第23話
「これは問題だな。マイステリー。君は、何を隠している。知っている事があるなら話して欲しい」
「……今ここで話して、僕の話を信じてくれるとは到底思えませんので、お話できません」
驚く事に、リゾール殿下のお願いをマイステリー様は、断った。
「あなたは、何を言っています。殿下がお話して下さいとお願いしているのですよ?」
学園長がそう言ったが、俯いて何も語ろうとはしない。
どうしたらいいんだろう? 今、私に出来る事は……。
「あの。マイステリー様の言葉を信じるとするならば、マイステリー様が納得すれば話してくれると思うのです。さきほど、マイステリー様が言ったように、彼のお父様に婚約の事を聞いてみてはいかがでしょうか?」
「いや、しかしだな……」
私が提案するも、なぜか学園長は困った顔をした。
「何か不都合でもあるのか? それなら私が聞いてみるが?」
「いませんよ。自宅には。僕の学園生活の準備の為に一時帰国したのですから。この国にいたのは、数日です。その間に、父がここに来たとは思えませんが……」
リゾール殿下の言葉に、驚く回答をマイステリー様が返す。
「いないのをわかっていて、聞けと言っていたのか?」
「いや、お待ちください。それすら学園長は、ご存知なかったのですか? 自分の息子を頼みに来たのなら、自分がいないから頼むとお願いするのが普通だと思うのだが」
リゾール殿下がそう言うと、そうですなと校長先生も今度は素直に頷く。
「と、とりあえず、連絡をとってみよう」
そういう話になり連絡を取ると、やはり父親とは連絡が取れなかった。だが執事長の話だと婚約の話は聞いていないという回答が返って来たのです!
ではルミージュ嬢が嘘を広めたという事? でもどうして、カーリア様もそう思っていたのかしら。
「まさか、どうしてこのような……」
「学園長。ちゃんと一から整理してみましょう。マイステリー、君が見たのはルミージュ嬢が倒れていた所なのだな? ユリーナが逃げて行く所はみていないと」
「はい」
リゾール殿下の質問に、マイステリー様は頷いて答えた。
「そしてユリーナ、君はルミージュ嬢とそこで何を話していたんだね? 二人で話をしたのだろう?」
「……それは」
どうしよう。私を葬るとか言った事を話していいのでしょうか? ううん。それより嘘つきの私の話しを信じてくれるのかしら?
「言えないような話をしたのか?」
学園長も聞いて来た。
「……マイステリー様に近づくなと言われました。本当は、あの場所でマイステリー様をお待ちしていたのです」
「では、遅れてきたという事か?」
私は、マイステリー様には会っていないと、首を横に振る。
「先生に頼み事されたので……」
「学園長にマイステリーさんに頼む様に言われましたので……」
「私は、そんな頼みごとをした覚えはないが?」
「え? でも確かに……」
みんな、驚きの真相に顔を見合わせる。
マイステリー様が遅れる様に仕組んでいたのね。
「なるほど。やはり記憶操作が行われている様だ」
ぼそりとリゾール殿下が呟いた。
凄いわ、リゾール殿下。頼りないお方だと思っていた事をお許しください!
リゾール殿下がこの場にいなかったらと思うと、ゾッとする事態だったわ。
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