらんとな。
ともかく。
そんな風になんとか呪いを凌いで浮気する日々が過ぎていき、俺様に子供ができるようになったころ、呪いについてとんでもないことが分かったんや。
――この女除けの呪いは、エディンバラ家の血に潜伏し子々孫々にまで継承されてしまう。
――発動する確率は低いものの、発動してしまうと呪いから逃れることはできない。
その事実が発覚したとき、呪いをかけたイザベラは真っ青になっとったなぁ。
何せ自分のかけた呪いが、エディンバラ家の一族を永遠に苦しめることになったんやから。
気の強いイザベラも、さすがにヘコんで謝っとったわ。
それで、呪いの対抗策として考えられたんが『エディンバラ一族救済計画』や。
――騎士として王から与えられた勲章に、呪いを監視するための霊魂を憑依させる。
――呪いを発動させた子孫が現れた時に顕現し、呪いを解く助力をするようその霊魂をセッティングする。
これがその計画の内容。
そしてその霊魂に選ばれたのが俺様――イアン・ハウエル・フォン・エディンバラ伯爵っちゅうわけや。
……まぁ正確にはエディンバラ伯爵本人やなくて、エディンバラ伯爵の人格をトレースして作られた人造霊魂やけどな。
さすがに本物の魂を使うわけにはいかんやろ。
ちなみに本物のイアンはとっくに成仏しとるはずや。
つまり俺様はイアンをコピーして作られた人造霊魂。
とはいえ全く別人というわけでもないで?
なにせ人造霊魂は、そのモデルとなった人間の人格と記憶をすべて受け継いどる。
その二つが完コピ出来たんなら、それはもう本人と同じと言って過言やないやろ。
だから、王子が俺様をご先祖として敬わうのは当然のことやな。
ってまぁ、敬われた記憶はあらへんけど。
……ん? まだ疑問がある?
イギリス人のくせに何で日本語話せるかって?
よう気付いたな、それが人造霊魂のええとこやで。
実はイザベラが俺様を作るとき、周囲の環境に応じて必要な情報を自動で取り入れるよう、魔術的回路をセッティングしたそうや。
いわゆる睡眠学習機能っちゅうヤツやな。
こんな便利機能が付けれたんは人造霊魂だからこそ。
生の魂じゃこうはいかんかったやろな。
ちなみに俺様が関西弁なんは、王子の父親であるリチャードの住んでたんが大阪やったからや。
母親の皐月と出会うて結婚したんも大阪やったわ。
リチャードは俺様をよく持ち歩いとったから、周囲で話されてる言葉を学習して関西弁になったんやな。
ちなみに今の住所に引っ越してきたんは、リチャードが航空事故で亡くなってから。
こっちに来てからは殆ど押し入れに仕舞われっぱなしやったせいで、睡眠学習も働かずに関西弁が抜けへんかったっちゅうわけや。
ああ、あと俺様と本物とで、違うところがもう一つあるな。
それは『目的』や。
俺様には『呪いを監視する』ことと、『呪いが発現したときにそれを解呪する』という目的が設定されとる。
この目的を与えられとるからこそ、今も王子に協力しとるわけや。
これがもし本物のイアンやってみい。
目的がないから呪いなんかどうでもよくなって、今頃ぬいぐるみのふりして女の寝室を渡り歩いとるやろな。
俺様にとって王子にキスさせる事こそが存在意義。
だからこそ人造霊魂の元に俺様が選ばれた。
かつて『社交界のヤリチン伯爵』と呼ばれた俺様の腕の見せ所っちゅうわけや。
……ん? 白雪とのときは下手やった?
全然口説けてなかったって?
だってそれは――――
(※)以降ネタバレ防止のためカット
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