第38話

 「ユリーナ。君はお姉さんと一緒に居て。僕は、父上の加勢に行くから」

 「え? でも、ヒールしか出来ないのでは?」

 「そうだけど。姉さんの予知では封印が出来るんだろう? それに、父上一人に任せるわけにはいかないから。ユリーナをお願いします」


 お姉様は、マイステリー様にわかったわと頷いた。

 リゾール殿下が戻って来るまで、何とか抑えておかないといけないものね。


 「言ってきます」


 そう言うと、チュッとおでこにキスを落として池へと駆けて行った!

 自分の顔が真っ赤になっているのがわかる。マイステリー様って大胆なのね。


 「まあ」


 お姉様は、にやにやとして私を見ています。

 こんな時でなかったら素直に喜べるけど、絶対に無事で終わって!


 お願い、神様。ううん。きっとここなら精霊様かな? どうかマイステリー様を守って下さい。マイステリー様のお父様も。そして、この国も。封印を目覚めさせて下さい。お願いします!!


 私は目を瞑り、祈った。


 「なんなのあれ……」


 お姉様の声が聞こえ目を開けると、眩しい光が。見上げると、黒い影を螺旋状に光る何かが巻き付いている。

 光る何かは段々と太くなっていく。そして、黒い影を包み込んだのです!


 「まさか、封印なのですか!?」


 お姉様が、驚きの声を上げた。

 私達は、マイステリー様の元へと駆け寄った。すると、二人は唖然と池を見ている。


 「あの、今のは?」

 「わからない。わからないが、たぶん納まった」


 マイステリー様が、首を横に振って私に応えた。


 「え? マイステリー様ではないのですか?」

 「僕ではないよ。どちらかと言うと、池の中からだったようだけど……」

 「池の中? 誰かがいたのですか?」

 「いやいないだろう。アイテムがあったのかもしれないな。魔を鎮めるアイテムが……」

 「取りあえず、一時的でも落ち着いてよかったよ」

 「そうだな。その間にちゃんとした封印が出来る」


 マイステリー様が言うと、頷いてマイステリー様のお父様が言った。

 これで何とかなったのね。

 先ほどのまがまがしさがなくなって、池は静まり返っていた。


 「ミャ~」


 もしかして、あなたじゃないわよね? ミャ?


 「さて、これで落ち着いて君の魔力を見る事ができるな?」

 「え? するのですか!?」


 マイステリー様のお父様の言葉に私は驚いた。うやむやにならなかったわ。


 「あははは。冗談だ。二人の仲を裂くのは野暮だろう。魔力があるのならそのうち使えるようになるだろう。期待しているぞ、ユリーナ嬢。周りの事は私に任せなさい」

 「はい! ありがとうございます!」


 よかった! これでちゃんとした婚約者だわ!

 結局、マイステリー様は結界を使えるようにならなかったし、私も魔法を使えるようにならなかったけど、認めてもらえた。


 「父上、ありがとうございます」

 「しっかりと彼女を守るのだぞ。わがアイスグリード家に恥じないようにな」

 「はい!」

 「ミャ~」

 「ミャも返事をしてくれたわ」

 「僕達のキューピットだもんな」


 キューピット。この世界でもそういう言い方あるのね。

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