第20話
第二十回
ふたりと別れたルー大柴は
「ウハウハだね。ウハウハだね」
とさっきまで動揺していたことも忘れて、うきうきしている。
それは別所哲也も同様だった。
駅のそばの喫茶店もやっているカレーライス屋で兄の所ジョージがカメラマンの市川崑と一緒に待っていた。
「中学生たち、お前らはあくまでもおまけなんだからな。主役はあくまでもチェ・ジュウで、それを補佐するのが兄ちゃんと市川崑カメラマンだ」
「もう、くどいなぁ、ジョージ兄ちゃんは」
「さぁ、行こうか」
みんなは撮影場所の旧市庁舎に行くことにした。
歩いて五分とかからない場所である。
五人が撮影機材を背負って旧市庁舎のそばに行くと高級車が停まっている。そして、目立たないところに業務用の黒い自転車が停まっていて変な老人が立っていた。
ここはなかなか趣のある建物だった。まだ木造の二階建てで市の文化財にも指定されてもいいくらいだった。そして二階は本が少ししか置いていなかったが、図書館になっていて、自由に市民が出入り出来るようになっている。
二階には大きな木製の机がいくつも並べられている。
兄の所ジョージはここの使用許可を取ったらしい。どんな方法を使ったのかは仲村トオルたちにはよくわからなかった。
三人組たちが、その建物に近付いて行くと、変な老人の姿がはっきりとわかった。三人組が前に見たことのあるあの自転車屋の老人だった。その老人、武田鉄也は自転車のハンドルを握りながら、朽ちた枯れ木のような表情でこっちをじっと見ている。歯まで見せている。
やがて、そのそばに停まっている高級車のドアが開いて、ぱっと華が開いたようになり、女の子が出て来た。チェ・ジュウである。
所ジョージが手を振ると彼女も手を振った。
三人組も市川崑もそのそばまで行った。
五人の男達とチェ・ジュウが歓談していると、不機嫌そうな声が聞こえた。
「チェ・ジュウ、市内、最高の美女という噂、本当らしいな、まあ、美しいことは美しいが・・・・・・」
その言葉はひどく不機嫌な調子がこもっている。
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