第24話

 「私の記憶は、操作されたものだと……」

 「記憶操作と言っても、思い込まされているだけだろう。マイステリー、知っている事をこれで話してくれるね?」


 リゾール殿下にもう一度問われ、マイステリー様は頷いた。


 「もう気がついているとは思いますが、その記憶操作をしているのは、ビールドリィ嬢です。気がついたのは、彼女が僕に婚約者だと名乗った時です。あの時、僕に魔法を掛けようとした。僕には、効きませんでしたけどね。どういうつもりかと思い、肯定も否定もせずにいました。申し訳ありません」

 「え? あの時? リボンの時?」


 私が言うと、そうですとマイステリー様は頷いた。

 そう言えば、クラスメイトからマイステリー様を狙っているという話を聞いていたわ。その時に、婚約者の話は一切なかった。いえ、婚約者が居ればそんな話にはならないわ。なぜ気づかなかったのかしら。


 「効かなかった? では、君は魔法が効かない体質なのか?」

 「いえ……単に僕の方が能力が上だからでしょう」


 マイステリー様の言葉に、皆驚いた表情をしてマイステリー様を見ている。そりゃそうよね。魔法を使えないと思っているのですから。


 「それはどういう意味だね?」


 学園長が聞くと、マイステリー様は私を見た。


 「僕は、ヒールを使えるのです。前に彼女の怪我を治しました」


 今度は、全員私を見た。


 「あの時の事なの?」


 お姉様は、いつの事か気がついた様子。


 「はい。確かに足をくじき、治癒して頂きました。内緒にして欲しいと言われて黙っておりました」

 「まさかと思いますが、ルミージュさんに言われたと言って、彼も特別補修を受けさせたのは、本当は魔法を使えるのを知っていたからなのですか?」


 先生の問いに私は頷いた。


 「ごめんなさい。マイステリー様にもルミージュ嬢にも怒られて、気がつきました。人の名を語って嘘をつくなどいけない事でした」

 「と言う事は、マイステリーが魔法を使える事をルミージュ嬢は知らないという事か?」


 リゾール殿下の問いに頷くもマイステリー様は付け加えた。


 「姉も知っております。ただ、少し勘違いをしているようなのです。僕が使えるのは、ヒールだけ。でも封印も出来ると思っているらしいのです」

 「カーリア様は、未来が見えたと言っていました。あるはずです」


 私が言うと、マイステリー様は困り顔になった。


 「そう言われても。一体なんて言われたの?」

 「え!? そ、それは……」


 本当の愛を教えてあげて欲しいと言われたけど、そんな事恥ずかしくて言えないわ。


 「ユリーナ」


 お姉さまが言いなさいと、強めに私の名を呼んだ。


 「マイステリー様の心を開いてほしいと。自分が一番ではなく、相手を一番に考える者でないと、心を開かせられないと言われたのです。……私にそれが当てはまるかわかりませんが、私にそれをして欲しいと言われました」

 「それって、それで僕に近づいたの? 僕と一緒にやりたかったって嘘?」

 「そ、それは本当です! 私がずるかったのです。カーリア様にそう言われたから、婚約者がいるけどいいかなって。授業ならお姉様に何も言われないかなって、やましい気持ちで嘘をついて、あなたと……」


 って、皆さんがいるのでした!! 自分の顔が赤くなっているのがわかった。見れば、マイステリー様も……これって脈ありですか?

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