第25話

 「なるほど。では池の話は本当かも知れないな」

 「池? まさか恋愛成就の事ですか?」


 リゾール殿下が呟いた言葉に、学園長は問う。


 「それではなくて、池に溜まった魔力が暴発するという話です。前に一度、その様な事を言ってきた事があったのですが」

 「ごめんなさい。私が邪魔してしまって……」


 お姉様が、ぼそりと謝った。


 「まあ、丁度良く封鎖してあるからこれ以上魔力は増えないだろうが、封印はした方がいいだろう。だが、本人に自覚がないと使えないからな」


 と、少し困り顔でリゾール殿下が言った。

 無意識に出来る魔法でもない。


 「そちらの方は一先ず置いておいて、ルミージュ嬢の方だな。今回のユリーナがルミージュ嬢に蹴りを入れたというのは、魔法を掛けられ操作された嘘の出来事のだろう。ただ、学園長がルミージュ嬢より下というのはあり得ない」

 「そう言えばそうですね。能力で掛かる掛からないか決まるのであれば得ませんね」

 「では、彼女の父親ならどうです?」


 驚く事をリゾール殿下は言った。まさかと学園長も思ったような顔つきをするも頷く。


 「もしルミージュさんが一人でやった事でないのであれば、家族、いえ組織ぐるみでと言う事になりますね」

 「だとしたらちゃんとした証拠がいるな」


 そうリゾール殿下が言うと、全員なぜか私を見てきた。


 「な、なんでしょうか?」

 「彼女から自分がやったと言う言葉を引き出してくれないか?」


 リゾール殿下が言うと、全員頷いた。

 彼女を騙してって事よね? 私にそんな事できるのでしょうか?


 「マリニールが一緒に行くと、魔法に掛かる可能性がある。マイステリー、君が一緒に行ってくれないか?」

 「はい。かしこまりました」

 「え?」


 逆に緊張してしまうのですが!


 「ユリーナ、ごめんなさいね。あなたを疑ってしまったわ」

 「ううん。そう思い込まされていたのですもの。仕方ないですわ」

 「もし魔法を掛けられても、リゾール様がきっと解いて下さいますわ。安心して行ってきて大丈夫ですわ」


 そうでした! 自分が気づいていないだけで色々掛かっていたかも。でもマイステリー様もいらっしゃるから私が魔法に掛かっても大丈夫よね?

 って、急に怖くなってきたわ! もうお姉さまったらなぜ気づかせるのよ!


 私は、深呼吸した。


 「あの、先に言っておきます。マイステリー様、私はあなたをお慕いしております!」


 魔法にかかってこの気持ちを忘れないうちに、伝えようと思ったんだけど、またもやみんなの前でした。私、先走りすぎだわ。

 って、いきなりマイステリー様に抱きしめられてしまいました!

 行く前に気を失いそうです――。

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