第44話
「ねえ、ユリーナ。なぜリゾール殿下の婚約者がマリニール嬢なのかしらと思った事はありませんか? リゾール殿下は、王太子なのですよ? 優秀な方が沢山いらっしゃるのに、魔力さえ持たない彼女を選んだ。えぇ。リゾール殿下が選んだのですから文句は言いませんが、マリニール嬢は、リゾール殿下の横に並ぶならそれなりの努力が必要だと思いますの。あなたのようにね」
「努力……」
いきなり何を言い出すの? なぜ今、お姉様の話なの?
「そうでしょう。何もしなくてもいいと言われたから何もしない。出来るかもしれないのに、たった一日で諦めてしまう。そんな彼女が、リゾール殿下の婚約者に相応しいと思う? 彼女の立場は、誰もが認める女性が立つのよ。本来はね」
お姉様は相応しくない。そうラワーヌ様は言いたいのでしょうか? 確かにお姉様は、魔法を使えません。それでもリゾール殿下が選んで……。そう選ばれたの。
婚約は、王家が望んだのよ。
「妬ましいって事ですか?」
マイステリー様が言った。その顔は険しい。
「違うわよ。もっと別の人を選ぶべきと言っているのよ。相応しい別の者を!」
「僕からすると、リゾール殿下はちゃんと選んでおいでだと思いますよ。魔力だけで選ぶのもどうかと思いますが?」
「まあそうよね。あなたの婚約者のお姉様ですものね? そちらの肩を持つのは当然よね?」
「そんなつもりはありません。だいたい、妬みでもないといいながらなぜ、ユリーナを巻き込んだ?」
「え? 私!?」
「まだ気づいておりませんの? あなたを利用して、マリニール嬢を婚約者から引きずり落とそうとしていたのよ」
「なんですって!」
そんな。信じられない。だって親身になって教えて下さっていたのに……。だから私は、魔力を上手く扱えるようになってきていた。
お姉様も善意で教えてくれようとしていたのではないの?
お姉様を貶める為に、私に教えるのを引き受けたというの?
「特別授業は今日で終わり。マリニール嬢にあなたからも言ってあげなさい。魔法どころか魔力も持たないあなたが、リゾール殿下の婚約者など誰も認めていないってね。政略結婚だとしても他に相応しい令嬢がいたというのに、リゾール殿下を口説き落としたようね。その才能だけは認めるわ」
どうして、そんな事言うのよ! 信じていたのに!
「お、お姉様を侮辱しないで! お姉様はそんな事はしておりませんわ! そういう風に考える方がいるのは、お姉様も承知しております。その上で婚約をなさったのです。」
そうよ! ゲーム内でも、それで敵も多かった。段々と心がすれて行って……。
「この世界のお姉様は立派ですわ。ヒロインが現れなくとも心は荒んで行くのですから。ちゃんとそれらを受け止め、強い心をお持ちです! 私など足元に及ばないぐらいに!」
「あら……結局、あなたにも効かなかったのね。途中までは上手く行っていたのに。そこまで言うのなら彼女の強さ見せて頂きましょう」
そう言ってラワーヌ様、教室を去って行きました。
もしかしてお姉様は、私のせいで傷ついたのではないでしょうか? また私は、情けなくも魔法に掛かってしまったのね。お姉様、ごめんなさい。
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