第40話

 「おはようございます」


 そうだ。先生に昨日の事を言っておかないと。

 私は、先生に素直に話しました。


 「そうでしたか。あなたのではなかったのですね。ごめんなさいね。私はそこまでわからないので。そうだわ。三年生のラワーヌさんに確認して頂けないか、お願いしてみましょう」

 「え? そこまでして頂かなくても……」

 「大丈夫よ。彼女は、魔法促進委員ですからね。彼女ならあなたに、色々アドバイスくれるかもしれないわ」

 「そうですか。では、お願いします」



 お姉様に今日からラワーヌ様に教えて頂くと言うと、人がいるのなら安心ねと、先に帰る事になりました。

 その時のお姉様、少し変だったわ。

 そうだわ。本来なら姉であるのお姉様が教える立場。それなのに、同級生が教える事になって、ショックだったのかもしれません。

 やはり、断るべきだったかしら。


 放課後。教室で待っていると先生と一緒に現れた。

 怖い方だったらどうしましょうって、この方は……。


 「お待たせしましたユリーナさん。彼女が、ラワーヌさんよ」

 「はじめましてというか、宜しくお願いします」

 「あら、あなた、あの時の……」


 そうぶつかって、ロッド拾ってくれた方だった。魔力をいとも簡単にロッドに入れた人。


 「お知り合い?」

 「どうやら魔力を入れてしまったのは、私のようでしたわ」

 「あら。では。ぶつかったというのは……」

 「はい。ラワーヌ様です」

 「そう。まったく知らないよりはよかったわね」


 知らないのとあまり変わらないですが……。


 「では、頑張りましょう」

 「はい。宜しくお願いします」

 「私は職員室にいますので、宜しくお願いしますね」

 「はい。先生。では、始めましょうか」


 私は頷いた。

 ロッドを持ってジッと見つめて、ギュッと力を込める。


 「そんなに力まなくてもよいのよ?」

 「え?」

 「そうねぇ。体にある魔力を感じ取れる様に練習しましょうか。力を抜いて、深呼吸して。目も瞑りましょうか」


 今までと全然違うやり方だわ。これで出来たら間違った方法でやっていたって事よね?


 「まずは、周りの空気を感じましょう。難しくないわ。頬に当たり、髪をなびかせ、あなたを包む。優しい風」


 わかる。優しく包んでくれる風……。


 「さあ、解放しましょうか……」

 「お待たせ……あ、今日からだったっけ?」

 「あら……」


 そう言えば、今日からとはお伝えしていなかったかも。


 「この方は?」

 「その、私の婚約者です……」

 「はじめまして。マイステリーです。一緒に下校しているのでお迎えに参りました」

 「私は、ラワーヌ。……もしかして、私っておじゃまだったかしら?」


 ボソッと、ラワーヌ様が耳打ちをしてきました。


 「そんな事ありません。今、何かをつかみそうでしたわ!」

 「そう。よかった」

 「そういえば、教えてくれる先輩が見つかったって言っていましたね。女性でよかった……」


 ボソッとマイステリー様の呟きが聞こえました。

 私、浮気なんてしませんから。でもその気持ちわかります。

 今いる目の前のラワーヌ様は、外見もお美しい方なので、マイステリー様が目移りしないか少し心配したもの。

 でも、その心配はなさそうだわ。だって、ジッと私を見つめているのだもの。そんなに凝視しないで~。緊張してしまうわ。

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