第37話

 「わかりました。ではその間、出来るだけ抑えましょう」


 そう言ったのは、マイステリー様のお父様です!


 「ミャ~」


 ミャ!?

 突然茂みからミャが現れた!


 「ミャ!」

 「待って! ユリーナ!」


 マイステリー様が止めたけど、ミャが怖がっているの! 私のせいでここに迷い込んだのよ。


 「もう大丈夫よ」

 「ミャ~」


 ミャを抱きしめると、スリッと頭をすりすりとしたきた。なんて、可愛いのでしょう。寂しかったのね。ごめんね。一人にして。


 「きゃー! ユリーナ!?」


 お姉様の悲鳴で池を見ると、黒い影が私目掛けて向かって来る。

 バチッ!


 「……え?」


 今のは何?

 振り向くとマイステリー様のお父様が私の後ろに立っていた。そして、じろっと私を睨むように見る。


 「あ、ありがとうございます」


 へなへなとお姉様が、座り込んだ。


 「君は! マイステリーと婚姻する前に死ぬ気か!」

 「え!? 認めて下さるのですか!」

 「そ、そう言う事ではなくてだな……」

 「立てるかい?」


 優しくリゾール殿下が話しかけると、お姉様は頷きリゾール殿下の手を借りて立ち上がった。

 いいなぁ……。私もマイステリー様に、って何を考えているのかしらこんな時に。


 「はい。君も立てる?」


 と、マイステリー様が手を差し伸べて下さいました。

 来てくれた。


 「はい……」


 照れながらも手を取って立ち上がる。

 後ろから、「まったく」というボソッとした言葉と一緒にため息が聞こえた。


 「で、さっきのは封印とは違うのですよね?」


 リゾール殿下が、マイステリー様のお父様に問う。


 「あれは、魔なるものを払う魔法だ。払えたという事は、そういう類が集まって魔力を帯び、負の感情に引き付けられるのだろう」

 「なるほどな」

 「ごめんなさい。ごめんなさい……。そんなつもりはなかったの!」


 突然、先ほどの女子生徒が叫び出した。


 「落ち着いて! あれは、感情に敏感だ」


 リゾール殿下が言うも、女子生徒はパニックなっているみたいで、声が聞こえていない様子。

 どうしましょう。


 カーリア様が託してくれて、私も国が亡ぶのを知っていた。なのに私は結局何も防げなかった。

 っは! ダメよ。落ち着いて!

 ここは、私の知っているゲームの世界の様で違う世界だった。そこで結末を知っている私が居る。そうよ。きっと、これを止める為に記憶があるのよ!


 願うのよ。この国が滅びませんようにと。あれが消滅しますようにと! 今はそれしか思いつかないわ!

 ゲームでは、願いが叶う湖だった。恋する願いが必ずしも負の感情とは限らない。清い恋心もある。だったらそれに掛けましょう。


 バチッ。


 「いやぁ!!」

 「大丈夫です。ここから移動しましょう」


 黒い影は今度は女子生徒を狙ったけど、マイステリー様のお父様が何とか払ってくれた。


 「とにかく、安全な場所へ移動してくれ」

 「父上は?」

 「ここに残って何とかする!」

 「何とかって……」

 「ほれ、彼女と猫を連れて早くいけ!」


 マイステリー様は、頷いた。私の手を引いて柵の外へと急いぐ。

 今日が試験日でよかったわ。おかげでマイステリー様のお父様が学園に偶然居合わせたのだから。

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