第43話

 マイステリー様が迎えに来て、私達は帰る為に歩き出した。


 「マリニール様、疲れたご様子ですが、大丈夫ですか?」

 「大丈夫よ。やはり私は、やめておくことにしましたわ。ユリーナの事をお願いしますわ」

 「はい」


 マイステリー様が気にするほど、お姉さまの顔色がすぐれません。本当に大丈夫かしら?


 「そういえば、今日も魔力をロッドに入れれたみたいだね。コツを掴めてきた?」

 「そのようです」

 「よかった。だったらもう家だけの練習で……」

 「いいえ! 私はラワーヌ様にご指導して頂きたいの!」


 だって。一人だと出来ないもの。


 「そう。わかった。もっと自信がつくまで教えてもらおう。マリニール様、ユリーナの事はご心配なく。僕がついておりますので」

 「……心強いわ。宜しくお願いね」

 「はい」


 結局、お姉様は一日だけの参加でした。かなりお疲れの様子だし、このやり方はお姉様に合わないのかもしれないわ。



 次の日放課後、練習に立ち会いたいとマイステリー様が言うので、お姉様ではなくマイステリー様が一緒です。緊張するわ。


 「今日は、見学してもいいですか?」

 「えぇ。構わないわ」

 「私は、緊張致しますわ」

 「大丈夫。いつも通り目を瞑って……」


 あぁ。マイステリー様が見ていると思うと、自分の心臓の音が凄く大きく感じるわ。そして、とても速い。


 「……には、効かないよ?」


 うん? 何?

 目を開いて振り返ると、マイステリー様の横にラワーヌ様がいる。なぜ? 驚いたけど、二人がにらみ合う様に見つめ合っていて……。

 にらみ合うですって!? なぜそのような状況に。


 「何かありました?」


 そう問いかけると、マイステリー様が私の隣に来た。


 「もっと早く行動すればよかったんだけど、あなたは本当にユリーナの力を引き出してくれているようだから躊躇してしまった。それで、マリニール様を傷つけてしまう結果になった」

「何を言っているのかしら?」


 お姉様を傷つける? どういう事なの?


 「マイステリー様? どういう事ですの? お姉様を傷つけるって……」

 「彼女は、君をマインドコントロールしようとしていたのさ」

 「え……」


 それって、また私魔法に掛かっていたの?


 「どうして私が彼女にそんな事を? あ、マリニール嬢に何か言われました?」

 「いいえ。昨日は疲れていたようですけどね」

 「……あの、ラワーヌ様がお姉様に何か致しましたの?」


 そんな事ないですよね。


 「何もしていないわよ? 彼女には」

 「え?」


 彼女にはって。お姉様には何もしていない? では誰かに何かをしたのですか? あ、マイステリー様にですか? さきほど、効かないって言っておりましたものね!


 「マイステリー様に何を致しましたの!?」

 「僕には効いてないから大丈夫だよ」

 「え?」


 やっぱり何かしたのね。効かなかっただけで。そうして……。


 「そのようですわね」

 「どういう事ですか?」

 「あなたは本当に素直な子ね」

 「え……」


 優しげな顔が、少し冷ややかな顔つきに変貌した。

 どういう事なの。私、騙されていたの?

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