第26話

 とんとんとん。


 「ルミージュさん、どう?」


 先生が、保健室のドアをノックして中へ入って行く。私達はそれに続く。


 「先生。はい大丈夫です。ごめんなさい。学校を休みたくなくて……」

 「いいのよ。それよりユリーナさんがお話があるそうよ」

 「そう……」

 「し、失礼します」


 私が入ると、先生は出て行った。マイステリー様も入って来て、ドアを閉める。


 「どうして二人で?」

 「一人だと言えないって言うから」

 「ごめんなさい。これで満足?」


 私はにこりともしないで、ルミージュ嬢に言った。


 「あら全然心がこもっていないわね」

 「だって、本当は謝る必要ないもの!」


 私が睨み付けると、嬉しそうにニヤッとする。


 「婚約者を奪うからでしょう?」

 「婚約者を奪う? そんな事をしてないわ」

 「あら、二人で会う約束をしていた場所に私はいたのよね? そうでしょう?」

 「あぁ。そうだね」


 ルミージュ嬢の問いに、マイステリー様は頷いた。


 「密会しようと企んだ。でも私が来て、頭に来たのよね? あなたは直ぐに手が出る。今回は、足でしたけど。池の時も私を突き落とした。それを私は、あなたの話に合せてあげたのよ。落ちそうになったあなたを助けるために、私も一緒に落ちた。そう言ったのよね?」

 「え?」


 確かにそう言ったわ。まさかそんな風にいうなんて!


 「猫もそう。あんなお粗末なリボンないわよ。ねえ、もうマイステリー様に近づかないと、彼の前で誓って」

 「それは……」

 「婚約者は私。諦めて」

 「じゃ、チャンスを頂戴!」


 私の言葉に、ルミージュ嬢は驚いた顔つきをする。それから目が吊り上がった。


 「チャンスですって! あなた、こんな目に遭ってもまだ、私の言っている事がわからないの? 身を引きなさいと言っているのよ!」

 「嫌よ! こんな目に遭ったからそこ、絶対に許さない! 私は、マイステリー様が好きです! あなたになんか渡しません!!」


 うわぁ。本人を目の前にして言うのは、流石に恥ずかしいのですけど!


 「ふん。何を言っているのかしら? マイステリー様。彼女に教えてあげて。こんな狂暴な女お断りだって。はっきりと! そして、愛を誓って!」

 「そうだな……」


 ルミージュ嬢の言葉に、ドキリとするぐらい低い声でマイステリー様は答え頷いた。


 「彼女を愛している。添い遂げたい相手だ」


 俯きながら言うマイステリー様を見て、勝ち誇った顔をしてルミージュ嬢は私達を見ていた。


 「ですって、ユリー……」

 「ユリーナ。君と婚約する!」

 「え!? 婚約!!」

 「なんですって!」


 私も驚いた。婚約すると言う台詞はなかったはずですけど!?


 「何を言い出すのよ! あなたは私と婚約しているのよ!」

 「だったら! この場でその婚約は破棄する!」


 あれ~~!? これって……イベント発生ですか? 聞いてませ~ん!

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